10


「もしもし、誄ちゃん?」


「あぁ、今大丈夫?」




「まだお店の開店時間じゃないから平気だけど、何かあったの?」




「殺人バクテリアが飛行船の喫煙室にバラまかれた、すでに感染者も数人でている。」




「え!誄ちゃんは大丈夫なの?今どこにいるの?」




「今、飛行船の喫煙室からかけてる。」



「早くでないとダメよ!感染しちゃうじゃない。」




「それがもう感染してるんだなぁ、多分だけど。」




「そんな。」




「大丈夫だよ。それより、調べて欲しいことがあるんだ。」




「な、何?」




「今からそっちのパソコンに男の画像を送る、その人物について調べて欲しい。」




「わかったわ、すぐに調べて連絡する。」




「助かるよ。」




「本当に大丈夫なんでしょうね、死んじゃったりしたら嫌よ。」




「平気だって。」




通話を切って二の腕あたりを見る、少し赤みが出てきたような感じがある。発疹が出始めているのだろう。ならなおさら、この部屋にいても大丈夫か。感染していないのならこの部屋から立ち去りたいが、感染して言うとわかった以上誰も入ってこないこの部屋こそ格好の部屋。




連絡を待っていると何やら外が騒がしい。様子を見ようと立ち上がると喫煙室のドアの曇りガラスから何やら人影が見えた。




「まじですか。」




ガチャ。




「ここには誰もいないようだな。」




「あぁ。」




「よし、ボスに伝えろ。」

「はい!」




危ない、非常に危ない。
幸いなことにこの喫煙室は入ってすぐ右に手すりがあり、そこから下を覗くと少し低い位置にメインデッッキ同様ガラスが貼ってある、手すりから外の風景を見通せるようになっているようだ。添乗員がそのガラスを掃除するためにハシゴも掛けられており、それを使いガラスのところまで降りてことなきを経た。




誰だあの武将集団は・・・。




携帯の音を切っていて正解だ。さっきからチカチカと着信を携帯電話が着信があると教えている。




「はい。」




「誄ちゃん?さっきの男の事、調べたわ。」




「どうだった?」




「海外で傭兵経験のある窃盗グループらしいわ、男性が11名、女性が1名よ。」




「女性?」




「えぇ、間違いないわ。使っているパソコンもあの時のものと同じ。」




「じゃぁ、こいつらが。」




「そうよ、こいつらが契約違反者よ。」




「ありがとう。そのデータを私のパソコンに送って。」




「わかったわ、それよりバクテリアは?」




「大丈夫だって、じゃぁ切るね。」




「え、ちょっと誄ちゃ・・・。」




通話を切るか切らないかの時分、また扉が開いた。今度は二人?どうやら感染者がでてここに放り込んでおけとなったらしい。




あれは、テレビの水川さん?




水川さんも喫煙室に行っていたらしく、その手のひらには赤い発心が出ていた。水川さんはこの世の終わりのような顔をしながら椅子に座り両手で顔を覆いうなだれている。無理もない、殺人バクテリアかもしれない細菌に感染してしまった上に、おそらくこの飛行船はジャックされている。




武装している人たちが来てジャックしていませんなんて言ったら、そんな格好しているのに何やっているんだ、と怒ってやりたい。だが今はジャックなんてして何をしているんだ、と怒ってやりたい。




どれくらいがたっただろうか、水川さんがあそこにいる以上迂闊に外にはでれない、空は異様なまでに晴れ渡っている。そんな中、窓ガラスが映し出したのは異様な光景だった。




「コナンくん、今度は紐なしバンジーですかい?」




誤解されないように言っておこう、「紐なしバンジーですかい。」の「すかい」は決してお空の「スカイ」とかけたわけではない。どこそのダジャレ博士のような事は私はしない、決して。




「はっくしょい!」




「おい、じじい!うるせーぞ!」




「すまんのぉ、風邪かのぉ?」


- 86 -

*前次#


ページ:



ALICE+