赤井秀一編


赤井秀一編




突然目の前に現れたあの不思議な女性に惹かれたのはいつからだったか、きっかけはあったのかと聞かれればきっかけらしいものはあったのかもしれないが具体的にそれがいつかと、何かとかと聞かれてもハッキリとはわからない。





ただ、漠然と「守りたい」と思っていたものの、日を重ねるにつれて「俺が守りたい」に変化していった。だからこそ、大阪へ行く時だって一緒につれて行こうとしていた。まさか、向こうから連絡が来るとは思っていなかったが。





船で告白まがいのことをしたのは多分自分自身が沖矢昴としてその場にいたからだろう。本当の自分の姿ならあんなところではしない、絶対に。困ったような顔をしていたがそれが良い意味であって欲しいと願いつつ本心では断られても仕方がないとも思っていた





会って間もない人間に、彼女の言う「漫画の中の登場人物」にそういったことを言われているわけなのだから。いずれは元の世界に戻る時が来るのかもしれない。そうなった時に俺は彼女を快く向こうの世界に返してやれる自信がなかった。なら一層の事、俺のものとしてここに繋ぎ止めておこうとさえ思っていた。





家に帰ってあの怪盗キッドという男に彼女がつれて行かれそうになった事は驚いたが、その後の彼女の返事にもまた驚かされた。







「ほ・・・保留じゃダメですか?」







イエスかノーでの答えばかり考えていたせいもあってか保留と聞いた時は断られているわけではないという事と、少なからず彼女は俺自身をそういった感情を含めて見てくれているのではないかと柄にもなく嬉しく思っていた。





彼女からもらったタバコに火をつけて、部屋を舞う香りに酔いしれていると、お世話になっている工藤宅の玄関の鍵が開く音がした。





「今日はボウヤが来ると言っていたか。」





まずは、この柄にもなく緩んだ顔をどうにかしなくては。



- 42 -

*前次#


ページ:



ALICE+