関森渉
無駄に高い天井。はしたないシャンデリア。貴族と呼ばれる人間の住居だろう。
ただ住むだけの場所を、なぜここまで飾る必要があるのか。まったく、人間という生き物は実に愚かである。
部屋の中央には、蝋燭が並んだ丸いテーブルがあり、白銀色の髪の男が頬杖をついて眠っていた。
ここに住む者がどんな人間か確かめるべく、吾輩はテーブルの上に飛び乗った。
なんとまあ。宝石を眺めながら眠るとは、実に愚かだ。
髪と同じ色の長い睫毛。尾でなぞりたくなるようなシンプルな曲線を描いた鼻筋。その重心は一切ぶれることなく首から胴体へと続き、胸のあたりで一度膨らんでから、衣服の中に収まっている。まるで、腕の良い職人が手掛けた彫刻のように、本来の質感を錯覚するような造形だ。
完成されたものに装飾を施すことは無粋な行為だというが、青や緑に光る宝石を引き立てているのは、窓からの光に照らされてやらかくぼやけた、この白い肌であった。実に──
「にぃやあ……」
「そんなにこれが欲しいのか」
突然語りかけられ、吾輩はテーブルを飛び降りた。
男は、左手の宝石をグラスに持ち替え、一口飲んでから碧い瞳をこちらに向けた。
「もう迷い込むなよ」
@momura_am6