死を制する者
そうして、買い物も順調に進んでいき、トムと最後に寄ったお店がオリバンダーの店だった。
杖を必要とする人は多そうなのでもっと人で溢れているかと思いきや意外なことに中には誰もおらず、店主であるオリバンダーらしき人が奥の棚から顔を出した。
「杖を買いに来たのかね?よしよし、どちらからにする?……じゃあ男の子の方からじゃな、杖腕は?…………よし、ちょっと待っとれ」
ほとんど声を発してはいないのだが、もう慣れたものなのかあれよあれよと勝手に進んで行き、トムが連れて行かれるのを私はポカンと眺めていた。
「これを振ってみなされ」
そういわれてトムが軽く杖を振れば窓が割れた。
それにオリバンダーが気にすることもなく「合わんようじゃな」と声を洩らした。
トムが何度か振っては壊し振っては壊しを続けていたが、とうとうトムに合う杖が見つかった。
「なんと……、イチイの木、不死鳥の尾羽根、……イチイの木は平凡な魔法使いを選ばないという、……君は偉大な魔法使いになるじゃろう」
「イチイの木…不死鳥の尾羽根…………へえ」
その杖に、トムは大変満足そうだった。
偉大な魔法使いしか選ばないという杖に選ばれたのだから、無理もないと思った。
そして、私の番だった。
私がワクワクとした表情で前に出れば、オリバンダーが私の顔を訝しげに覗き込んだ。
「苗字じゃな?苗字の娘」
「お母様を知っているのですか?」
そう私が声をあげれば、オリバンダーがニコリと笑った。
「君の母親はよく覚えておるよ。君にそっくりじゃ。3回も杖を買いに来た。それもどの杖もサクラの木!東洋の日本では人気の高い杖じゃよ」
「3回も買いに来てたのね」
生前のお母様を思い出しクスクスと笑っていればオリバンダーが私に細身の杖を渡した。
それに、トムがやっていたように軽く振ってみれば杖の在庫の棚が全て飛び出した。
「うーむ、母親と同じサクラの木だと思ったんじゃが、合わんようじゃな」
そういってまた杖を探しに奥へ入る。
もしかしたら、お母様と似た杖が使えるかもしれないと思ったが、私には合わないようだった。
それからも、私も何度も何度も試したが、一向に合う杖が見つからず、待っていたトムもウンザリとした様子だった。
私ももう合う杖はないんじゃないかと少し心配になってきて、口がへの字になってきた頃、
オリバンダーが私を伺うように渡した杖。
それを軽く振れば、杖先が鋭く光り、店中の蝋燭に火を灯した。
「なんと……これを手にする者がいようとは……アカシアの木にセストラルの尾の毛、非常に頑固…………アカシアに選ばれる魔法使いは非常に希少で、在庫はそれで最後になる。
そして、」
私も、さっきまでウンザリしていたトムも、後に続くであろうオリバンダーの言葉に耳を傾けた。
「セストラルの尾の毛は死を制した魔法使いしか制御できない扱いにくいものじゃ。……非常に強力すぎる杖じゃよ」
その瞬間、視界の端に映っていたトムの瞳がギラリ、と赤く光った気がした。