15
夜、布団に入り眠りについていると小さく携帯が鳴った。それは前の携帯を捨てたときに新しく買った携帯でまだ、ジョグの番号と、ママの番号ぐらいしか入っていない、本当のプライベートな番号だ。
「なんだこんな時間に。」
「どうかしましたか?」
「すみません、電話が入ってしまって。寝ていてください。タバコも吸いたいですし外で電話をしてきます。鍵、持っていきますね。」
「一人で大丈夫ですか?」
「いくつだと思っているんですか、大丈夫ですよ。」
部屋を出て喫煙所に向かう。途中でさっきかかってきたジョグの番号に電話をかけるとものの数秒で相手が出た。
「ごめんなさい、誄ちゃん。」
「大丈夫、どうかしたか?」
「お客様の話でなんだけど、あなたが住んでいるマンションのあたりに変な車が止まっていたらしいのよ、だから心配でしょうがなくて。」
「変な車?」
「ポルシェだか、なんだかって言ってたんだけど。」
「・・・なんだ、そんなの気にするほどじゃないて。だって今私そこにいないもん。」
「へ?」
「今に新潟に来てるんだ。」
「誰と?」
「この間あったろ?ほら、金髪の。」
「あぁ。彼ね。何しに行ってるのよ。まさかデー・・・」
会話はそこで強制的に終わりを迎えた。
ジョグと会話をしながら向かったのはロッジの一階にある喫煙室で夜だから誰もいないだろうと高を括っていたがそこには先客がいた。
私が今一番会いたくないと思っている人物で、しかも変装を解いて相変わらずの黒い服を着ていた、さすがに寝起きなのかニット帽はとっていた、なんだかその姿も新鮮で少し間があったが赤井さんだと気がついたときにはもう遅い。会話をしていた携帯は通話を切られ、赤井さんに腕を取られて、沖矢さんの止まっているであろう部屋へ連れて行かれた。
部屋に入るなり彼が寝ていたであろう少しシワのついたベットに押し倒されて赤井さんを見上げるような形になっていた。心が少し冷静になったのか。この光景はどこかで見たような、あ、工藤宅で同じような目にあったんだと思考を巡らせていると赤井さんの握っている手になお一層力が込められた。
「離してください。」
「やっと捕まえた、今度は逃さない。」
「なんですか、いきなり。」
「なぜ勝手にいなくなった。」
「私は赤井さんの犬ではありません、首輪なんてついていなんだから勝手に何処かに行くに決まっています。」
「なら、首輪をつけて逃げられないようにしようか。」
「また、犯罪者になりたいんですか。」
そう言うと赤井さんは私から離れて少し私の顔を見直すように言った。
「すまない。」
「・・・。」
「君の家族を殺したのは俺だ、それに嘘偽りはない。」
「知っています。」
「それを謝りたかった。」
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