心に染み込ませて




そろそろ孤児院の暮らしにも慣れてきた頃。


キャッキャと同年代の子達と追いかけあったりして遊んでいれば、木の下で独りで本を読むトムを見つけた。



「ねえ」


「…………」


「ねえってば」


「……………なに」




わたしがトムの隣にしゃがみ込んで、何の本読んでるの、と言うように顔を覗けば心底鬱陶しそうな顔で逸らされる。


「僕に近づくな」


「なんでよ」


「特別なところなんてないのにチヤホヤされて浮かれているようなバカな君と一緒にいたくない」



突然の罵りに驚いたのも無理はないと思う。

が、怒りはしなかった。


わたしは、容姿が人よりもずっと整っていた。
コミュニケーション能力も低くない為、孤児院ではすぐにみんなと打ち解けることが出来ていたのだ。

だがトムも、とても綺麗な容姿をしていると思った。

なのに彼はいつも独りだった。

でもそれはきっとトムがそう仕向けているのだろうと私は子供ながらに悟っていたし、トムが自分を特別な存在だと思っているーーーーそう思っているだろうな、ということを前々から感じていたのだ。
何となくではあるけれど。

トムの目は、いつだって人を見下していた。



「…貴方は、特別なの?」



「………」



トムが、わたしの言葉に目を細めた瞬間、瞳が赤く見えて一瞬見惚れてしまう。

それと同時に、木の裏側から小さな蛇が出てきてわたしの腕を噛もうとしたので、慌てて『噛んじゃだめ』ということを伝えた。

それを聞いた蛇は、シュン、と頭を下げ『ごめんね』と謝ってきたので優しい蛇なんだと認識したわたしはそのまま蛇の頭を撫でる。


その全容を見たトムは、少なからずも驚いていた。まさか、自分以外にも蛇と話せることが出来る人間がいるだなんて思ってもみなかったからだ。


トムが蛇に襲わせたことが分かっていたわたしは怒らずに、寧ろ、目を輝かせて口を開いた。



「トム、驚いたわ、貴方パーセルマウスなのね」



嬉しい、と言うようにニコリとトムに笑いかければ顔を顰めながらわたしに「パーセルマウスとはなにか」を聞いた。



「いいわ、教えてあげる」



トムと仲良くなりたいな、と思った。





花死