幼馴染の誕生日
トンネルを抜けて、緑色の山を背にキラキラと輝くアドリア海を見れる街の海沿いを電車が走る。
その電車に乗っていたアリーチェはその景色を見て感嘆の声を上げた。
「わぁ…!」
子供の頃は当たり前に思っていた景色は大人になって見ると、とても美しく彼女の目に映り、彼女を童心に返させた。
そのせいか今の彼女が浮かべる表情はどこか幼い。
実家の最寄り駅に着いた頃に時計を見ると午後の3時。
少し小腹が空いたなと思いつつ、アリーチェが駅のロータリーに出ると、彼女の母が車で出迎えてくれた。
嬉しそうにキャリーをガラガラと引き、アリーチェは車に近付く。
車の窓を開け、母は微笑んだ。
「おかえりなさい」
アリーチェは後部座席にキャリーを積み込み、自身は助手席に座った。
「ただいま!」
「ふふ、おかえり。元気そうで何よりだわ。」
母は車を走らせ始めた。
アリーチェは母の化粧が濃くなっていることに気付く。
父が亡くなってからは高級な化粧品は使わなくなり、全体的に薄化粧気味だったはずなのに、以前と同じかそれ以上の気合いの入り具合だ。
アリーチェはもしかしてと察する。
「お母様も。なんだかいつもより明るくないですか?」
「あら、バレたかしら。アリーチェに紹介したい人がいるの。明後日のディナーに招待しているわ。」
「楽しみにしてますね。」
アリーチェは自分の予想が的中しているのだと確信した。
そして彼女にとっては本命の話題を振る。
「ところで、明日のディーノの誕生日パーティーは何時集合ですか?」
アリーチェは母への丁寧な言い回しが抜けない。
それは子供時代、キャバッローネの幹部のお嬢様として育った彼女ならではだった。
「12時集合ですって。」
「いつも通りだね。」
なぜディーノの誕生日パーティーを昼にやるのか 。
それは夜はボンゴレを始めとした同盟ファミリーの関係者がこのキャバッローネのシマに赴き、パーティーに参加するからだ。
そのためここ数年は町の住民からのお祝いは昼に、マフィアのボスとして他ファミリーを受け入れるパーティーは夜に行われていた。
一般人 扱いのアリーチェと母は街の住民と一緒に彼を祝う。
街の住民達が押し掛けてくるため、正直そんなに話せる機会もない。
アリーチェはそれが少し寂しくもあり、それだけ愛されるディーノが誇らしかった。
一方でアリーチェの誕生日は彼女の実家でホームパーティー形式で行われるので、ゆっくりディーノと話すことができる。
だからこそ、アリーチェは今年の誕生日にディーノが来れなかったことが残念でならなかった。
「楽しみですね。」
「ええ、ディーノ君には助けてもらいっぱなしですもの。」
「そうですね。」
「ねぇ、アリーチェ…………本当にディーノ君と婚約破棄して良かったの?」
急に振られた話題にアリーチェは気が重くなる。
この件に関して一切の後悔がないと言えば嘘になる。
婚約破棄をしたことではなく、ディーノと距離を詰め過ぎてしまったことに。
ずっと婚約破棄を目指していたアリーチェにとっての1番の誤算はディーノが彼女に思いを寄せたことだった。
幼い頃から仲良くしていれば、恋愛対象としては見られないだろうとたかを括っていたのだが、現実はそうもいかなかった。
だからこそ、彼がどれだけ自分の気持ちを犠牲にしてアリーチェを守ろうとしたかを理解しているし、感謝している。
街を出たのは、観光事業で儲けられなかったことが最も大きな要因ではあるが、ディーノのことも少なからず意識してのことだった。
「どうされたのですか、藪から棒に。私は婚約破棄して良かったと思っています。だって、ディーノは弟にしか見えないのですから。それにお父様の手前、ずっと言えずにいましたが、マフィアになりたくなかったのです。正式な役職はなくとも10代目の妻はマフィアではないですか。」
「でもキャバッローネは自警団的な側面が強いわ。あと表の企業の経営で普通に稼いでいるのだし………それに、ディーノ君は……きっと………」
母はこう言いたいのだ。
ディーノはまだアリーチェを愛していると。
アリーチェだってそんなことはわかっている。
「わかっています。でも、終わった話です。」
「母親同士の約束は置いておいてもね、それでもアリーチェを最も理解して大切にしてくれるのは彼しかいないと思うの。アリーチェだって彼を大切に思う気持ちはあるのでしょう?恋愛感情はこれから育むことだってできるでしょうし………あなたの幸せを考えたら……」
「お母様、私の幸せは私が掴みます。ローマ近辺ならディーノ以上に私を大切にしてくれる殿方と出会う機会もあると思います。いつかちゃんと家庭を築いてお母様を安心させます。だからお母様はまずはお母様の幸せを考えてくださいませんか?」
「わかってるわ……あなたがとても親思いの孝行娘だってことは。私にもやっと余裕ができたから言っているのよ。」
「やっぱり……明後日お会いする方はお母様の新しいパートナーなんですね。」
「ええ」
運転中なので正面を見ているが、母は顔を綻ばす。
既にその年齢は40を超えているが、その生き生きとした表情はアリーチェよりも若く見える。
「どんな方なんですか?少しくらい前情報があっても良いのでは?」
アリーチェは話題を逸らすことに成功した。
母は語った。
彼との出会い、馴れ初め、交際に至った経緯、そしてプロポーズまで。
とても幸せそうでアリーチェも自然と笑みが溢れた。
紹介される男性は北部で生まれ育ち、若くして交通事故により妻と娘を亡くしていた。
2人の死を忘れるように南部に来て、隣町にてレストラン経営にのめり込んだところ、そのレストランが人気が出て、店舗を増やすべくこの街へ出入りするようになったらしい。
そして市場調査のために母が勤めるバールに視察に行ったところ、丁寧で美しい所作で接客する母に一目惚れしたそう。
「失礼なことを伺いますが、お金持ちではないのですよね?」
「あら、意図はわかるけれど本当に失礼ね。まあ……独り身時代が長くて貯蓄はあるようだから、一般家庭よりは少し裕福になるかしら?」
「そうですか。でしたら問題ないです。結婚後は隣町へ引っ越されるのですか?」
「ええ、そのつもりよ。」
「でしたら………今度こそキャバッローネの援助を受ける生活は卒業しませんか?」
アリーチェは就職以来何度か母に提案してきたことを再提案する。
「アリーチェ……どうしてそんなにディーノ君を拒むの?」
「ディーノを拒んでいるわけではありません。でもキャバッローネの援助を受けているのはお金の流れを辿ればわかってしまうこと。このままでは私達はキャバッローネの足手纏いのままです。何よりお母様の身に降りかかる危険を減らしたいのです。」
アリーチェが父を亡くして以来ずっと願ってやまないことだった。
「もちろん、私ももう少し穏やかな生活が送れればと思います。」
母は溜め息をついた。
「わかったわ。あなたがそこまで言うのなら。」
「ご理解いただきありがとうございます、お母様。」
アリーチェは恭しく礼を述べた。
少しだけ肩の荷が降りた気がして、ふうと息を吐いたのだった。
街1番の大きな食堂に、金髪の青年が数人の部下を連れ立って入ると一斉にクラッカーの音が鳴り響いた。
数が多過ぎて鼓膜が破れそうなほど音量に思わず青年は耳を塞いだ。
「「「「「「誕生日おめでとう!!」」」」」」
「お前らクラッカーの量は減らせって毎年…!!」
「それだけ愛されてるってことじゃないか、ボス。」
ツッコミを入れるディーノを、彼の右腕のロマーリオが宥める。
「それはそうだけどよ…」
「ほら、ディーノ!グラス持って!」
ディーノは食堂のおばちゃんに半ば強引にワイングラスを持たされた。
その中には白ワインが入っている。
そして早速乾杯が行われる。
「「「「「「かんぱーい」」」」」」
ディーノも皆の勢いに圧倒されながら乾杯した。
変わる変わる住民達が押し寄せて話しかけてきて、忙しないことこの上ない。
皆が満腹になって少し落ち着いてきた頃、ディーノはやっと最も会いたかった女性に会えた。
そう、アリーチェだ 。
「ディーノ、誕生日おめでとう。」
アリーチェが近付いてディーノにそう告げると、彼は嬉しそうにはにかんだ。
「ありがとう、アリーチェ。前回のお前の誕生日は行けなくてごめんな。」
「気にしないで。お互い働いているんだもの、都合が合わない時はあるよ。」
「ああ、ありがとな。」
「あ、これ、誕生日プレゼント。」
アリーチェは手に持っていたワインを差し出した。
「正直お酒の好みはわからないから、口に合うかはわからないんだけれど………」
「北部のワインか?飲んだ事ないな。あ、しかも俺の生まれ年のか。ありがとな。」
「どういたしまして。」
ディーノはワインを受け取って、空になったグラスをテーブルに置き、近くに置いてあった栓抜きで早速ワインを開けた。
そして自分のグラスにワインを注ぐ。
アリーチェのグラスも空になっており、ディーノはそれにワインを注いだ。
お互いグラスを持って、チンと軽く鳴らす。
「「乾杯」」
「美味いな、これ。癖が少なくて飲みやすい。最近、ローマでの仕事はどうなんだ?」
「順調だよ。色んな日本の観光会社とのパイプができたから、オフシーズンでも景気は良いんだけど忙しくて忙しくて。正直今から春が怖いよ。」
「そっか。あっちでも上手くやれてんだな。」
「うん。ディーノは最近どう?相変わらずリボーンに会いに日本によく行ってるの?」
「アリーチェにはお見通しだな。今年も日本には結構行ってる。この前はリボーンの虹の赤ん坊 の呪いを解くために代理戦争に参加したりしたし。」
「代理戦争?」
ディーノは語った。
リボーン達にかけられた呪いがどんなもので、何のために仕組まれ、主人公ツナがどうそれを解決したのかを。
「凄いね……ツナって子……」
アリーチェは素直に感嘆した。
確かに主人公なのだから、たくさんの活躍をしてしかるべきだが、世界の命運がかかった重大事項について皆がそれなりに納得いく選択をできたことはアリーチェにはとてつもない事のように聞こえた。
実際そうだった。
「だろ?まあ、俺は復讐者 のイェーガーにやられてツナの勇姿を最後まで見れなかったんだがな。」
「それはドンマイ。でもリボーンの呪いは解けたんでしょう?」
「ああ。でもすぐ元の姿に戻るって訳じゃなさそうだ。」
「そうなんだ。………ねぇ、ディーノ。大事な話があるの。今日は私が独占し続けたら街の人に恨まれそうだから明後日以降で時間作れないかな?私1週間ぐらいこの街に滞在する予定なの。」
「明後日?アリーチェのためなら明日にでも時間作るが…」
「明日は大事な予定があるの。」
「わかった。じゃあ明後日の14時にうちの屋敷でどうだ?」
「うん、それでお願い。」
アリーチェは次の約束を取り付けて、ディーノから離れた。
早速ディーノと喋ろうと虎視眈々と狙っていた他の街の住民が彼に話しかけに行く。
アリーチェはそれを微笑ましそうに見守った。
その電車に乗っていたアリーチェはその景色を見て感嘆の声を上げた。
「わぁ…!」
子供の頃は当たり前に思っていた景色は大人になって見ると、とても美しく彼女の目に映り、彼女を童心に返させた。
そのせいか今の彼女が浮かべる表情はどこか幼い。
実家の最寄り駅に着いた頃に時計を見ると午後の3時。
少し小腹が空いたなと思いつつ、アリーチェが駅のロータリーに出ると、彼女の母が車で出迎えてくれた。
嬉しそうにキャリーをガラガラと引き、アリーチェは車に近付く。
車の窓を開け、母は微笑んだ。
「おかえりなさい」
アリーチェは後部座席にキャリーを積み込み、自身は助手席に座った。
「ただいま!」
「ふふ、おかえり。元気そうで何よりだわ。」
母は車を走らせ始めた。
アリーチェは母の化粧が濃くなっていることに気付く。
父が亡くなってからは高級な化粧品は使わなくなり、全体的に薄化粧気味だったはずなのに、以前と同じかそれ以上の気合いの入り具合だ。
アリーチェはもしかしてと察する。
「お母様も。なんだかいつもより明るくないですか?」
「あら、バレたかしら。アリーチェに紹介したい人がいるの。明後日のディナーに招待しているわ。」
「楽しみにしてますね。」
アリーチェは自分の予想が的中しているのだと確信した。
そして彼女にとっては本命の話題を振る。
「ところで、明日のディーノの誕生日パーティーは何時集合ですか?」
アリーチェは母への丁寧な言い回しが抜けない。
それは子供時代、キャバッローネの幹部のお嬢様として育った彼女ならではだった。
「12時集合ですって。」
「いつも通りだね。」
なぜディーノの誕生日パーティーを昼にやるのか
それは夜はボンゴレを始めとした同盟ファミリーの関係者がこのキャバッローネのシマに赴き、パーティーに参加するからだ。
そのためここ数年は町の住民からのお祝いは昼に、マフィアのボスとして他ファミリーを受け入れるパーティーは夜に行われていた。
街の住民達が押し掛けてくるため、正直そんなに話せる機会もない。
アリーチェはそれが少し寂しくもあり、それだけ愛されるディーノが誇らしかった。
一方でアリーチェの誕生日は彼女の実家でホームパーティー形式で行われるので、ゆっくりディーノと話すことができる。
だからこそ、アリーチェは今年の誕生日にディーノが来れなかったことが残念でならなかった。
「楽しみですね。」
「ええ、ディーノ君には助けてもらいっぱなしですもの。」
「そうですね。」
「ねぇ、アリーチェ…………本当にディーノ君と婚約破棄して良かったの?」
急に振られた話題にアリーチェは気が重くなる。
この件に関して一切の後悔がないと言えば嘘になる。
婚約破棄をしたことではなく、ディーノと距離を詰め過ぎてしまったことに。
ずっと婚約破棄を目指していたアリーチェにとっての1番の誤算はディーノが彼女に思いを寄せたことだった。
幼い頃から仲良くしていれば、恋愛対象としては見られないだろうとたかを括っていたのだが、現実はそうもいかなかった。
だからこそ、彼がどれだけ自分の気持ちを犠牲にしてアリーチェを守ろうとしたかを理解しているし、感謝している。
街を出たのは、観光事業で儲けられなかったことが最も大きな要因ではあるが、ディーノのことも少なからず意識してのことだった。
「どうされたのですか、藪から棒に。私は婚約破棄して良かったと思っています。だって、ディーノは弟にしか見えないのですから。それにお父様の手前、ずっと言えずにいましたが、マフィアになりたくなかったのです。正式な役職はなくとも10代目の妻はマフィアではないですか。」
「でもキャバッローネは自警団的な側面が強いわ。あと表の企業の経営で普通に稼いでいるのだし………それに、ディーノ君は……きっと………」
母はこう言いたいのだ。
ディーノはまだアリーチェを愛していると。
アリーチェだってそんなことはわかっている。
「わかっています。でも、終わった話です。」
「母親同士の約束は置いておいてもね、それでもアリーチェを最も理解して大切にしてくれるのは彼しかいないと思うの。アリーチェだって彼を大切に思う気持ちはあるのでしょう?恋愛感情はこれから育むことだってできるでしょうし………あなたの幸せを考えたら……」
「お母様、私の幸せは私が掴みます。ローマ近辺ならディーノ以上に私を大切にしてくれる殿方と出会う機会もあると思います。いつかちゃんと家庭を築いてお母様を安心させます。だからお母様はまずはお母様の幸せを考えてくださいませんか?」
「わかってるわ……あなたがとても親思いの孝行娘だってことは。私にもやっと余裕ができたから言っているのよ。」
「やっぱり……明後日お会いする方はお母様の新しいパートナーなんですね。」
「ええ」
運転中なので正面を見ているが、母は顔を綻ばす。
既にその年齢は40を超えているが、その生き生きとした表情はアリーチェよりも若く見える。
「どんな方なんですか?少しくらい前情報があっても良いのでは?」
アリーチェは話題を逸らすことに成功した。
母は語った。
彼との出会い、馴れ初め、交際に至った経緯、そしてプロポーズまで。
とても幸せそうでアリーチェも自然と笑みが溢れた。
紹介される男性は北部で生まれ育ち、若くして交通事故により妻と娘を亡くしていた。
2人の死を忘れるように南部に来て、隣町にてレストラン経営にのめり込んだところ、そのレストランが人気が出て、店舗を増やすべくこの街へ出入りするようになったらしい。
そして市場調査のために母が勤めるバールに視察に行ったところ、丁寧で美しい所作で接客する母に一目惚れしたそう。
「失礼なことを伺いますが、お金持ちではないのですよね?」
「あら、意図はわかるけれど本当に失礼ね。まあ……独り身時代が長くて貯蓄はあるようだから、一般家庭よりは少し裕福になるかしら?」
「そうですか。でしたら問題ないです。結婚後は隣町へ引っ越されるのですか?」
「ええ、そのつもりよ。」
「でしたら………今度こそキャバッローネの援助を受ける生活は卒業しませんか?」
アリーチェは就職以来何度か母に提案してきたことを再提案する。
「アリーチェ……どうしてそんなにディーノ君を拒むの?」
「ディーノを拒んでいるわけではありません。でもキャバッローネの援助を受けているのはお金の流れを辿ればわかってしまうこと。このままでは私達はキャバッローネの足手纏いのままです。何よりお母様の身に降りかかる危険を減らしたいのです。」
アリーチェが父を亡くして以来ずっと願ってやまないことだった。
「もちろん、私ももう少し穏やかな生活が送れればと思います。」
母は溜め息をついた。
「わかったわ。あなたがそこまで言うのなら。」
「ご理解いただきありがとうございます、お母様。」
アリーチェは恭しく礼を述べた。
少しだけ肩の荷が降りた気がして、ふうと息を吐いたのだった。
× × × × × × × × × × ×
街1番の大きな食堂に、金髪の青年が数人の部下を連れ立って入ると一斉にクラッカーの音が鳴り響いた。
数が多過ぎて鼓膜が破れそうなほど音量に思わず青年は耳を塞いだ。
「「「「「「誕生日おめでとう!!」」」」」」
「お前らクラッカーの量は減らせって毎年…!!」
「それだけ愛されてるってことじゃないか、ボス。」
ツッコミを入れるディーノを、彼の右腕のロマーリオが宥める。
「それはそうだけどよ…」
「ほら、ディーノ!グラス持って!」
ディーノは食堂のおばちゃんに半ば強引にワイングラスを持たされた。
その中には白ワインが入っている。
そして早速乾杯が行われる。
「「「「「「かんぱーい」」」」」」
ディーノも皆の勢いに圧倒されながら乾杯した。
変わる変わる住民達が押し寄せて話しかけてきて、忙しないことこの上ない。
皆が満腹になって少し落ち着いてきた頃、ディーノはやっと最も会いたかった女性に会えた。
そう、アリーチェだ
「ディーノ、誕生日おめでとう。」
アリーチェが近付いてディーノにそう告げると、彼は嬉しそうにはにかんだ。
「ありがとう、アリーチェ。前回のお前の誕生日は行けなくてごめんな。」
「気にしないで。お互い働いているんだもの、都合が合わない時はあるよ。」
「ああ、ありがとな。」
「あ、これ、誕生日プレゼント。」
アリーチェは手に持っていたワインを差し出した。
「正直お酒の好みはわからないから、口に合うかはわからないんだけれど………」
「北部のワインか?飲んだ事ないな。あ、しかも俺の生まれ年のか。ありがとな。」
「どういたしまして。」
ディーノはワインを受け取って、空になったグラスをテーブルに置き、近くに置いてあった栓抜きで早速ワインを開けた。
そして自分のグラスにワインを注ぐ。
アリーチェのグラスも空になっており、ディーノはそれにワインを注いだ。
お互いグラスを持って、チンと軽く鳴らす。
「「乾杯」」
「美味いな、これ。癖が少なくて飲みやすい。最近、ローマでの仕事はどうなんだ?」
「順調だよ。色んな日本の観光会社とのパイプができたから、オフシーズンでも景気は良いんだけど忙しくて忙しくて。正直今から春が怖いよ。」
「そっか。あっちでも上手くやれてんだな。」
「うん。ディーノは最近どう?相変わらずリボーンに会いに日本によく行ってるの?」
「アリーチェにはお見通しだな。今年も日本には結構行ってる。この前はリボーンの
「代理戦争?」
ディーノは語った。
リボーン達にかけられた呪いがどんなもので、何のために仕組まれ、主人公ツナがどうそれを解決したのかを。
「凄いね……ツナって子……」
アリーチェは素直に感嘆した。
確かに主人公なのだから、たくさんの活躍をしてしかるべきだが、世界の命運がかかった重大事項について皆がそれなりに納得いく選択をできたことはアリーチェにはとてつもない事のように聞こえた。
実際そうだった。
「だろ?まあ、俺は
「それはドンマイ。でもリボーンの呪いは解けたんでしょう?」
「ああ。でもすぐ元の姿に戻るって訳じゃなさそうだ。」
「そうなんだ。………ねぇ、ディーノ。大事な話があるの。今日は私が独占し続けたら街の人に恨まれそうだから明後日以降で時間作れないかな?私1週間ぐらいこの街に滞在する予定なの。」
「明後日?アリーチェのためなら明日にでも時間作るが…」
「明日は大事な予定があるの。」
「わかった。じゃあ明後日の14時にうちの屋敷でどうだ?」
「うん、それでお願い。」
アリーチェは次の約束を取り付けて、ディーノから離れた。
早速ディーノと喋ろうと虎視眈々と狙っていた他の街の住民が彼に話しかけに行く。
アリーチェはそれを微笑ましそうに見守った。
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