出血部位を清潔なガーゼや布で強く押さえるか、その周囲を包帯で強く巻き、心臓より高く上げるようにしましょう。
ケータイを使ってネットで調べて出てきた文に「ふむ」という声が出る。すでにふらふらの人の体温をこれ以上下げるのは得策では無いだろうという素人判断で傘を渡したが、なにがあってるのかわからない。人命救助なんて授業でやったAED研修ぐらいだ。それも記憶は若干曖昧。
出てきた文の清潔な布、腹をさされたらしい彼もタケミチ君も無いって言ったし私も無いので、すでにつんでいる。タケミチ君がわたわたしながらハンカチを巻くので軽く手を貸しながら、布をさがす。というか、今抑えている彼の服でもいいならば私の服でもよくないか?さっきまで雨に濡れていなかったんだから彼らよりマシだろう。マシだな。
決め込んで、ケータイを尻ポケットにつっこんでシャツを脱ぐ。肌着は黒だし遠目なら無地のラフな黒タンクトップに見えるだろう。肌に直接あたる雨がやけに冷たい。
「は?!?!」
「えっ?!?!?」
「座って」
「は?え?お、う?!」
「いやその前に服!!!」
本当は地べたも冷たいからよくないだろうけど立ったままよりマシだろう。シャツを畳んで傷の上にあてて軽く圧迫。タケミチ君から「そっか、そう使うんだ」という渋々納得の声と、ぐっと鈍い声が腹を刺された彼からおちてきたがスルーさせていただく。あってるかわからないってこんなに不安なのか、とぼんやり思いながら酷く冷たくなっている腹を刺された彼の血色の悪い唇をながめる。救急車がくるまで意識が持つのかすらわからない。まずいつ救急車がくるんだ?すでにシャツは血でぬれていく。目がこちらを見ているけれどその瞳に私が像としてうつっているかはわからない。医療知識のないネットの付け焼き刃知識の応急処置なんかやってなにかかわるのだろうか。わからない。
「ストリップでもしてくれるのかと思ったのによぉー!」
「はは!すぐ2人潰してこっちでまわしてやんよ」
「そーそー、かわいいしさぁ。あ、今からでもこっち来るなら殴ったりしねぇよ!」
ぎゃはははっと耳障りな笑い声がしたけれどそれよりも目の前の彼だ。知りもしない、タケミチ君の知り合いってだけの彼に普段ならなんの感情も湧かず、見て見ぬふりばかりして気にもとめないはずなのに、隣で死にかけてる人を見捨てられるほど私は薄情ではなかったらしい。そんなことあったんだ。自分でも驚きしかない。
「なんだよ無視かよ」
だって私は薄情で冷たくて、人と接するのが苦手でそれを誤魔化すためにクール系を装ってるだけの、ただの腰抜けだ。
「お高くとまってんじゃねぇよなァ」
鼻に入る雨の匂いと血の匂いが混ざって気持ちが悪い。
「イらつくワー」
あんな奴らをやっつけてやれる力が私にあれば、なんて久しぶりに思ってしまった。
「やっちまえぇ!!!」
こちら側で立っているのが横にいるふらふらのタケミチ君しかいないけれど、4人を相手にできるなんて思えない。これで2人がダメになって、私が奴らにまわされて、この人生終わっても、私は……………私は…………でも、そんなことなら……………
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