07
ヒュゥゥゥ
水の呼吸 壱ノ型 水面切り
「おのれェ!小娘がぁぁっ」
首を切られた鬼が細かい砂となり消えていく。
「よ、よし。2体目」
最終選別もやっと今日で5日目。
初日はあの時以来初めて見た鬼に怯みすくんでいたが、同じ水の呼吸を使う狐の仮面の子達が颯爽と鬼を倒しているのを見て隠れている自分が馬鹿ばかしくなった。
何をしにここに来たんだ。震える手と足を叩き森の中を走りだした。
1体目は女性の形をした単眼の鬼だった。
首も細く長かったため頚椎を狙いやすかった。
2体目は青く大きい鬼で身の丈は相撲取りのようだった。
太く大きく、力があまりない自分では斬撃を加える事しかできずあわや腕を落とされそうになった時、毘沙門亀甲の羽織を着た狐の仮面の男の子が鬼の首を切った。
「あ、ありがとう!ございます」
「間に合ってよかった。義勇、真菰、行こう」
その3人の仮面から除く瞳は、自信と信念で輝いていた。
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5日目に切ったのを最後に森の中を練り歩くが、鬼と遭遇することなく最終日を迎えた。
こんなものだろうか。己が切った鬼はたったの2体。1体は手助けもしてもらった。
もっと沢山の鬼と対峙すると思っていたが拍子抜けである。
何はともあれ今日を生き抜けば、合格だ。
「う、うわあああ!なんだよあいつ!あんなの倒すなんて無理だ」
「もう3人も喰われてた!早く遠くへ逃げようっ!!あなたも!!!」
顔を真っ青にして受験者が私の横を通り抜ける。女の子が私の手を引っ張り遠くへ行こうとする。
「えっ、えっ」
「狐の子達が食い止めてくれてるから!!」
それを聞いて私は女の子の手を振り払い、逆に女の子の手を引く。
「わ、私達も行かなきゃ!!!」
「無理だよっ!あんなのと闘ったら死んじゃう!!」「そうだぞ!!お前見てないからそんなこと言えんだ!しんだら今日まで生きた意味がないだろ!」
そうだけど、やっと最終日だけど!
「でも!!!でも!!じゃあ私達何のために刀を持ってるの!?
戦うためでしょ!?狐の子達は戦ってるだよ?!!」
「っ勝手にしろよ!俺たちをお前の考えに巻き込むな!!おい、そいつの手離せ!おら、行くぞ!いそげ!」「う、うん…ごめんっ!私は行くね!」
2人はそのまま走り去ってしまった。
私は激情のまま2人と反対方向へ走り出す。
行かないと!!!
なぜ私がここまで感情的になったのか分からない。最終日で気が昂っていたのか、助けられた恩なのか、狐の子達に遅れを取りたくなかったのか。
理由は分からないが、私も戦わなければ。その思いで駆けた。
ガッ!カキンッ!!
「真菰は腕を頼む!義勇は足を!!」「分かった!」「まかせて!!」
その鬼は巨大な体躯に何本もの太い腕がまとわりついており、これまでの鬼とは一際異なる奇怪な姿をしていた。
「ハエのように鬱陶しいぃぃ!」
鬼は腕を振り回し、3人を振り払おうとするが、素早く動き回避している。私も助太刀しようと刀を抜いた時、あの男の子が鬼の首目掛けて飛んだ。
行ける!
そう思った時、首に当たったはずの刃が割れた。
そこからは闇雲に動いたため鮮明には覚えていない。
唯一潰されなかった男の子を背中に抱えて必死に走った。
ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!何もできなかった!!!
あの私の意気込みはなんだったのか。敵前逃亡だ。何も成長できてないじゃないか。
私は泣きながら走り続け、最終選別を終えた。
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