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新潟まで車で移動している最中、何度か寄ったパーキングでタバコを吸っていると安室さんが背後に立っていた。
「なんで背後に立つんですか?」
「背中を守ろうかと。」
「別に誰に狙われているわけではないですし、大丈夫ですよ。」
「タバコ、吸うんですね。」
「たまにです。」
「最近あったあいつと同じ香りがします。」
「・・・でしょうね。」
少しばかりの休憩を挟み車は一路新潟県へと向かう。途中窓から見える景色が彼と一緒に大阪に行った時の景色と重なって胸が痛かった。
そんな私を横目で見ている安室さんはなぜだか知らないけれど私と同じような表情をしていた。
「・・・寒い。」
「そりゃ、スノーフェスティバルですから。」
「このままだと風邪をひいてしまいます、ホテルに戻りましょう。」
「嬉しいお誘いではありますがダメです。なにか温かいものを買ってあげますので我慢してください。」
「きりたんぽが食べたいです。」
「では行きましょう。」
安室さんに手を引かれて出店の並ぶ人ごみの中を歩いていく。
安室さんにきりたんぽの入った温かい汁物をご馳走してもらい近くのベンチで並んで座ってそれを食べている。遠くから女性の声が聞こえた「かっこいい。」とか「イケメン。」とか。隣に座る私に聞こえるように「なんであんな子が一緒に?」という声も聞こえたがそんな声もどこへやら、安室さんは我関せずといった感じで手元に地図を広げていた。
「ここが以前の北の沢村です。そしてここに現在の北の沢村がある。」
「昔の村は全てがダムの下ですね。」
「犯人はどういった目的であのような脅迫状を書いたのか・・・。」
「脅迫状自体がフェイクだとしたらどうでしょう?」
「フェイク、と言いますと?」
「都知事のやったことを恨んでいると見せかけて実はダム建設の時に水の中に沈ませられてしまった村に用があるとか・・・。」
「都知事を狙うと見せかけて・・・ですか。」
「え?だからここに来たんじゃないんですか?」
「まぁ、それもありますけど。ここのダム建設はあの朝倉都知事が関係していましたし。でも、あの事件で都知事は欠席、無駄骨にならないといいですけど。」
「コナン君もここに来ているので無駄骨ではないと思いますよ。」
驚いた顔でこちらを見ている安室さんをよそに先日聞かせてもらった阿笠博士の家での会話を安室さんに説明した。
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