はじまり2

「名前はさ、俺たちの事、好き?」
「はっ?」

次郎ちゃんの部屋に場所をうつしてそこそこ空き缶が目立ってきた頃。
居酒屋最後の変な空気も忘れかけていた所で唐突な質問を投げかけられ、思わず缶ビールが片手から落ちそうになるのを持ちこたえる。
好きって……好き。うん、好き。こんなに仲良くなれた人達他に居ないくらい、好き。
だからこそ3人がそういう仲になったって聞いたとき、もちろん嬉しかったのは本当だけど実はほんの少しだけ寂しかったくらいだ。
4人ずっと一緒なんて、中高生みたいな幻想が自分の根底にあったのだと思うとちょっと引く……

「名前」

どう返答しようかと悩んでるうちに脱線した思考を、類の声と大きな目が現実に引き戻す。
というか近い!ぴったりと隣からくっついている類の肩が異常に熱く感じる。更にわざとなのか無意識なのか類の掌は私の膝にあって、合コンの女子かよと脳内だけでつっこんだ。

「……好きだよ」
「really??」
「うん、りありーりありー」
「俺も!I think of you as more than a friend!!」

酔いもあって素直に口にすると、類は大げさに喜んで腕を巻きつけて来る。英語はわからないけど。
ちょっと苦しいけれど可愛いので許すことにする……硲さんと次郎ちゃん2人から十分愛されてるくせに貪欲なやつめ……

「ミスターたちのことは?ねぇ、2人の事も好き??」
「え?えー、うん、好きだよもちろん」
「そうか、それを聞いて安心した」
「へっ」

唐突に話に入って来た硲さんに反射的に視線を送れば、酔っているのかとろりとした瞳が私を映していた。
そのままふらり、立ちあがって類とは反対側の隣に腰を下ろしてくる。まってまってなんだか様子がおかしい、気がする!というか狭い!
思わず少し体をずらして硲さんから距離を取ると、なぜ逃げるんだ、と腰に腕を回された。あの硲さんに。いや酔いすぎじゃないですか!?気がつけば逆隣の類からもお腹に手を回されていてわけがわからない、ホントなにこの状況!?

「じじじじじろうちゃーん!!!!」
「はぁーい」
「うんいい返事!じゃなくて!なにこの状況!?!?」

おかしな雰囲気に飲み込まれないように、誤魔化すように大きめの声で次郎ちゃんに助けを求める。
さっき変な感じになった時も彼が助けてくれたしもう次郎ちゃんに頼るしかないのだ……頼るしかない、のに。

「名前ちゃん、聞いてほしい話があるんだけど」
「う、うん??」

ゆったりと口を開いた次郎ちゃんは、普段と変わらない様子で話をはじめる。
思わず返事しちゃったけどまずこの2人を引きはがしてほしい……とは、なぜか言い出せなかった。

「最初はさ、ほんとに3人だけで十分だったんだけど」
「……」
「どんどんさ、貪欲になっちゃうんだよねぇ、人間って」

話が見えない。3人、というのは十中八九硲さんと類と彼自身の事だと思うのだけど、その先が読めない。
元来私は人の話の意図を読むのが苦手ではあるけれど、(更に今は酔ってるし)
それにしたって次郎ちゃんの話し方はわざとそうしているようにしか思えなかった。
彼は話ながらテーブルを引き、私の目の前に座る。自然と3人に囲まれるような形になってしまって戸惑う。囲まれてるというか、捕まってるよねこれ?

「……ごめん、話が、見えない」

絞り出すように出た言葉は情けないくらいに緊張で擦れている。
いやだってほんと、なんどでも言うけど私だって女である。普段はあまり意識していないけど顔面偏差値の高い男3人に囲まれればそれなりに、いやかなり緊張するし心臓なんて動きすぎて逆に止まりそうだ。それがそもそも憎からず思っている相手ならなおさらである。
本当にわからない?なんて類が隣から甘えるように耳元で尋ねてくるのも、本当に限界なのでやめてほしい。もたない、心臓が。

「舞田くんと山下くん……私も、名字くんが欲しいという事だ」




ちょっとまってよ、ほんとに