偽装結婚と作戦
ヴァリアー幹部を引き連れてスクアーロはアリーチェと待ち合わせを約束した公園に来ていた。
森林を抜けた先にバス停があるので、そのあたりにアリーチェがいるだろうと思い向かっていた矢先、アリーチェの悲鳴に近い叫びを聞いた。
「お母様!!お義父さん!!」
彼は他の幹部達に目配せをした。
この手の場面に慣れた彼らは気配を消して、スクアーロと共に声のした方へと足を進めた。
「…キャバッローネを…?ディーノがそれを許すとでも?…………………………………………………。そんな簡単にはいかないと思うけれど。…………………………………。断ったら?……………………………………………。キャバッローネを乗っ取ろうってのに、随分とロマンチストなのね。………………………………。わかった。大人しく捕まるから、くれぐれも2人にはこれ以上の手出しはしないで。お義父さんには手当をして。私の心が欲しいならそれぐらいはやってもらえるでしょう?…………………じゃあ切るから。」
アリーチェは携帯を仕舞う振りをして、カバンから銃を持ち出し、彼女を囲っていた3人の男達に向かって撃った。
3人が倒れた後アリーチェは見下した目で彼らを見ながらポツリと呟く。
「普通に私の足の骨をへし折って拉致すればいいのに。」
その感想についてはスクアーロも同感だった。
そしてアリーチェはスクアーロに視線を寄越した。
「いるんでしょう?スクアーロ君。それにヴァリアーの人達も?」
「……気付いてたかぁ。」
スクアーロはアリーチェの前に姿を現した。
「テメーが早撃ちできるとは知らなかったぜぇ。」
「キャバッローネ狙いの連中に何度も襲われればこれくらいは身につけるよ。それで後ろの人達はヴァリアーの幹部で合ってる?」
答えながらアリーチェはディーノに向けて電話を発信した。
「そうだぁ。本当はオレの剣を見せるための相手としてベルだけ呼んだんだが、他の連中が面白がってついてきやがった。」
「なるほど。せっかく来てもらってごめんなんだけど、見ての通りの状況だから今日の約束はまた今度に延期してもらってもいいかな?」
スクアーロと話しつつ並行してディーノへの通話は試みていたが、電話は電波が届かないと告げた。
アリーチェは次にロマーリオに電話をかける。
「それは構わねぇが……これからどうするつもりだぁ?」
「どうしようかなぁ…………麻酔銃の効き目は1時間だから、1時間で対策練って行動に移さないといけないんだけれど……。ディーノは今頃上海行きの飛行機に乗ってるから1日くらいは頼りにならないし。お義父さんが負傷した可能性がある以上、できるだけ早く救出したい……。一応ダメ元で聞くけど………ボンゴレはキャバッローネの内紛には介入しない?」
ロマーリオもディーノと同じく、電波が届かないと電話が告げた。
どうやらディーノが上海行きの飛行機に乗っているというのは本当のようだ。
「ボンゴレっつーか、うちのボスさんはしねぇだろうなぁ。」
「弱体化させるならともかく助ける方には興味ないでしょうねぇ。」
後ろからルッスーリアが口を出す。
「えっと、あなたはルッスーリアさんですね?」
「ええ、そうよ。私のこと知ってるのね。」
「元マフィア関係者だから多少の噂は聞いてますし、スクアーロ君からも話を伺ってます。あとはレヴィさんにベルフェゴール君にマーモンさん。」
「ししっ、王子有名人でやんの。」
「知られてるのはベルだけじゃないよ。」
「それにしてもアリーチェ…と言ったか?」
レヴィが他のメンバーを押しのけてアリーチェに近付いた。
「好みだ………スクアーロなんかやめてオレにしないか?」
「はい?」
アリーチェは思わず鼻から抜けたような声で聞き返した。
「ぶっ…ぶっあっはっはっはっ!!本当にお前、ダメ男吸引機だなぁ!!」
スクアーロは腹を抱えて笑った。
レヴィは不満げな表情を見せる。
「なぬ!?オレがダメ男だと言いたいのか!?」
「ししっ、当たり前じゃん」
「殺し屋としては優秀でも女性に薦めるには…ねぇ?」
「空気読みなよ、レヴィ。そういうところだよ。」
ベルフェゴール、ルッスーリア、マーモンは三者三様の反応だった。
アリーチェはわざとらしく咳をした。
「話を戻すけど、スクアーロ君、お金は何とかするから個人として殺しの依頼を受けてくれないかと聞いてもダメ?」
スクアーロはしばし口を引き結んで、少しだけもどかしそうな表情を見せた。
見かねたマーモンが口を出した。
「ちゃんと対価を払おうという姿勢はプロに対する敬意を感じるし僕としては好感度高いよ。けど厳しい意見を言うと、個人として引き受けたとしても、金銭の授受が発生するならプロとして引き受けてることと変わらないからダメだろうね。」
「同盟内でのトラブルに繋がりかねないことをボスの許可なしにはできないわねぇ……アリーチェちゃんがスク隊長の身内とかならまだしも……」
「身内………ぬ!?いいことを思いついたぞ!!」
名案だとばかりにレヴィは表情を明るくする。
「オレと結婚して身内になれば、オレがアリーチェの母を助けたとしても身内を守ったという個人的な名目で突き通せるぞ!!」
アリーチェはドン引きした。
他の皆もそうだ。
「う゛お゛ぉい!!この状況にかこつけてアリーチェを娶ろうとすんじゃねぇ!!!」
スクアーロはレヴィの腹に蹴りを入れた。
「う゛……」
レヴィは腹を抑える。
「ししっ、確かにヴァリアーの誰かと身内なら個人でって名目は通るな。ボスはともかく9代目や門外顧問がとやかく言う名分はないはずだぜ。」
「だからオレと結婚を……」
レヴィは苦しそうにしながらも、アリーチェに詰め寄る。
アリーチェは咄嗟にスクアーロの後ろに隠れた。
「お断りします!!」
「ぬ!?」
「あらぁ……でも、この状況をなるべく早く収拾したいなら1番良い方法じゃないかしらん?この場にいる独身の成人男性はレヴィとスクアーロしかいないわよ?」
ちゃっかりルッスーリアは自分のことを候補から外していた。
「……っ」
アリーチェは下唇を噛んだ。
もっとマシな解決策を考えたいのに、時間が余りにも少な過ぎた。
スクアーロは頭をかいた後、溜め息をついて、アリーチェを振り返った。
「……アリーチェ、母親のためにテメーの命と人生を懸ける覚悟はあるかぁ?」
「あるよ。お母様の犠牲の上に私の幸せは成り立たない。」
アリーチェが迷いなくキッパリそう言うと、スクアーロは口端を吊り上げた。
「なら、オレと結婚するか?」
「スクアーロ君と?」
「それしかねぇだろうがぁ。オレはザンザスが迷惑を被るようなことをする気はねぇが、テメーを助けてやりたい気持ちは多少ある。結婚するつもりはなかったが、アリーチェならまあ問題はねぇ。レヴィが嫌ならオレしかいねぇぞぉ?」
「私はお母様のために自分の全てを懸ける覚悟だけど、私のためにスクアーロ君の人生を縛りたくない。」
アリーチェは少しだけ泣きそうな顔でそう答えた。
「結婚程度でオレがテメーに縛られるわけがねぇ。」
スクアーロがそう言うとアリーチェは目をパチパチと瞬きさせた。
「た、確かに……」
「前にも言ったがオレは良い男だろぉ?一般人 じゃねぇってこと以外は。」
アリーチェはその言葉に頷いた。
「でも結婚ってキャバッローネの内紛に介入する前に済ませないと意味がないよね?それってできるのかな?」
「そこは任せなよ。不足する書類があれば僕が幻覚で準備してあげる、1枚1億でね。」
「!?」
「チッ……背に腹はかえられねぇ、払ってやる。」
「!?」
アリーチェはマーモンの請求するお金の単位が違い過ぎて言葉を失った。
それに対して当たり前のように払うと言い出すスクアーロにも驚きを隠せない。
「じゃあ早速作戦会議だな、アリーチェ。母親が囚われてんのはどこだぁ?」
まだ、はいとは返事をしていないのに、とアリーチェは思いつつ、質問には答える。
「多分キャバッローネのシマのどこか。詳しい場所はこの人達から聞き出すしかないと思う。」
「敵の目的はキャバッローネを乗っ取ることだなぁ?」
「それと私を手に入れること。17年片思いしているって言ってた。」
「う゛お゛ぉい!テメー本当ダメ男吸引機だなぁ!」
「うん、さすがに悲しくなってくる。とりあえず敵が誰かは絞れてる。キャバッローネ内部の人間で、ディーノのスケジュールを把握できて人を動かせる程度には権力を持っていて、私と17年前には出会っているのは私が知る限り1人しかいない。」
「なら敵がこの後どう出るか予想はつくか?」
アリーチェは首を横に振った。
「わからない。彼は小学校の時のサッカー仲間だったことしか記憶がない。ディーノとは仲が良かったけれど、私と特別仲が良かったわけじゃないし、中学以降はクラスが一緒になったこともない。キャバッローネに入ったこと以外はごく普通の人だと思ってた。」
「なら敵の規模はわかるか?」
「わからない。」
「チッ、なら敵の思う通りに事が運んでるように見せかけるかぁ。」
スクアーロはその方針で頭の中で作戦を立てる。
「アリーチェ、テメー1度敵に捕まれぇ。コイツらがお前を運ぶのをオレは追跡する。敵のアジトに着いたら、アリーチェが敵の相手してる間にオレが1人ずつ処理しておく。アリーチェの親を助けた後、アリーチェを助けに行く。」
「わかった。私は連中の頭の相手をしておけばいいんだね?」
「ああ。じゃあ、さっそくとりあえずコイツらが起きる前に事務的な処理は済ませちまうぞぉ。」
「うん。あ……そうだ、スクアーロ君、いくつか約束事というか契約事項を決めておこう。」
「契約事項?」
「うん、スクアーロ君から見て私が裏切ったと思った時にスクアーロ君が離婚で不利にならないように。例えば、スクアーロ君は外で他の女性と関係を持っても良いけど私はダメとかそういうの。」
「それを設ける意図はわかるが、何でオレが浮気する前提なんだぁ?」
「だって私と結婚することで女性と付き合う権利を奪ってしまうのは申し訳なくて。」
「別に女漁りする予定はねーぞぉ。浮気はお互いナシだぁ。仕事についちゃお互い好きにするし、相手の仕事に干渉しねぇ、それでいいだろぉ?他に決めとくことはあるか?」
「多分ないと思う。」
「じゃあ、決まりだなぁ。」
「うん。婚姻届とは別に契約書を起こすね。」
こうしてアリーチェとスクアーロの偽装結婚が成立した。
「…起きましたか。」
アリーチェはベンチに座り、敵の男達を冷ややかな目で見つめていた。
最初に起きた男は意識を失う前の出来事を思い出し、即座に銃を取り出してアリーチェに向けた。
「何のつもりだ!?」
「ただの時間稼ぎです。」
アリーチェは怯む事なくさも当然のように答える。
「1時間でできることはなかったので、今度こそ諦めます。」
アリーチェは麻酔銃を男に差し出した。
「信用できると思うのか!?」
「できないなら見ぐるみ全部剥がしてしまえばどうです?私に触れていい、裸を見ていいってあなた達の上司が許可しているなら…ですけど。」
「っ!」
「あ、カバンは差し上げます。もう武器はないので。」
男はカバンを引ったくるように奪い、乱暴に開けて中身を確認した。
「カバンに武器がないっつーのは本当みたいだな。」
そう言って彼は他2人を叩き起こした。
彼らはアリーチェがこれ以上抵抗する術はないだろうと判断し、彼女を連行して行った。
森林を抜けた先にバス停があるので、そのあたりにアリーチェがいるだろうと思い向かっていた矢先、アリーチェの悲鳴に近い叫びを聞いた。
「お母様!!お義父さん!!」
彼は他の幹部達に目配せをした。
この手の場面に慣れた彼らは気配を消して、スクアーロと共に声のした方へと足を進めた。
「…キャバッローネを…?ディーノがそれを許すとでも?…………………………………………………。そんな簡単にはいかないと思うけれど。…………………………………。断ったら?……………………………………………。キャバッローネを乗っ取ろうってのに、随分とロマンチストなのね。………………………………。わかった。大人しく捕まるから、くれぐれも2人にはこれ以上の手出しはしないで。お義父さんには手当をして。私の心が欲しいならそれぐらいはやってもらえるでしょう?…………………じゃあ切るから。」
アリーチェは携帯を仕舞う振りをして、カバンから銃を持ち出し、彼女を囲っていた3人の男達に向かって撃った。
3人が倒れた後アリーチェは見下した目で彼らを見ながらポツリと呟く。
「普通に私の足の骨をへし折って拉致すればいいのに。」
その感想についてはスクアーロも同感だった。
そしてアリーチェはスクアーロに視線を寄越した。
「いるんでしょう?スクアーロ君。それにヴァリアーの人達も?」
「……気付いてたかぁ。」
スクアーロはアリーチェの前に姿を現した。
「テメーが早撃ちできるとは知らなかったぜぇ。」
「キャバッローネ狙いの連中に何度も襲われればこれくらいは身につけるよ。それで後ろの人達はヴァリアーの幹部で合ってる?」
答えながらアリーチェはディーノに向けて電話を発信した。
「そうだぁ。本当はオレの剣を見せるための相手としてベルだけ呼んだんだが、他の連中が面白がってついてきやがった。」
「なるほど。せっかく来てもらってごめんなんだけど、見ての通りの状況だから今日の約束はまた今度に延期してもらってもいいかな?」
スクアーロと話しつつ並行してディーノへの通話は試みていたが、電話は電波が届かないと告げた。
アリーチェは次にロマーリオに電話をかける。
「それは構わねぇが……これからどうするつもりだぁ?」
「どうしようかなぁ…………麻酔銃の効き目は1時間だから、1時間で対策練って行動に移さないといけないんだけれど……。ディーノは今頃上海行きの飛行機に乗ってるから1日くらいは頼りにならないし。お義父さんが負傷した可能性がある以上、できるだけ早く救出したい……。一応ダメ元で聞くけど………ボンゴレはキャバッローネの内紛には介入しない?」
ロマーリオもディーノと同じく、電波が届かないと電話が告げた。
どうやらディーノが上海行きの飛行機に乗っているというのは本当のようだ。
「ボンゴレっつーか、うちのボスさんはしねぇだろうなぁ。」
「弱体化させるならともかく助ける方には興味ないでしょうねぇ。」
後ろからルッスーリアが口を出す。
「えっと、あなたはルッスーリアさんですね?」
「ええ、そうよ。私のこと知ってるのね。」
「元マフィア関係者だから多少の噂は聞いてますし、スクアーロ君からも話を伺ってます。あとはレヴィさんにベルフェゴール君にマーモンさん。」
「ししっ、王子有名人でやんの。」
「知られてるのはベルだけじゃないよ。」
「それにしてもアリーチェ…と言ったか?」
レヴィが他のメンバーを押しのけてアリーチェに近付いた。
「好みだ………スクアーロなんかやめてオレにしないか?」
「はい?」
アリーチェは思わず鼻から抜けたような声で聞き返した。
「ぶっ…ぶっあっはっはっはっ!!本当にお前、ダメ男吸引機だなぁ!!」
スクアーロは腹を抱えて笑った。
レヴィは不満げな表情を見せる。
「なぬ!?オレがダメ男だと言いたいのか!?」
「ししっ、当たり前じゃん」
「殺し屋としては優秀でも女性に薦めるには…ねぇ?」
「空気読みなよ、レヴィ。そういうところだよ。」
ベルフェゴール、ルッスーリア、マーモンは三者三様の反応だった。
アリーチェはわざとらしく咳をした。
「話を戻すけど、スクアーロ君、お金は何とかするから個人として殺しの依頼を受けてくれないかと聞いてもダメ?」
スクアーロはしばし口を引き結んで、少しだけもどかしそうな表情を見せた。
見かねたマーモンが口を出した。
「ちゃんと対価を払おうという姿勢はプロに対する敬意を感じるし僕としては好感度高いよ。けど厳しい意見を言うと、個人として引き受けたとしても、金銭の授受が発生するならプロとして引き受けてることと変わらないからダメだろうね。」
「同盟内でのトラブルに繋がりかねないことをボスの許可なしにはできないわねぇ……アリーチェちゃんがスク隊長の身内とかならまだしも……」
「身内………ぬ!?いいことを思いついたぞ!!」
名案だとばかりにレヴィは表情を明るくする。
「オレと結婚して身内になれば、オレがアリーチェの母を助けたとしても身内を守ったという個人的な名目で突き通せるぞ!!」
アリーチェはドン引きした。
他の皆もそうだ。
「う゛お゛ぉい!!この状況にかこつけてアリーチェを娶ろうとすんじゃねぇ!!!」
スクアーロはレヴィの腹に蹴りを入れた。
「う゛……」
レヴィは腹を抑える。
「ししっ、確かにヴァリアーの誰かと身内なら個人でって名目は通るな。ボスはともかく9代目や門外顧問がとやかく言う名分はないはずだぜ。」
「だからオレと結婚を……」
レヴィは苦しそうにしながらも、アリーチェに詰め寄る。
アリーチェは咄嗟にスクアーロの後ろに隠れた。
「お断りします!!」
「ぬ!?」
「あらぁ……でも、この状況をなるべく早く収拾したいなら1番良い方法じゃないかしらん?この場にいる独身の成人男性はレヴィとスクアーロしかいないわよ?」
ちゃっかりルッスーリアは自分のことを候補から外していた。
「……っ」
アリーチェは下唇を噛んだ。
もっとマシな解決策を考えたいのに、時間が余りにも少な過ぎた。
スクアーロは頭をかいた後、溜め息をついて、アリーチェを振り返った。
「……アリーチェ、母親のためにテメーの命と人生を懸ける覚悟はあるかぁ?」
「あるよ。お母様の犠牲の上に私の幸せは成り立たない。」
アリーチェが迷いなくキッパリそう言うと、スクアーロは口端を吊り上げた。
「なら、オレと結婚するか?」
「スクアーロ君と?」
「それしかねぇだろうがぁ。オレはザンザスが迷惑を被るようなことをする気はねぇが、テメーを助けてやりたい気持ちは多少ある。結婚するつもりはなかったが、アリーチェならまあ問題はねぇ。レヴィが嫌ならオレしかいねぇぞぉ?」
「私はお母様のために自分の全てを懸ける覚悟だけど、私のためにスクアーロ君の人生を縛りたくない。」
アリーチェは少しだけ泣きそうな顔でそう答えた。
「結婚程度でオレがテメーに縛られるわけがねぇ。」
スクアーロがそう言うとアリーチェは目をパチパチと瞬きさせた。
「た、確かに……」
「前にも言ったがオレは良い男だろぉ?
アリーチェはその言葉に頷いた。
「でも結婚ってキャバッローネの内紛に介入する前に済ませないと意味がないよね?それってできるのかな?」
「そこは任せなよ。不足する書類があれば僕が幻覚で準備してあげる、1枚1億でね。」
「!?」
「チッ……背に腹はかえられねぇ、払ってやる。」
「!?」
アリーチェはマーモンの請求するお金の単位が違い過ぎて言葉を失った。
それに対して当たり前のように払うと言い出すスクアーロにも驚きを隠せない。
「じゃあ早速作戦会議だな、アリーチェ。母親が囚われてんのはどこだぁ?」
まだ、はいとは返事をしていないのに、とアリーチェは思いつつ、質問には答える。
「多分キャバッローネのシマのどこか。詳しい場所はこの人達から聞き出すしかないと思う。」
「敵の目的はキャバッローネを乗っ取ることだなぁ?」
「それと私を手に入れること。17年片思いしているって言ってた。」
「う゛お゛ぉい!テメー本当ダメ男吸引機だなぁ!」
「うん、さすがに悲しくなってくる。とりあえず敵が誰かは絞れてる。キャバッローネ内部の人間で、ディーノのスケジュールを把握できて人を動かせる程度には権力を持っていて、私と17年前には出会っているのは私が知る限り1人しかいない。」
「なら敵がこの後どう出るか予想はつくか?」
アリーチェは首を横に振った。
「わからない。彼は小学校の時のサッカー仲間だったことしか記憶がない。ディーノとは仲が良かったけれど、私と特別仲が良かったわけじゃないし、中学以降はクラスが一緒になったこともない。キャバッローネに入ったこと以外はごく普通の人だと思ってた。」
「なら敵の規模はわかるか?」
「わからない。」
「チッ、なら敵の思う通りに事が運んでるように見せかけるかぁ。」
スクアーロはその方針で頭の中で作戦を立てる。
「アリーチェ、テメー1度敵に捕まれぇ。コイツらがお前を運ぶのをオレは追跡する。敵のアジトに着いたら、アリーチェが敵の相手してる間にオレが1人ずつ処理しておく。アリーチェの親を助けた後、アリーチェを助けに行く。」
「わかった。私は連中の頭の相手をしておけばいいんだね?」
「ああ。じゃあ、さっそくとりあえずコイツらが起きる前に事務的な処理は済ませちまうぞぉ。」
「うん。あ……そうだ、スクアーロ君、いくつか約束事というか契約事項を決めておこう。」
「契約事項?」
「うん、スクアーロ君から見て私が裏切ったと思った時にスクアーロ君が離婚で不利にならないように。例えば、スクアーロ君は外で他の女性と関係を持っても良いけど私はダメとかそういうの。」
「それを設ける意図はわかるが、何でオレが浮気する前提なんだぁ?」
「だって私と結婚することで女性と付き合う権利を奪ってしまうのは申し訳なくて。」
「別に女漁りする予定はねーぞぉ。浮気はお互いナシだぁ。仕事についちゃお互い好きにするし、相手の仕事に干渉しねぇ、それでいいだろぉ?他に決めとくことはあるか?」
「多分ないと思う。」
「じゃあ、決まりだなぁ。」
「うん。婚姻届とは別に契約書を起こすね。」
こうしてアリーチェとスクアーロの偽装結婚が成立した。
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「…起きましたか。」
アリーチェはベンチに座り、敵の男達を冷ややかな目で見つめていた。
最初に起きた男は意識を失う前の出来事を思い出し、即座に銃を取り出してアリーチェに向けた。
「何のつもりだ!?」
「ただの時間稼ぎです。」
アリーチェは怯む事なくさも当然のように答える。
「1時間でできることはなかったので、今度こそ諦めます。」
アリーチェは麻酔銃を男に差し出した。
「信用できると思うのか!?」
「できないなら見ぐるみ全部剥がしてしまえばどうです?私に触れていい、裸を見ていいってあなた達の上司が許可しているなら…ですけど。」
「っ!」
「あ、カバンは差し上げます。もう武器はないので。」
男はカバンを引ったくるように奪い、乱暴に開けて中身を確認した。
「カバンに武器がないっつーのは本当みたいだな。」
そう言って彼は他2人を叩き起こした。
彼らはアリーチェがこれ以上抵抗する術はないだろうと判断し、彼女を連行して行った。
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