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飛行船内部は思ったよりも明るく見通しがよく、すぐに名探偵を見つける事が出来たのはいいのだが。小学生基高校生一人にいいように遊ばれる武装集団を見て言うとなんだか嘆かわしい思い出溢れてくる。みっともない。
コナンくんが外したであろう武装犯の手袋が落ちていて、武装犯のうちの一人の爪は黒く変色していた。おそらく漆か何かの職人なのだろう、だとするとこれは漆によるかぶれという事になる。
そういう事ね。
初めから殺人バクテリアなんてこの飛行船内には仕掛けられてなかった、喫煙室に巻かれたのはおそらく漆。それにかぶれた喫煙者たちが次々と感染者になって行ったって事。漆に被れた藤岡さんに触れられた蘭ちゃんがその形に発疹を起こしたのはそのためだろう。
「・・・赤井さんに感染したとか言っちゃったような、言ってないような。」
感染しましたって言ったのか、感染したような症状が出ましたと言ったのか明確な記憶はないが赤井さんの事だから大丈夫だろう。今頃武装集団の仲間を追うためにアメリカだかなんだか外国に仕事に行く準備をしている事だろう。邪魔するのはまずいし、私もそんな暇はない。
早くスカイデッキに行かなければ。
螺旋階段を走って上がっていると、私の他にもう一人カンカンと音を立てて階段を上ってくる足音がする、嫌な予感しかしない。
「あれ、お姉ちゃん?」
「やっぱり、お前かい!」
「え?どういう事?」
何が楽しくて二人仲良くスカイデッキまで肩を並べて走って行き、何が楽しくて拳銃を構える武装集団と戦わなければならないのだろう。しかもだ、あの怪盗キッドまでも参戦してくるレベル。私はもう終わりだな。
最後の主犯格と思われる人物も、コナンくんのキック力増強シューズによって放たれたサッカーボールを顔面に頂き、エレベータの前に倒れる形でのされている。しばらくして、探偵バッチにメインデッキの残りも無事捕まえたとの連絡が入った。
「これで一件落着ね。そういえば武装集団に一人が眠っていたけどあれって麻酔針でしょ?」
「あぁ。」
「あれって1日一本とかじゃなかった?」
「博士に頼んで直してもらってたんだ。」
「そう、ご都合主義だこと。」
「なんか言ったか?」
「いえ、何も。」
「おい名探偵、このアンプルだけど・・・。」
「あぁ、このアンプルは偽物だ、中身は漆の液だろう。よし、皆の所に戻ろう。」
「私はもう一仕事あるからパスね。」
「え?」
「じゃぁ、また後で。」
「ちょっと誄姉ちゃん!?」
「おいおい、一仕事ってどういう意味だ?」
「知らねーけど、なんかやばいような気がする。」
「・・・お前知らねーのかよ、彼女の正体。」
「正体?」
「まぁ、直接聞くのが一番だな。俺がバラしたってわかったら怒られそうだし。」
「おい、どういう意味だ!」
飛行船の上は風通しがすごく良い、良いっていうか。風が
もろに体に当たってすごい風圧。立ち上がり足に力を込めて前へ歩く。向かうはへっちゃき。
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