隠れたるより見るるはなし
最近天道の様子がおかしい。
以前はそこまで気にした様子もなかった携帯をレッスンの合間合間に確認するようになった事をはじめ突然一人で笑い出す、チラチラと一定の人物…名前の様子を伺う。事務所からの着信にこれ以上ないくらい上機嫌で応答する……他にも細々としたモノはあるが、僕の聞きたいことはわかるな?名前
ジトリ、私を事務所近くの喫茶店に呼び出した薫君はお世辞にも友好的とは言えない視線を私に向ける。
心当たりの全くない話なら笑い飛ばしただろう言葉の数々に、心当たりがありすぎる所為でまったく笑えない。輝君の馬鹿!なんでこういう時だけそんなにわかりやすいの!心の中で彼を罵倒してみても状況は変わらず冷や汗がすごい。
「……えっと」
「……はぁ」
何か話さなければと口を開いたら、薫君が私の呟きと同時にため息を吐く。ため息に含まれているのは明らかに呆れの感情で、どぱりと汗が吹き出た気がした
「……奴の一方的な感情なら放っておくつもりだったんだが……」
「へ、あ!……あ〜……」
馬鹿は私の方でした!ごめん輝くん!
そういう事なんだな、そう呟いた薫君相手に誤魔化せる程私の誤魔化しスキルは高くないので、肯定の意味で1度だけ小さく頷く。
とはいえ輝君とそういう関係……いわゆる恋人同士になったのは今から3日前の話で、それらしい事は一切していない。本当に同じユニットの仲間をよく見てるなぁと呟くと、薫君はあからさまに顔をしかめた。
「君達が分かりやすすぎるんだ……」
「返す言葉もございません……」
「そんな事でこれからどうする?隠すならもっとうまくやれ」
トントンと不機嫌にテーブルを人差し指で叩く彼の意外な言葉に目を丸くする。「すぐ別れろって言わないんだね?」と言えば、「言って欲しいのか?」と返され慌てて首を横に振った。
「なら余計な言葉を吐くな」
「…ごめんなさい」
「……そうだな、僕らにくらいは自分から報告するべきだったと僕は思うが、どう考えてるんだ、天道」
「……へ?」
薫君の視線につられて見上げると、輝君が立っていて間抜けな声が出る。
どうしてここに???
「窓の外から名前と桜庭が見えたから、2人で何の話してんだろ〜って気になってよ……」
気まずそうに言う輝君に「そういう所だぞ」と薫君は大きなため息を吐いた。話はまだ終わりそうにない。