不思議な男の訪問


信じられないほどあっという間に数年が経った。

私達は11歳になった。



やはり、トムと私はいつも一緒だったけれど、1つだけ変わったことがあった。


私がトムと呼ぶと、嫌がるのだ。


理由は、平凡でありきたりな名前が嫌らしい。


今はまだトムと呼ばしてはくれているけど、その内もう呼ぶなと怒られる日が来るかも知れない。

けれど私は、トムという名前が好きだった。

名前を呼ぶ度に、
心地よくて、ホッとする。


私がそう言えばトムは、嫌な顔はしていたが満更でもなさそうに私の頭を撫でた。

どうやら私は、
トムの扱い方を知らず知らずに覚えてきているらしい。





そして、夏も終わりかけのある日のことだった。


「君が名前・苗字かな?」



何とも奇妙な格好の男が私の部屋に入ってきたのだ。





「…はい、私が名前・苗字です。貴方は誰なのです?」


私がそう怪訝そうに答えれば、男は私の目の前にあった背もたれのない丸い椅子に腰掛け、私に人当たりのいい顔で笑いかけた。

たった、それだけでこの人は悪い人ではないのだと思った。



「そう警戒しなくてもよい。…初めまして。私はアルバス・ダンブルドアという。…君は知っていると思うが、ホグワーツ魔法魔術学校の教師だよ」


「ホグワーツ?ホグワーツの先生なの?」


とても驚いた。まさか、お母様がよく話してくれたホグワーツの教師が私の元へ態々訪ねてきてくれるだなんて。

どうして訪ねてきたのだろうと、考えた瞬間、ある一つの可能性に私の胸は酷く踊った。


「…もしかして、私もホグワーツに通えるの?」


私のその言葉に、ダンブルドアはひとつ頷いた。

思わず嬉しくなって破顔すれば、ダンブルドアもその反応につられるようにして明るい笑みを浮かべた。


「その通り。そして、もう一人、」


「私分かるわ。トムでしょう?トムも魔法が使えるもの。」



ダンブルドアの言葉を遮り、食い気味にそう言えばダンブルドアは更に笑みを深くしてもうひとつ頷いた。


「その通り!そこで買い出しに行かなければならないのだが………私と一緒に行くかね?」


「ええ!そうするわ!」


その返事にダンブルドアは少し安心したようだった。何故かはその時は分からなかったけれど。

だがすぐ様そう答えたものの、気になることがあった。


「…………そういえば、トムも貴方と一緒に?とてもそうは思えないのだけれど」


するとダンブルドアは残念そうに首を振った。


「トムのことをよく知っているのだね。……トムは自分で行けるから行き方だけ教えてくれと言われたよ」


そう聞いて、トムらしいと思った。


彼は、誰にも頼らず全て自分でやってしまう人だからだ。

ずっと一緒にいる私にも、頼りはしなかった。




「そう……だと思ったわ。私トムとはとても仲が良いから分かるの。…………なら私はトムと2人で行くことにするわ。心配だし。」


心配だし、という言葉は真っ赤な嘘。心配は一切していない。心配するだけ無駄だからだ。

ただ、私がトムと行きたかっただけ。それに、トムも私と行くつもりに違いなかった。



ダンブルドアはその言葉に「そうか…」と呟き少し残念そうに目を細めた。

だけど、ダンブルドアはすぐに私に向き直り口を開いた。神妙な面持ちだった。


「トムを、よく見ていてはくれないか」


私には、出来た。

ダンブルドアのその言葉の意味を理解することが。




花死