You're such a baby
「私も硲さんの妹になりたい」
「……何を唐突に……」
変なものを見る目で私を見る硲さんに、だぁって。まるで子どものように口を尖らせ机に突っ伏す。
私も硲さんと出かけたり、プリクラ……は年齢的にちょっと恥ずかしいけど、そういう普通のデートがしてみたいのだ。
硲さんの職業柄そんな事が難しいのは百も承知で、妹さんに嫉妬しているわけでもないけれど、彼と堂々とそんな行動がとれる立場なのは単純に羨ましい。
「……妹だったら、二人で出かけられるなーって」
「比較的、アイドルという職業の割には共に行動出来ている方だと思うが」
「それは……そうなんだけど」
事務所に居る事務員の私と、アイドルの硲さん。ほぼ毎日顔を合わせているし、こうして月に何度かは私の家に来てくれたり私が彼の家にお邪魔したり出来ている。そう考えると確かに恵まれている環境なのだと思う。
「うん……まぁ、そうだよね。ちょっと変な事言った。ごめん」
「迷惑だとは感じて居ない、が」
「?」
硲さんは何か言いかけた後、少しだけ間を置いて自分の座るソファの隣を軽く叩く。
隣に来いという事らしい。床に座り込んでいた私は、特に断る理由もないので大人しく従った。
「……名字くんが何か不満に感じているのならば、聞かせて欲しいとは思う」
「へっ」
私の馬鹿みたいな発言に対して至極真面目な顔と台詞を発した硲さんに、思わず間の抜けた返事をしてしまう。
ちょっとした願望を口にしただけで不満なんて大層な物ではない。
けれどもしかして彼を不安にさせただろうかと慌てて首を振った。
「いやいや不満なんてないない!!ほんとにちょっとだけ硲さんと堂々と出歩ける妹さん良いな―、くらいの感じで!!」
「……本当に?」
「ホントホント!!」
全力で否定すれば、そうか、小さく呟いた硲さんに肩を引き寄せられる。
何度されても硲さんがこういう行動を取るのを意外に感じてしまう。慣れずに顔を赤くした私の髪を
数度梳いた彼の掌が、まるであやすように軽く私の頭を数度叩いた。
「硲さん……もしかして気をつかってますか」
「……名字くんが私の妹になる事は不可能だ。が、私が君より年長な事に変わりはない」
「うん」
「甘えたいのならば、素直に言いなさい」
「っ……!」
表情があまり変わらない硲さんが、そう言ってくすりと微笑む。それだけで心臓はドキドキと世話しなく動き、私は思わず赤くなっているだろう顔を両手で覆った。
いやほんとうに、この人これ天然でやってる所が怖い。
大人げない冗談半分に吐いたセリフなのに、そんな、見透かしたみたいな。
照れ隠しに顔を伏せたまま彼の腰に手を回す。横からなのでちょっと体勢が辛いけれど、そのままぎゅうぎゅうと硲さんの細い腰を締め付けた。
「じゃあ、甘える」
返事の変わりにまたぽんぽんと頭を撫でられる。
それが心地よかったので、笑いを含んだため息は聞かなかったことにしよう。