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海洋娯楽施設上のヘリポートには沢木公平が呼んだであろうヘリコプターがすでに付いているようだった。だが、揺れる施設のヘリポートでは着陸が難しいらしく、上空でこちらの様子をうかがっているようだった。
「何をしてる、着陸しろ!」
普通に考えて無理だろう。
揺れているヘリポート、そしてさらに海王娯楽施設を支えるための支柱やら何やらも折れてしまって斜めになっている地面。こんなところ着陸しようとする方が無理だ。
「こんなところにヘリが着陸できるわけないじゃないですか。」
「なに?」
「普通に考えたらわかりますよ、それともそんなことにも考えが及ばないほど興奮しているんですか?」
「自分の立場が分かっていないよだ。」
首にあてがわれていただけの刃物が少しだがしっかりと私の首に刺さっていた。
きっと血が出ているだろう、赤井さんにまた心配をかけてしまうな・・・。
「お姉ちゃーん!!」
コナンくんの声が聞こえる、きっと助けに来てくれたんだろう。沢木公平が私共々そちらの方を向く。
あれ?
白鳥警部がいないではないか。そうか、蘭ちゃんを一人にしてはいけないからきっと残ったんだろう、その代わりに安室さんが心配そうな顔でこちらを見ている。
「ヘリコプターで逃げても無駄です、蜂谷さんを離してください!」
「黙れ、ここを出たら辻を殺しに行く。」
「辻さんを、彼は全米オープンに出られないんだ。それでいいじゃないか。」
「ダメだ、奴を殺して俺も死ぬ。この女も道ずれだ。」
「さ、沢木さん。」
安室さんや毛利さんの必死の訴えも、もうこの男には届かないのだろう。私を抱えている腕もますます力が強くなっている。この男は本当に殺したい奴を殺して自分も死ぬ気なんだ。なんて迷惑な奴。
建物がもろくなっているせいか頻繁に建物が揺れ、傾いていく。その度に地面についている足の角度が変わり、彼がしめている腕が首にかかってくる。
苦しい。
もし、この物語が物語通りなら。今この場で人質になっているのは蘭ちゃん、しかし私というイレギュラーが入ったために物語は変わってしまった。そして蘭ちゃんの足をかすめるように撃ったコナンくん。
もし、この物語の彼女の立ち位置が変わってしまっていても。
もし、今人質にされているのがイレギュラーな私でも。
物語の根本的な物は変わっていないはず。置き換えよう立ち位置を。私は蘭ちゃん、そしてその足を拳銃で撃つのは・・・。
「あなたしかいないじゃないですか。」
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