くっつきたがり
明日は雨か、いや雪かもしれない
そんな事を思いながら私は首を捻って彼に目を向けた
「……かおるくん……」
前にはこたつ、後ろには背中にぴったりくっつく薫君。びっくり。
明日会う約束をしていた彼が、夕食も入浴もすませた夜中にやって来たのはついさっきの事だ。
常日頃からあまりこういったスキンシップのとり方をしない(家の中でもデフォルトは机を挟んだ向かいだし、外で手を繋いだことはまったく無い)彼の珍しい行動にどうして良いか分からず首を捻れば、薫君はぎゅう、とおなかに回した腕の力を強めた
「ちょ、苦しい苦しい」
「うるさい」
うるさいとはなんだ、うるさいとは
抗議の意味を込めて腕を抓ると鬱陶しげに手を払われる。
そしてうしろからゴリゴリと頭を押し付けられ、くすぐったさに身を捩った
……もしかして、甘えられてるのだろうか。
しばらく(彼の仕事の都合で)会えていなかったのでそれが原因かもしれない。
……もし、もし仮に薫君が、私と会えない時間を寂しいと感じてくれたのならそれはとても嬉しい事で、そう思えばこの奇行も可愛く感じてしまうのだから私という女は単純である。
「薫君、紅茶でも入れましょうか」
「今はいい」
「そう?」
「あぁ………」
薫君の擦れた声に、欠伸をかみ殺したような息が混じっている事に気付く。
疲れてるのに来てくれたのかと思うと、単純女な私はどうしても頬が緩んでしまう。
「ふふ、今日はもう寝る?」
泊って行くでしょ?問えば無言でこくりと頷く。これは相当お疲れだ……
立ちあがった私の後ろに素直について来た薫君は、眠気で重い瞼をなんとか開きながら就寝準備をしてのそのそとベッドへ潜り込み、チラリとこちらを見る
「名前」
「あ、うん」
本当はもう少し夜更かししたかったのだけど、と苦笑しながら同じベッドに入り込むと今度は前からぎゅうぎゅうと締め付けられ、お返しに私も薫君の背中に腕を回す。
おやすみと言えば彼は口を開くのも億劫なのか額にかるく唇を押し当ててきて、少しだけ笑ってしまった