赤羽学
足音に混じる金属が揺れる様な音。騎士の纏う鎧ではない。奴隷が繋がれる鎖でもない。王族貴族の如く身体を装飾する、繊細で大胆な金属音。彼が身につけてるのは金属の…否。それは石だった。自然のままの石ではない。掘り出された後技術者の手によって加工され、時に小さく、時に大きく。それぞれの持たる色鮮やかな輝きを放つ石───宝石。彼は宝石を身につけていた。1つ?2つ?違う。文字通り身体中。耳にはピアスとして。胸部にはネックレスや飾りボタンとして。手には指輪。ベルトにも。ブーツまで。隈なく全身。彼は自身を、まるで宝石という絵を描く為のキャンバスであるかの様に、隙間なく宝石に身を包んでいた。しかしその瞳に輝きなどない。白く、絹の様なきめ細やかな美しき肌は身体中の宝石と同じ様な気品を感じさせたが。彼の姿勢にも、目つきにも、それらは感じられない。
無───。
全身の宝石を持ってして、美しき容姿を持ってして、尚も彼は満たされていないかの様な雰囲気を醸し出していた。だが真に畏怖すべきはそんなことではない。彼の右手に握られた、血の滴るカトラスでもない。今ここは海の上であり、自分は彼の率いる者達に囚われており、その者達とは海賊であり───目の前の男こそが海賊の王子様と恐れられる「ラムズ・シャーク」本人であることだろう。
@akaba_gaku