強制連行とはまさにこのことを指しているのだろう。私は半ば強制的にコナン君御一行とともに殺人犯がいることが確定しているロンドンに向かい足を進めた。




少し歩いた先のゲートをくぐり抜けると少し体と心が離れるような感覚の後、視界には今まで見ていた日本の風景とは懸け離れた洋風な建物が孕んでいる。霧の都ロンドンは恐ろしいぐらいに視界が淀んでいる。少し肌寒さも感じ、そこに立っているだけで何やら不気味めいた何かを感じざるを得ない状況だ。




「ここが霧の都ロンドン、ロマンチックというより不気味ね。」




「なんか空気も汚れてるみたい。」




「匂いも変だぞ。」




「ロンドンの霧は水蒸気だけの綺麗なものではなくて、石炭とかを燃やした煙と混ざっているからなんだよ。」




「へ〜、蜂谷さん詳しいんですね。」




「まぁ、オタクは怖いってやつだね。ね、コナン君。」




「・・・そうだね。」




「ちなみに石炭とかを燃やした霧と混ざってできているこれをスモッグと言います。」




「こんな時代からスモッグってあったんだ。」




真夜中のロンドンに女性の叫び声がこだまする。声を聞いて真っ先に走りだしたのは言うまでもない、彼だ。どこまで耳が良いのかと言いたくなるほどだが今はコナン君の後を追って切り裂きジャックとの初対面を果たそうか。




大きく立ち並ぶ家々を抜けていくとそこには一人の女性とそれに覆いかぶさっているマントを付けた人物が一人。




あれが、切り裂きジャック。




「Its Jack the Ripper!」




女性の叫び声を聞きつけて、私たち以外にもこのバーチャルの世界に住む人間たちが集まってくる。彼らの口からは次々に「切り裂きジャック」の名が上がり、夜のロンドンを瞬く間に恐怖の霧で包み込んでいる。




「なんて言ってるのかわかんない。」




「まだ英語習ってないもんね。」




「お姉さん、わかるんですか?」




「ジャック*ザ*リッパーが出たぞ、警察を呼んでくれって叫んでる。」




しかし、ゲームの世界とはいえここの住人の全てが英語となると一々通訳するのが大変そうだな。




だが、そんな心配をよそに数秒足らずでこの世界の言語が全て日本語になった。なんて便利な世の中なのだろう、まるで青いネコ型ロボットのこんにゃくのようだ。



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