どうか私にだけ






「スラグホーン先生のあの顔みた?ピーブスに大事な毛生え薬を鼻に突っ込まれたみたいな顔してたわよ」


「そりゃ一大事だ。どうせなら鼻じゃなくて頭に毛は欲しいよなあ」


「まああのオレンジ色の魔法薬は流石に驚いたんじゃないかなスラグホーン先生も」


「果汁100%でもあんな色にはならないわ」


クスクスと4人で笑いながらお昼ご飯を食べに食堂へ向かう。

最近は専らこの4人で行動することが多く、トム自身もアルファードとエマを受け入れている様に見えた。


そう、見えた、だけ。


正直、私はトムに違和感を感じていた。


孤児院の頃のトムのあの冷たい残虐性が見えないのだ。


トムは孤児院にいた子供達を恐怖で支配することができ、あの日…、孤児院のみんなで遠足に行った日、洞窟でエイミーとデニスにトムが魔法を使ったときは2人とも何も言わず、ただどこかおかしくなってしまったのを私はしかと感じた。

私はそれが心配だったのだが、私の思いとは裏腹にトムは人に親切をしてみせ、先生に笑いかけ友達とつるむようになってきている。

私はこれを、喜べばいいのだ。

トムが改心し、平和に生きることを決めたのだと。



けれど、なぜか素直に喜ぶことが出来なかった。


これは嫉妬ではない、…私の"予感"だった。



「名前は放っておいたらスコッチエッグしか食べないからな、置いとくよ」


コトリと私の目の前にポテトやサンドイッチがのってあるお皿がトムの手によって置かれた。

色々考えているうちに食堂についていたらしい。


「大丈夫か名前。具合でも悪い?ボーッとしてるけど」


グイとトムの手によってむりやり顔を合わせられたので絡む視線。

その目は孤児院のときと変わらずとびきり甘い気がして「なんでもない大丈夫よ」と優しく払った。

そんな私に少し怪訝な顔をしたトムだったがとりあえずは納得したのかサンドイッチを頬張った。


「(ああ、私はなんて性格の悪い、)」



トムが何を考えていようが関係ない。

私が貴方のものである限り、


貴方は私にとびきり甘いのだ。




花死