4歳の誕生日に発現した個性の暴走は個性の強力さと派手さを周りに強く印象づけた。そのあまりに印象的な出来事は子供にとっては格好の獲物となり"泣き虫の大暴走"と名付けられ、からかわれた。
「泣き虫!また泣いて教室中水浸しにすんなよ!」
「もう小学生なんだから、個性の制御くらいできるもん!!」
帰り支度をしていると、この不名誉な事件名をつけた張本人がニタニタと笑いながら、こちらに近づいてきた。誕生日の次の日には泣き虫、泣き虫とバカにしてき、怒鳴るたびに火山の噴火のように吹き出す水にそりゃあもう、腹を抱えて笑われた。それが悔しくて悔しくて、膨大な水が滝のようにかっちゃんに落ちてきたときはスッキリした。私の個性、最高!
そして今もかっちゃんに反論していると、教卓の花瓶の水が噴水のように吹き出している。それを指差しながら大爆笑するかっちゃんに更にイラッとすると、校庭の方から悲鳴と濡れるーという声が聞こえてきた。
「お前、本当、個性全然使いこなせてねぇじゃねぇか!」
「ぐぬぬぬ…!!」
そう。私はあの日以来、個性が発現したものの、怒りの感情を抱くと、個性が暴走してしまうというなんとも困った事態になってしまったのだ。発言したての頃は、水道やプールの水をそれはもう大道芸人のように大暴走させていたが、毎日お母さんと練習してるおかげで、今では花瓶の水を少し持ち上げるとか、水やりの水の勢いを強めてしまうだとかまでに落ち着いた。それでも未だに感情が昂ぶると個性が暴走してしまうのは相変わらずだ。
この間、お父さんが長期任務で3日ぶりに帰ってきたときは嬉しさのあまり台所の蛇口を壊すほどの水を噴射させてしまった時は、家族全員絶句した。私もだ。
何もなければ私はなんてことなく個性を操ることができる。一体どっちに似たんだろうとお姉ちゃんが呟いたのに、お父さんとお母さんがそっと目を逸らしたのを私は見逃さなかった。
「お前、ヒーローじゃなくて大道芸人の方が向いてんじゃねぇの?」
サラブレッドから生まれた私は当然の如く感情の高まりで個性が勝手に発動してしまう。かっちゃんのいつもの挑発についつい乗ってしまう私だが、その度に個性を暴走させては周りに迷惑ばかりかけてしまう。
かっちゃんの言うとおり、ヒーローじゃなくて、別の道を探した方が良いかもしれないと、口を噤んだ、その瞬間。
「美空ちゃん!一緒にかえ、ボワッ!?」
「いっちゃん!?」
いっちゃんが私のクラスに顔を覗かせた瞬間、空いていた窓から何処からか噴射された水がいっちゃんの顔に直撃した。その勢いに後ろに尻餅をついたいっちゃんに持ち歩いているタオルを持って慌てて駆け寄る。
「いっちゃん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫だよ!」
「ごめんね、いっちゃん…それ多分私のせいだ」
「やっぱり!美空ちゃんの個性はやっぱりすごいね!将来、すごいヒーローになるよ!」
髪から水が滴り落ちるのも気にせず、美空ちゃんの個性は災害救助にも役に立つと思うんだ!と目をキラキラと輝かせて、矢継ぎ早にどう個性を活かすか、どこのサイドキックになればいいかを話してくれた。
いっちゃんの真っ直ぐな言葉には何度も救われていた。心が温かくなるのを感じながら、私は続きは帰りながら聞くね、とランドセルを取りに戻った。
「かっちゃん、私はヒーローになるから!」
べーッと舌を出して、かっちゃんに言い返すと、顔を引きつらせたかっちゃんが爆発させながら、怒号を飛ばす。それに震えるいっちゃんの手を取り、私は走って昇降口に向かった。
「お母様…なんと…」
「次のセイレーンは青藍ではなく、美空に継がせる」
そして、運命の歯車は狂いだした。