迎えに来てくれた沖矢昴さんの車で一路大阪に向かう。車の中では相変わらずタバコのにおいと沈黙。気まずさを感じつつ、窓の外に目を向ける。高速道路に乗っているので当たり前ではあるが目の前を流れる光はすごい速さで通り過ぎていく。




「光る天の楼閣。」




「蜂谷さん?」




「光る天の楼閣って本当に大阪城なんでしょうか?」




「通天閣ですよ。」




「通天閣?」




「通天閣は光の天気予報、大阪城はおそらく囮でしょう。」




「気がついていたんですか?」




「えぇ、まぁ。」




「でもどうして大阪に行こうと思ったんですか?別にFBIにキッドを捕まえてくれなんて以来入っていないですよね?」




「知的好奇心、というやつでしょうか。」




何を言っているんだこの男は。いい年こいて。




「でも、私を一緒に連れてきた理由は何ですか?」




「博物館が好きと、言っていましたので。」



「はい?」




「鈴木近代美術館、一緒に観に行きましょう。」




沖矢昴という男の行動はなかなか読めない部分が多い、FBI捜査官なのだから軽々読めるような行動をとってはいけないのかもしてないがこの男はほぼほぼ行動が読めない。だいたい美術館が好きと言ったことをよくもまぁ、鮮明に覚えていることだ。




「眠たかったら寝ていてもいいですよ。」




「大丈夫です。運転をしてくださっている人の横で寝るなんて失礼ですから。」




「そうですか、では何かお話でもしましょう。」




「そうですね。」




お話、お話ってどんな会話をしたらいいんだ?




「この間あなたに頂いた本ですが、半分ぐらいまで読みましたよ。」




「早いですね。」




「本を読むことは好きなので、あの本は特別面白いです。他になにかお勧めの本はありませんか?」




「そうですね、「フィッツベルグの花嫁」って本も面白いです。」




「「フィッツベルグの花嫁」、読んだことはありませんが作者は確か・・・ミジェですか?」




片手で運転をして開いた方の手で口元を触りながら言葉を発している沖矢昴さん。本好きとは思っていたがミジェを知っているのはなかなかコアなファンである。実際私も学校で「好きな本はミジェの本です」と高らかに宣言したものの、どうしてかクラス全員一様に小首を傾げて私を見た光景はいい思い出である。




「あと、有名どころだと「乏しき太陽より幸ある雨」ですかね。」




「それは以前は持っていました。」




「売ってしまったんですか?」




「いえ、燃えてしまいました。」




「は?」




「私の住んでいたところが火事になってしまいまして、持っていた本も全て火の中です。それがあって工藤宅に今はお世話になっています。」




「そうだったんですか。」


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