「あれ?ミョウジ大尉?」

身長がすらっと高くハンサムなスマイル、どことなく大佐似の男の人の話をガン無視でお店から出て来た大尉は、軍人さんとは思えない程美しく、なんだかオーラも出ている様な。僕に気付いて向けられた視線は、女優さんみたいにキラキラしていた。

「アルフォンス君、久しぶり!」
「ご無沙汰してます!・・・・えっと、あの人は」
「いいから振り返らず歩いて」

大人の女性に腕を組まれたのは初めてで、足取りがぎこちなくなる。しばらく言葉も無くスタスタ歩いていると、大佐似の男性は諦めたのか姿が見えなくなっていた。そりゃあ、こんなでっかい鎧と肩を並べて歩く光景は異様だっただろう・・・。

「上手く巻けたわね、ありがとう。ところでお兄ちゃんは?一緒じゃないんだね」
「兄さんは今機械鎧の整備中で、僕は買い出しに」
「へぇ・・・じゃあ、お手伝いしようかな」
「えっ?えっと・・・すごく嬉しいですけど、もう日も暮れますし危ないですよ。それに女性に荷物持たせるわけには行きませんから。」

商店街の前で足を止めそう言うと、ミョウジ大尉の大きな瞳が僕を覗き込む。──今日はお休みの日なのだろうか。軍で会う時とは違うメイクにドキリとしてしまう。

「アルフォンス君も隅に置けないねぇ」

ニヤッと笑う顔はちょっと無邪気な子供の顔で、押し付けられた買い出しも、ラッキーだったかもしれないと思ってしまうのだ。
なんて、浮かれている僕のすぐ横で止まった車の窓からは、苦虫を噛み潰したような表情の上司が顔を出していた。

「全く君は、いつになったら待ち合わせ場所でじっと待ってられるようになるのかね」
「ロイが遅いから、悪い男に捕まっちゃった」
「えっ、えええ!?」

ぎゅっと先程よりしっかり絡められた腕にまた心臓が縮んだ。本当にこの人は分かってない人だ。きっとさっきの男の人みたいに、彼女の思わせぶりな態度に勘違いしてしまう人は山ほどいるんだろうな・・・。

口を開かずとも、大佐から溢れ出る負のオーラで『腕を放せ』と言われているのが理解出来る。慌てて大尉の手をやんわり解くと、ちぇ、と拗ねた顔をし車の方へ歩いて行く。

「またね、アル。お兄ちゃんによろしく。」
「はい、また!」

お辞儀して車を見送ると、ふといくつかの疑問が湧いてくる。二人とも私服だし、待ち合わせだとか話してたし、もしかして──お忍びデート?
それだと大佐があんな顔で僕を睨むのも納得がいく。そっか、そっか。百戦錬磨の彼もまた、思わせぶりな彼女に振り回されている人の一人なのかと思うと、失礼ながらも頬が緩むのであった。


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