街頭を横目に走っていた車は暗い路地へと足を進めて行
き、やがて止まった。
拙い質問をしたとは微塵も思っていない、だって。知的好奇心に勝るものはないでしょう。



「どういう意味でしょうか?」



車が止まってしばらく経って口を開いたのは沖矢昴だった。先ほどの柔らかい丸い声とは対照的に、今度は暗く冷たい声。



「そのままの意味です。初めてあなたと会った時あなたは東都大学の大学院生≠ニ私に言いいました。」



「はい、確かにそう言いました。」



「私も、そこの学生なんです。でもあなたをその大学で見たことは一度もない。」



「大学生と大学院生だから合わないんじゃない?大学って広いから校舎が違えば合わないこともあると思うよ。」



「そうね、でも。あなたその大学に在籍してないらいいですよ。」



「調べたんですか?」



「知的好奇心が勝ってしまったので。」



少し息を吐くと沖矢昴さんはタバコに火をつけてこちらを向いた。普段開かれていないその目からは緑色の綺麗な眼光がこちらを射抜いていた。



「いつからおかしいと気づいていた?」



「安室さんに会った時でしょうか」



「彼に?」



「安室さんに会った日、あなたにも会いました。ですがあなたは私のことをまるで初めて見るような顔と声で聞いたんです。お名前は?≠チて。私、初めて二人と会った時に名前を名乗ったのに、どうして覚えていなかったんでしょうか?」



「忘れちゃっただけなんじゃないの?」



「あんなに事件をホイホイ解決して、警察からの信頼も厚いあなた達がそう簡単に私のことを忘れるとは思えませんし。あなたほどの方がそうすぐに人の名前を忘れるとは思わないです。それに、工藤宅にって貴方は私に家主いない≠ニ言いました。私が沖矢昴さんに会いに行ったのかもしれないのにいの一番に家主の話をしたってことに、少し違和感を覚えまして。」



二人が目を見開くのを感じて閉じていた目を開ける。そこまで同様してくれると疑問が次々と確信に変わっていく。やはりそうだったのか。と自分の技術がなんら衰えていないことに優越感さえ覚えてくるのを心のどこかで感じていた。



沖矢昴さんと工藤宅であった時私を知らないような素振りを見せていた。それ自体も疑問であったし。沖矢昴という人物が現れると同時に姿を消したFBI捜査官赤井秀一#゙の存在を確かめているうちに浮き彫りになってく公安。安室透という人物そしてある組織に関わる重要ななにか。まぁ安室透も偽名なのだけど。



調べれば調べるほどに自分が後戻りできないようなそんな感覚に陥って、それでもそんな感覚に身を鎮めるのも悪くないと思う自分がいる。



「どこまで調べた。」



「あなたがFBI捜査官赤井秀一≠ナ少し前来葉峠で殺されたというところまででしょうか。」



「お前は黒の組織の連中か?」



「江戸川コナンくん、私なんどもあなたの言葉使いについては注意してるんだけど。」



「いいから、答えろ。」



「クソガキに話すようなことなんて何もないわ。それに、私はその組織について何にも発言していないのに、ね。江戸川コナンくん。」



「・・・ッ。」



「でも、まぁ答えてあげる。私はその組織とは無関係。」



「無関係だという証拠はあるのか?」



赤井秀一の目をした沖矢昴が私の方を見据えている。
首元にある変声機はいつの間にか切られていて、沖矢昴の時とは違う矢のような声が耳に入ってくる。



「今ここで組織と関わり合いがないって証明しろと言われれば無理ですね。だって、どんな証拠を見せればいいかわからないんですから。どういう行動をすれば、組織の仲間じゃないと言えるんですか?」



「ジン・ウォッカ・キャンティー・コルン。」



「ボウヤ何を・・・。」



「ウォッカはわかりますがそれ以外はわからないですね、暗号ですか?」



「いや、酒の名前だ。」



「お酒ですか、ウォッカってお酒があるんですか?」



「お姉さんさっき知ってるって言ったたじゃん。」



「私が知ってるウォッカって馬の名前だけど。」



沈黙とともに凍っていた空気が少しずつだが柔らかになっ
ているのがわかる。何かおかしなことを言った覚えはないが何やら二人がニヤニヤしているので気持ちが悪い。



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