魔法薬学




「教科書95ページを開いて各自はじめなさい。間違っても、ミノカサゴの棘の粉末を吸い込まないように!咳が止まらなくなるからな」


ズボンのベルトの上に乗っかり気味のお腹を揺らしてスラグホーン先生がニヤリと笑った。

私は急いで材料を取りに行き鍋を火にかけ、教科書を"一応"開いておき、ワクワクといった表情を隠さないまま作業に取り掛かった。




ホグワーツの授業が始まって早2ヶ月。

好きな授業と嫌いな授業がみんな個々で決まってきた頃。

私は魔法界の様々な知識を得ることにとても興奮していた。

面白くない授業なんて1つもなく、予習復習が楽しくて仕方がない私はトムを巻き込んででも夜な夜な教科書を開き読みふけっていた。

特におもしろいと思ったのは魔法薬学と呪文学だった。

魔法薬学の本は孤児院にいた時に丸暗記してしまったほど。


「ねえちょっと名前!なんでそんなにサラサラ水っぽくなるの?私なにを間違えたのかしら!」


「ああエマ、貴女ウツボグサを刻んでないでしょう?」


「草をどうやって刻むのよ!」



目を吊り上げて本気で鍋に怒っているこの女の子はルームメイトのエマ・クリント。こげ茶のボブで気の強そうな顔をしている。混血だそう。

この子は魔法薬学がとても苦手らしくイライラとした様子で鍋をかき混ぜていた。

繊細な分野が死ぬほど嫌いらしい。確かにベッドの上はよく散らかっているし、大雑把な様子が伺えた。


「名前、火が弱まってきてるよ」


「あっ、危ない…、ありがとうトム」


私の隣ではトムが涼しい顔で鍋をかき混ぜていた。トムの鍋の中は私のと同じような感じだった。


「ああダメ…!色がまた変わってきたわ…爆発したらごめんね名前」


「あら、隣のアルファードの方が危ないかもね」


クスクスと笑いながらエマの隣にいるアルファードを見ると、げんなりした様子で教科書を読んでいた。


「いやほんと、………トムも名前も教科書読まないで何でこんなに早く出来るんだ?」


アルファードの周りには魔法薬を作るための材料が散らかっていて、更にまな板の上には何を刻んだのか潰したのか緑色の液体がベットリとついていた。

教科書を読んでいる筈なのに、2人ともどうしてこんな結果になるのか本気で分からない私はウーンと唸った。

するとそれに気づいたのかなんなかスラグホーン先生がトムと私を見てニッコリと笑いかけながらこちらへ近づいてきた。


「さてさて、君達2人ではこの魔法薬は簡単すぎたかな?………ホホーウ!素晴らしい!」


トムと私の鍋を覗き込んだスラグホーン先生は嬉しそうに声をあげ手を叩いた。

どうやらかなりいい出来なようでスラグホーン先生は嬉しかったのか自ら私達の鍋の中身を瓶に詰め提出してくれた。

スラグホーン先生は初めて魔法薬学の授業を受けたときから私達のことがお気に入りの様で、私達が成果を上げれば必ずスラグホーン先生も大喜びで加点し大袈裟なくらい私達を褒めた。

恥ずかしいのでやめてほしいのだがそれはまだ言えていない。


「どれどれ、トムと名前の友人達の出来はどうかな……あ、あ〜……なんて鮮やかなオレンジ色………」


先程まで嬉しそうだったスラグホーン先生は暗い表情へと一変させ「早く提出してしまいなさい」と去っていった。


花死