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「早く急ぎなさァイ!東へ向かうのヨォ!」
「はいはいこれでも急いでるよ。あいたっ!もう雪之丞!髪の毛引っ張らないでー!」
「アンタがモタモタしてるからじゃナイノォ!早く行って早くカイケツしなさいヨォ!じゃないと、ヤスム時間がヘッテ、アタシの美しいぬばたまの羽ガいたんじゃうジャナイノォ!!」

「あーはいはいはい、わかったわかった」

カアー!!カアー!!


鴉にもオカマっているんだ
私に鎹鴉がついた時の最初の感想である。

鎹鴉となった雪之丞は、性別はオスだが口調は女性らしく酷く己の容姿を気にしている。
私からすれば、野に羽ばたいてる鴉との違いを見つける方が難しいのだがそんなこと口にしたもんなら罵倒と髪の毛散乱暴動が待っている。

強いて言えば下まつげが長い、くらいだろうか。

鴉にもまつ毛あるんだ
これが雪之丞への2番目の感想だった。



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今回、派遣された場所は鉱山をもつ採鉱から製錬までもを行う鉱業地帯である。

鉱山で採掘をしていると明るかった灯りが突然消え、1人、また1人と人数を減らすのだという。消息不明者が10数名にのぼり鬼らしき姿が確認出来たため今回討伐依頼があがった。


さすが鉱業地帯である。昼間でも賑やかだ。


「すいませーん」
「おうらっしゃい!…お?嬢ちゃんみたいな女の子が買うようなもんはうちにはねぇぞ!」
ガハガハと店主がおおらかに笑う。

「少しあの鉱山のことで聞きたいことがあるんてますが」
「なんだ嬢ちゃん、怪談話に興味があんのかい?あそこは最近男どもが急にいなくなっちまうって曰くつきになってんのさ。
肝試しっつって入っていくやつもいるんだけどよぉそいつらも帰ってこなくなっちまって、とうとうあそこでは作業ができなくなっちまったんだ。まだまだほり進められるってのに勿体ねぇよなあ」
俺たちは資源あっての商売だからなあと店主さんは眉毛をさげた。

「その肝試しに行ったのも全員男性なんですか?」
「いんや、1人女がいたんだが話を聞こうにも支離滅裂なことしか話さんらしく医者もお手上げだそうだ。暴れるからって昼間も薬で寝かせられてるって噂だ」
「なるほど」

「嬢ちゃんはよそ者だから言っとくが、ここじゃあ男女問わず力仕事すっからよぉ。気が触った女は労働力にもならんから嫁の行き場がないんだわ。生きながら死んでるようなもんさなあ」親御さんも可哀想だよなあ
店主さんはまた眉毛をさげた。

「ちなみにその女性のお宅はどちらかお聞きしてもいいですか?」
「ああ、この道をまっすぐいって突き当たり左のとこだが。嬢ちゃんもしかして行く気か?
やめとけやめとけ。門前払いくらうさ」

「はい、当時のことをご本人にお聞きしたいので。
色々教えていただきありがとうございました。」
「おんおん、どういたしました!用はないだろうがまた来な!」ガハガハと店主さんが笑った。





「ここ、かな?」
教えてもらった通りの家に着いた、はず。
立派な門構えの家で、敷地内には作業場もあるようだ。

「すいませーん、突然のご訪問申し訳ありませーん!どなたかご在宅ですかー???」
すいませーーーん!

声を張り上げるが家の中から反応はない。

その代わり叫び声が聞こえた。


こないで!いや!たすけて!イヤーーー!
おちついてだいじょうぶよなにもいないわ
いやよ!たすけて!こないでよ!
あなたくすりを! ああ!


「!ごめんなさい失礼します!」
不法侵入にはしないでください!

声がする方に足を進めると、女性は四肢を縄で繋がれた状態で髪を振り乱し、それを壮年の男女が抑えようとしている所だった。
女性の近くにはお香が炊かれており、アヘン独特の甘酸っぱい香りが部屋に充満している。

「御前失礼します!」
私は思わず女性に手刀を振り下ろし、お香を消した。


「あなた、だ、だれですか!」
壮年の男女が私と距離をとった。
急に知らない女が入ってきて娘を気絶させたのだ、無理もない。

「私、鬼殺隊 村田 公子と申します。
急な訪問申し訳ございません。鉱山の怪奇を止めるべく西より馳せ参じました。」
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