ドラケン君もオレも出血でふらふらで、もうケンカなんてできない状態。それでもヒナとエマちゃんをここから離れさせれたことだけが唯一の救いである気がして、未来は変えれなかったけれど、それでもクラクラする頭で前をみる。
見て、「え」という声が、自分の口からこぼれ落ちた。
キヨマサ君以外に無傷の5人の後ろに、傘をさしてりんご飴を食べている彼女……AAAさんが見える。半袖短パンのラフな私服に大人の男性が使うのではというほどの大きさの傘。血がたりてないオレの幻覚のような気がして、慌てて目を擦るのにAAAさんはまったく消えなくて、はくっと息が詰まった。口から彼女の名前も呼んでしまった気がする。なにもかもわからなくなってきているのだけがわかる。
ドラケン君も気づいたらしく「誰だ?」と呟いた。オレたち2人の視線につられるように5人も振り返りAAAさんである(この場合は女の子である)とわかって、少し張り詰めていた空気が消えていく。
「あ?なんだお前」
「道に迷っちゃったのかな〜彼女〜」
「へー、かわいいじゃん」
「なんだァ?ザコミチのオトモダチか?」
「こんな美人がァ?」
AAAさんの呆れと軽蔑と嫌悪が混ざった瞳はどんどん暗くなっていき、ちらりとあわさった視線はあまりにも冷めていて、雨に濡れた身体よりもっと冷えているように感じた。
「タケミチ君」
ゆっくりと口が開かれて、なんの感情も乗らない、いつもと変わらない平坦でクールで…無機質な声色はオレの名前をたしかに呼んで、やっぱりオレの中のなにかがパチンと弾けてなぜか脳がチカチカして目の前がパチパチして、身体中に力が湧いてきた。ああ、やっぱりAAAさんはなにかあるんだ、でもそれはわからないままで、それでいいと思いながらふらふらしていた体を踏ん張って止める。
AAAさんの暗い瞳がオレとドラケン君をうつして、少しだけ光った気がした。


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