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「ベリスリーですか、《カマフの亡霊》なら持っているんですが。《ユジュミの洋館》これは持ってなかったです。」
「ベリスリーをご存知なんですか?」
「えぇ、すべての作品を知っているわけではないですが。《カマフの亡霊》《英断》《シャンベリーゼに愛の花束を》《憂鬱な遊覧船》は持っています。」
「年齢の割には難しい本を読むんですね。」
「僕、貴方に年齢の話をしましたっけ?」
墓穴を掘るとはまさにこのことだと言っておこう。彼は私に対して自分自身の年齢の話なんてしたことがない。それをどうして知っているかというと簡単にいうと「調べました。」の一言に尽きる。
相手を調べる上でやってはいけないことは、相手が話したこと以上の知識を話してはいけないこと。相手を疑っていたり駆け引きをしているならなおさらそうである。だが私は彼がベリスリーを知っているがために気を許したというか興奮したというかテンションが上がってしまって頭の中がパリピだったのだ。
「赤井さんから聞きました。彼は年の割に若く見えるって。」
「そうでしたか、赤井がそんなことを。」
「はい。」
「嘘はいけませんよ。」
「・・・うまく引っかかってくださると思ったんですが。」
「赤井が僕の年を知っているのはわかりますが、彼が貴方に僕のことを話すとは思えない。大方、コアな本のことを知っていたので気を許したというところでしょうか。」
大正解だよ、公安さん。だがしかしこんなところで引き下がっては女の名が廃る。絶対に負けてたまるか。
「確かに頭がパリピでしたが。安室さんって見た目若そうじゃないですか。それもあってですよ。」
「若そう、ということは僕の実際年齢を知っているんですか?」
「・・・。」
「また墓穴ですね。いい加減諦めてください。」
「腹が黒いようですので、一度洗浄してきてください。」
「酷い言われようだ。」
今まで私から取り上げた本をただ捲ってそれを追っていただけの視線が何かを孕んだような雰囲気でこちらを向いた。それは殺気にも似たような憎悪にも似たような。RPGでよくあるラスボスの視線のような感じだった。絶対の自身と自負を背負いこちらを見るそれに、射抜かれたように自身のそれが動かなくなる。
「貴方の正体を知りたいんです、あの赤井と知り合うなんてただの一般人ではそうそうないことですし。あの赤井が自身の車に乗せるぐらいですから余程貴方を信頼している。一体どういう関係なんですか。そして、貴方は何者なんですか?」
「・・・安室透本名降谷零、警視庁警備局警備企画課に所属していて現在ある組織に潜入捜査中の29歳男性。毛利小五郎さんのところへ私立探偵として弟子入りしている。組織でのコードネームは「バーボン」。探り屋として重宝されている。ポアロでアルバイトをしていて、安室さんが考案したハムサンドが凄く人気、あなた目当てに女性客が増えた。赤井さんとは一悶着あったようであまり好意を寄せてはいない、どちらかというと敵意を抱いている。」
「やはりそうでしたか。」
「知っていて話しかけてきたんですよね?」
「半信半疑でしたが貴方がアセットでしたか。」
「なぜアセットが私だと?」
「部下の風見が貴方をみたことがあると言っていまして。まぁ、正確にいうと貴方に似た人をでしたが。」
「工藤さん宅にいた彼らですか。」
「はい。」
ばれてしまったなら仕方がない。なるべく穏便にこの場を済まして彼には早々にお引取り願おうではないか。本の続きも気になるし。
「やはり、犯人はアミーナでしたか。」
本をまた開き何を読んでいるのかと思いきや、私が読み進めて居たベリスリーの推理小説の犯人をペロッと言いやがった。
「安室さん、私まだそれ読み終わってないんですけど。」
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