「・・・城か?」





でかい、でかいとは思ってはいたがまさかこんなに大きなお宅だったとは。向かいの博士の家が霞んで見えるのではないだろうか。さすが大人気売れっ子小説家の家は違いますね。玄関も大きいし、と呼び鈴を鳴らそうとすると工藤宅の玄関扉が勢い良く開いた。





ゴッ





「痛ッ!」





勢い良く開かれた扉は私の顔に物の見事に当たる、痛みに耐えながらズルズルとその場にしゃがみ込むと上から沖矢昴とは違うそれがした。





「すみません、大丈夫ですか?」





今まさに扉を開けたであろう彼が私に向かい手を差し出していた。その手を取り立ち上がる。手を差し出した彼は褐色の肌に明るい髪をしていた。





「大丈夫です、ありがとうございます。」





「こちらこそ、すみません。」





「ここって工藤さんのお宅ですよね。」





「そうですが。」





「あなたが工藤さんですか?」





「いえ、僕は工藤ではありません。こちらには少し用事がありお邪魔させていただいていました。」





「こんな遅い時間に?」





「あなたこそ、こんな遅い時間にこちらに何か用ですか?」





彼の、何かを見定めようとする、探ろうとする目が嫌いだ。
何を考えているのかわからない。でも、なにか探ろうと少しの仕草も見逃さずにしてやろうと光らせているであろうアンテナも嫌い。要するにこいつは苦手。





「安室さん、どなたかいらっしゃったのですか?」





中から出てきたのは沖矢昴だった。
私と彼を見て不思議そうに小首を傾げている。





「安室?」





「僕です、安室透といいます。」





「おや、今日はお客様が多いですね。」





「夜分にすみません、少しお伺いしたいことがあったもので。」





「そうなんですか、ですがすみません。あいにくここの家主は今海外に行っておりまして。言伝でよければ僕がお伺いいたしますが。お名前は?」





「・・・蜂谷誄と申します。」





「蜂谷さんですね、ご用件は?」





「いえ、今日はタイミングが合わなかったようですのでまた出直してきます。」





「そうですか。それはすみません。」





「失礼いたします、沖矢昴さん。」





工藤宅の玄関を離れ角を曲がる、途中怪しい車が何台がいたがこれはスルーで。関わらなければ被害もないだろう、だって私は一般市民。健全な大学生なのだから。
それにしても、沖矢昴さんは見れば見るほど面白い。





「安室さん、彼女とお知り合いですか?」





「いえ、今日初めてお会いました。」





「そうですか。」





「僕もそろそろお暇します。」





「はい、ついでに門のあたりにいる方々も一緒に帰っていただけるとありがたいのですか。」





「えぇ、もちろん。では。」





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