地雷を踏んでしまいました(物理的に)
アリーチェはスクアーロに守ってもらった日以降、毎日平日の昼休みに森に行き、スクアーロに会っていた。
当然、恩返しのためである。
そしてそれは土日も変わらなかった。
今日は日曜日だったが、アリーチェはわざわざ休日の学校に入り、スクアーロに会いに来ていた。
「スクアーロ君!」
いつもの木の上にいたスクアーロは木から降りた。
2人は少し拓けた場所へと移動した。
最近はいつもそこで日本語で会話していた。
森の暗い場所より明るい場所の方が良いだろうというアリーチェの提案だった。
アリーチェとスクアーロはレジャーシートの上に座り、よくチーズをつまみながら日本語で会話していた。
『スクアーロ君って世界中の剣士と勝負するために旅に出るって言ってたよね?最初はどこに行くの?』
『スペイン辺りで考えてる。その次はフランスで、その次がイギリスだ。』
『イギリスの後は?』
『アメリカだぁ。人口や広さの割に名の知れた剣士は少ねぇがな。』
『確かにアメリカって歴史浅いから、伝統のある剣より銃を扱うイメージが強いよ。』
『ああ、そのイメージで間違ってねーだろーなぁ。』
『アメリカの次は?』
『メキシコ辺りで考えてるが、そこは気分だな。一旦イタリアに戻ってくるかもしれねぇ。』
『そしたらまた復学するの?』
『別にわざわざ休学手続きするわけでもねーが、まあ、そうなる。そもそもこの学校に来たのも、オレみてーな無名の強い剣士がいたら勝負してぇってのとボンゴレへのコネが作りたくて来たわけだしなぁ。』
『前者の理由はわかるけど、後者はどうして?』
『後者?』
これだけ語彙力が豊富で会話が成り立つのに、時々スクアーロはアリーチェにとっては簡単な単語で躓く。
アリーチェはイタリア語に言い直すことはなく、日本語で言い換えた。
『2つの目的のうちの2つ目の方の理由を教えて。』
『ああ、そういう意味か。剣帝と謳われる剣士がボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーのボスを張ってるらしいと噂を聞いたぁ。ソイツとの勝負を申し込むにはまずボンゴレに接近する必要がある。』
『なるほど、スクアーロ君らしいや。ヴァリアーのボスというと、テュールって人?』
『ああ。もしかしてお前ボンゴレの関係者なのか?』
『関係者というには関係が希薄過ぎるかな。私は同盟ファミリーの幹部の娘だから。スクアーロ君の役には立てそうにない。』
『そりゃ残念だが……その方がいいかもなぁ。オレにできる貸しの返し方なんざ、殺しぐらいしかねーがテメーはそういうの望んでねぇんだろ?』
『うーん、自分がマフィアになるのは嫌だなって思ってるけど、別にスクアーロ君が剣士として真剣勝負して人を殺すことに対して何か思ったりしないし、私に攻撃してくる人はそれに応じた返り討ちに遭えばいいって思ってるよ。だからこの前スクアーロ君がアイツを斬ってくれてスッキリした。』
『意外だな。アリーチェは平和主義かと思ってたぞぉ。』
『平和主義だよ?自分本位なね。自分と自分の大切な人が平和で幸せな日々を送れているなら他者の不幸には目を瞑る、最低で平凡な人間がアリーチェ・カンメッロだよ?』
アリーチェはそう言ってスクアーロに笑いかけた。
『ああ、そうみてーだなぁ。』
『こういう私は嫌い?』
『嫌いならこうやって話してねーだろぉ。変に偽善者気取る奴より自分の悪性を正確に捉えて割り切ってる奴の方が千倍マシだ。』
『そっか。なら良かった。』
アリーチェがそう言ってレジャーシートに寝転がって目を瞑り、全身で陽の光を浴びた。
その様子を少しだけ観察していたスクアーロもアリーチェに倣ってレジャーシートに横たわった。
『………このまま授業サボっちゃダメかな?』
『知るか。テメーで決めろぉ。』
『あははは、なんか、スクアーロ君のそういうところ好きだなぁ。』
『はぁ!?』
スクアーロは飛び起きて顔を赤くしながら、アリーチェを凝視した。
スクアーロの上半身で影ができ、アリーチェは目を開いて彼の様子を窺い、そして微笑む。
『…あ、変な意味じゃないよ。友人として好きって意味。この学校にいる生徒ってなかなか私を対等な人間として見てくれる人いないから、スクアーロ君が私を1人の人間として対等に扱ってくれることにとてもありがたみを感じてるの。』
『はぁ?オレはテメーが剣どころかロクな武器も扱えないことを下に見てるが?』
『それは事実だから下に見られて当然だよ。スクアーロ君はさ、問答無用で私の全てを下に見てないでしょ?私の日本語能力を評価してくれているし、私が自分で決めるべきことに口出ししたり、やるべきことに手を出したりしない。ちゃんと一線を引いて個人として尊重してくれる。それに……自分の剣にプライドを持っていて、強い目的意識を持って行動し、剣に付随する全てに対して貪欲に努力できる。そんな人を人として好きにならない方が可笑しいと思うんだけど?』
アリーチェが褒めまくると、スクアーロは顔を赤くしたまま口元を手で抑えた。
『お前……褒め殺す気か?』
『まさか。でもそういう反応してくれるってことは私褒めることだけは殺しの才能ある?』
『…かもなぁ。』
『スクアーロ君に認められると本当にそんな気がしちゃうから調子乗っちゃいそう。』
『こっちの調子狂うからあんまりやるなぁ。』
『えー』
アリーチェはわざとらしく頬を膨らませた。
『別にそんなことしても可愛くねーぞぉ。』
『………スクアーロ君に可愛いという物差しがあったとは。』
『う゛お゛ぉい、失礼だな。オレだって男だ、女を可愛いと思う感情ぐらいは持ち合わせてるぞぉ。』
『そうなんだ。ちょっと意外。』
『本当失礼だな。』
『ふふっ、スクアーロ君と私の仲だから許して?』
『お前なぁ……』
ドガァーン!!
突然、けたたましい爆発音と悲鳴が聞こえてスクアーロとアリーチェはそちらを向いた。
「うわああああああっっ!!やめろ!!リボーン!!」
声の主はディーノのようだ。
姿は見えないが、発言からして近くでしごかれているようだ。
『なんだアイツ、うっせーな。』
『多分リボーンにしごかれてるんだと思う。』
『知り合いか?』
『幼馴染』
『3枚に卸していいよなぁ?』
『やめた方がいいよ。スクアーロ君はボンゴレへのコネが欲しいんでしょ?ディーノはボンゴレの同盟のキャバッローネの次期ボスだから、コネどころか敵対するよ?まだスクアーロ君の名前はそんなに知られてないから、きっとヴァリアーが出てくることなく物量攻撃を食うよ?』
『チッ……だったらアリーチェが黙らせて来い。』
『うーん……気乗りはしないけど、行ってくる。』
アリーチェはレジャーシートから立ち上がり、声のする方へと向かった。
「ディーノー?リボーンー?何してるのー?」
「うわあああああ!アリーチェ!来ちゃダメだ!!そこら辺全部地雷が!!」
「地雷…?」
カチャ…
嫌な音がしてアリーチェは全身に冷や汗が伝うのを感じた。
「馬鹿か!!テメーはぁ!!」
ドガアァーン!!
爆発音とスクアーロの怒鳴る声はほぼ同時だった。
しっかり聞き取れる辺り、スクアーロの声量はやはりTNT級らしい。
アリーチェが次に気付いた瞬間には、彼女はスクアーロに抱き締められる形で地面に倒れ込んでいた。
「あ………」
地雷の爆発に巻き込まれかけたアリーチェをスクアーロが庇って助けたのだと状況を理解したアリーチェは、すぐに体を起こして離れスクアーロに怪我がないか見た。
「ごめん!怪我はない!?」
スクアーロも上体を起こし、体に付いた土や枯葉を払い始めた。
「問題ねぇ。テメーは?」
「私も大丈夫。ありがとう、助けてもらうのは2度目だね。」
「別に礼はいらねぇ。安易に素人を爆発音をする方へ向かわせたオレのミスだ。」
「アリーチェ!」
ディーノは先程までの狼狽え具合が嘘のように、地雷源の中を突き進んで時折爆発を起こしながらも器用に逃げ切ってアリーチェに向かって走って来た。
「(今の動き……)」
スクアーロはディーノの動きを見て何か感じたようだったが、何も口にはせず状況を見守った。
アリーチェがスクアーロの手を借りて立ち上がった頃、ディーノはアリーチェのもとへと辿り着き、彼女の両肩を掴んで揺さぶった。
「怪我はねぇか!?」
「大丈夫だよ」
アリーチェがそう答えると、ディーノは彼女を力いっぱい抱き締めた。
「無事で良かった。悪ぃ、こんなことに巻き込んじまって。」
「うん、大丈夫だから。…………ディーノ?離して?」
「あっ、わ、悪ぃ」
そう言って離れたディーノは頬を赤く染めていた。
アリーチェはその理由に見当がついたが、敢えて気付かない振りをした。
ちょうどリボーンがアリーチェ達の前に姿を現したので、アリーチェはそちらに視線を移した。
「リボーン、流石に学校の敷地で地雷はダメだよ。」
「そうか?」
「そうでしょ。」
「だが、アリーチェを心配したディーノが地雷気にせず走り抜けてきただろ?」
「それでもダメだよ。」
アリーチェとリボーンが押し問答していると、スクアーロは独特な鉄の臭いを感じ、すんすんと臭いを嗅いだ。
そして臭いのする方に視線をやって、その正体に気付いた。
「う゛お゛ぉい!!アリーチェ!テメー怪我してんじゃねーかぁ!!」
「え?」
「右足見てみろぉ!!」
アリーチェは自分の右足に視線を落とした。
右足のふくらはぎの辺りのジーパンが破け、破けた箇所からその下にかけて、赤い血が染みていた。
「本当だ。」
スクアーロはアリーチェを肩に担いだ。
アリーチェが顔を上げると呆気に取られるディーノと何を考えているかわからない無表情のリボーンと目が合った。
「えっ…」
「医務室に行くぞ」
「えっ…ちょっ……」
誰にも口を挟ませず、スクアーロはその場を去った。
光の速さとは言わないが、おおよそ常人には出せない速さで走り、すぐに目的の医務室に着いた。
保健医はどうやら不在のようだ。
スクアーロはアリーチェを空いているベッドの上に降ろすと、慣れた手つきで救急箱を用意し始めた。
「ジーパンは切っていいか?」
「あ、うん。もう使い物にならないし。」
アリーチェの返答を聞いたスクアーロはハサミで裾からジーパンを切り、傷口を晒した。
そして清潔なタオルで血を拭い取った。
消毒液を含ませた脱脂綿で傷口をポンポンと優しく叩き、ガーゼをサージカルテープで固定しながら貼りつけた。
「凄く手際がいいね。」
「剣の修行で慣れてるからなぁ。」
「また借りを作っちゃったね。」
「さっきも言ったがテメーをあそこに行かせたオレのミスだ。気にするな。しかしよぉ……………ろくでもねぇ幼馴染だな。」
「ディーノが?どうして?」
「あの動き、ただ者じゃねぇ。」
「そうなんだ。私にはよくわからないけど、いつも臆病なディーノが地雷原を駆け抜けてきた時はびっくりした。」
「守るものがあると強くなるタイプ……か。そういう奴がいるっつーのはわかっちゃいたが、実際目にすると複雑だな。」
「スクアーロ君は自分の剣のために生きてきたから理解できない?」
「ああ、そういうことだぁ。」
その返答を聞いてアリーチェはクスクス笑った。
彼が将来ザンザスのために尽くす男になることを知っているからである。
「多分スクアーロ君は出会ってないだけなんだよ。」
「は?」
「心から忠誠を捧げたい人に。守るとはちょっと違うと思うけど、きっと自分と尽くしたい誰かのために剣を振るう日がくるよ。」
「オレがぁ?」
スクアーロは困惑した様子を見せた。
アリーチェが余りにも確信した様子で発言したからだ。
「想像がつかねーなぁ。」
そう呟いてスクアーロは救急箱を片付けたのだった。
当然、恩返しのためである。
そしてそれは土日も変わらなかった。
今日は日曜日だったが、アリーチェはわざわざ休日の学校に入り、スクアーロに会いに来ていた。
「スクアーロ君!」
いつもの木の上にいたスクアーロは木から降りた。
2人は少し拓けた場所へと移動した。
最近はいつもそこで日本語で会話していた。
森の暗い場所より明るい場所の方が良いだろうというアリーチェの提案だった。
アリーチェとスクアーロはレジャーシートの上に座り、よくチーズをつまみながら日本語で会話していた。
『スクアーロ君って世界中の剣士と勝負するために旅に出るって言ってたよね?最初はどこに行くの?』
『スペイン辺りで考えてる。その次はフランスで、その次がイギリスだ。』
『イギリスの後は?』
『アメリカだぁ。人口や広さの割に名の知れた剣士は少ねぇがな。』
『確かにアメリカって歴史浅いから、伝統のある剣より銃を扱うイメージが強いよ。』
『ああ、そのイメージで間違ってねーだろーなぁ。』
『アメリカの次は?』
『メキシコ辺りで考えてるが、そこは気分だな。一旦イタリアに戻ってくるかもしれねぇ。』
『そしたらまた復学するの?』
『別にわざわざ休学手続きするわけでもねーが、まあ、そうなる。そもそもこの学校に来たのも、オレみてーな無名の強い剣士がいたら勝負してぇってのとボンゴレへのコネが作りたくて来たわけだしなぁ。』
『前者の理由はわかるけど、後者はどうして?』
『後者?』
これだけ語彙力が豊富で会話が成り立つのに、時々スクアーロはアリーチェにとっては簡単な単語で躓く。
アリーチェはイタリア語に言い直すことはなく、日本語で言い換えた。
『2つの目的のうちの2つ目の方の理由を教えて。』
『ああ、そういう意味か。剣帝と謳われる剣士がボンゴレの独立暗殺部隊ヴァリアーのボスを張ってるらしいと噂を聞いたぁ。ソイツとの勝負を申し込むにはまずボンゴレに接近する必要がある。』
『なるほど、スクアーロ君らしいや。ヴァリアーのボスというと、テュールって人?』
『ああ。もしかしてお前ボンゴレの関係者なのか?』
『関係者というには関係が希薄過ぎるかな。私は同盟ファミリーの幹部の娘だから。スクアーロ君の役には立てそうにない。』
『そりゃ残念だが……その方がいいかもなぁ。オレにできる貸しの返し方なんざ、殺しぐらいしかねーがテメーはそういうの望んでねぇんだろ?』
『うーん、自分がマフィアになるのは嫌だなって思ってるけど、別にスクアーロ君が剣士として真剣勝負して人を殺すことに対して何か思ったりしないし、私に攻撃してくる人はそれに応じた返り討ちに遭えばいいって思ってるよ。だからこの前スクアーロ君がアイツを斬ってくれてスッキリした。』
『意外だな。アリーチェは平和主義かと思ってたぞぉ。』
『平和主義だよ?自分本位なね。自分と自分の大切な人が平和で幸せな日々を送れているなら他者の不幸には目を瞑る、最低で平凡な人間がアリーチェ・カンメッロだよ?』
アリーチェはそう言ってスクアーロに笑いかけた。
『ああ、そうみてーだなぁ。』
『こういう私は嫌い?』
『嫌いならこうやって話してねーだろぉ。変に偽善者気取る奴より自分の悪性を正確に捉えて割り切ってる奴の方が千倍マシだ。』
『そっか。なら良かった。』
アリーチェがそう言ってレジャーシートに寝転がって目を瞑り、全身で陽の光を浴びた。
その様子を少しだけ観察していたスクアーロもアリーチェに倣ってレジャーシートに横たわった。
『………このまま授業サボっちゃダメかな?』
『知るか。テメーで決めろぉ。』
『あははは、なんか、スクアーロ君のそういうところ好きだなぁ。』
『はぁ!?』
スクアーロは飛び起きて顔を赤くしながら、アリーチェを凝視した。
スクアーロの上半身で影ができ、アリーチェは目を開いて彼の様子を窺い、そして微笑む。
『…あ、変な意味じゃないよ。友人として好きって意味。この学校にいる生徒ってなかなか私を対等な人間として見てくれる人いないから、スクアーロ君が私を1人の人間として対等に扱ってくれることにとてもありがたみを感じてるの。』
『はぁ?オレはテメーが剣どころかロクな武器も扱えないことを下に見てるが?』
『それは事実だから下に見られて当然だよ。スクアーロ君はさ、問答無用で私の全てを下に見てないでしょ?私の日本語能力を評価してくれているし、私が自分で決めるべきことに口出ししたり、やるべきことに手を出したりしない。ちゃんと一線を引いて個人として尊重してくれる。それに……自分の剣にプライドを持っていて、強い目的意識を持って行動し、剣に付随する全てに対して貪欲に努力できる。そんな人を人として好きにならない方が可笑しいと思うんだけど?』
アリーチェが褒めまくると、スクアーロは顔を赤くしたまま口元を手で抑えた。
『お前……褒め殺す気か?』
『まさか。でもそういう反応してくれるってことは私褒めることだけは殺しの才能ある?』
『…かもなぁ。』
『スクアーロ君に認められると本当にそんな気がしちゃうから調子乗っちゃいそう。』
『こっちの調子狂うからあんまりやるなぁ。』
『えー』
アリーチェはわざとらしく頬を膨らませた。
『別にそんなことしても可愛くねーぞぉ。』
『………スクアーロ君に可愛いという物差しがあったとは。』
『う゛お゛ぉい、失礼だな。オレだって男だ、女を可愛いと思う感情ぐらいは持ち合わせてるぞぉ。』
『そうなんだ。ちょっと意外。』
『本当失礼だな。』
『ふふっ、スクアーロ君と私の仲だから許して?』
『お前なぁ……』
ドガァーン!!
突然、けたたましい爆発音と悲鳴が聞こえてスクアーロとアリーチェはそちらを向いた。
「うわああああああっっ!!やめろ!!リボーン!!」
声の主はディーノのようだ。
姿は見えないが、発言からして近くでしごかれているようだ。
『なんだアイツ、うっせーな。』
『多分リボーンにしごかれてるんだと思う。』
『知り合いか?』
『幼馴染』
『3枚に卸していいよなぁ?』
『やめた方がいいよ。スクアーロ君はボンゴレへのコネが欲しいんでしょ?ディーノはボンゴレの同盟のキャバッローネの次期ボスだから、コネどころか敵対するよ?まだスクアーロ君の名前はそんなに知られてないから、きっとヴァリアーが出てくることなく物量攻撃を食うよ?』
『チッ……だったらアリーチェが黙らせて来い。』
『うーん……気乗りはしないけど、行ってくる。』
アリーチェはレジャーシートから立ち上がり、声のする方へと向かった。
「ディーノー?リボーンー?何してるのー?」
「うわあああああ!アリーチェ!来ちゃダメだ!!そこら辺全部地雷が!!」
「地雷…?」
カチャ…
嫌な音がしてアリーチェは全身に冷や汗が伝うのを感じた。
「馬鹿か!!テメーはぁ!!」
ドガアァーン!!
爆発音とスクアーロの怒鳴る声はほぼ同時だった。
しっかり聞き取れる辺り、スクアーロの声量はやはりTNT級らしい。
アリーチェが次に気付いた瞬間には、彼女はスクアーロに抱き締められる形で地面に倒れ込んでいた。
「あ………」
地雷の爆発に巻き込まれかけたアリーチェをスクアーロが庇って助けたのだと状況を理解したアリーチェは、すぐに体を起こして離れスクアーロに怪我がないか見た。
「ごめん!怪我はない!?」
スクアーロも上体を起こし、体に付いた土や枯葉を払い始めた。
「問題ねぇ。テメーは?」
「私も大丈夫。ありがとう、助けてもらうのは2度目だね。」
「別に礼はいらねぇ。安易に素人を爆発音をする方へ向かわせたオレのミスだ。」
「アリーチェ!」
ディーノは先程までの狼狽え具合が嘘のように、地雷源の中を突き進んで時折爆発を起こしながらも器用に逃げ切ってアリーチェに向かって走って来た。
「(今の動き……)」
スクアーロはディーノの動きを見て何か感じたようだったが、何も口にはせず状況を見守った。
アリーチェがスクアーロの手を借りて立ち上がった頃、ディーノはアリーチェのもとへと辿り着き、彼女の両肩を掴んで揺さぶった。
「怪我はねぇか!?」
「大丈夫だよ」
アリーチェがそう答えると、ディーノは彼女を力いっぱい抱き締めた。
「無事で良かった。悪ぃ、こんなことに巻き込んじまって。」
「うん、大丈夫だから。…………ディーノ?離して?」
「あっ、わ、悪ぃ」
そう言って離れたディーノは頬を赤く染めていた。
アリーチェはその理由に見当がついたが、敢えて気付かない振りをした。
ちょうどリボーンがアリーチェ達の前に姿を現したので、アリーチェはそちらに視線を移した。
「リボーン、流石に学校の敷地で地雷はダメだよ。」
「そうか?」
「そうでしょ。」
「だが、アリーチェを心配したディーノが地雷気にせず走り抜けてきただろ?」
「それでもダメだよ。」
アリーチェとリボーンが押し問答していると、スクアーロは独特な鉄の臭いを感じ、すんすんと臭いを嗅いだ。
そして臭いのする方に視線をやって、その正体に気付いた。
「う゛お゛ぉい!!アリーチェ!テメー怪我してんじゃねーかぁ!!」
「え?」
「右足見てみろぉ!!」
アリーチェは自分の右足に視線を落とした。
右足のふくらはぎの辺りのジーパンが破け、破けた箇所からその下にかけて、赤い血が染みていた。
「本当だ。」
スクアーロはアリーチェを肩に担いだ。
アリーチェが顔を上げると呆気に取られるディーノと何を考えているかわからない無表情のリボーンと目が合った。
「えっ…」
「医務室に行くぞ」
「えっ…ちょっ……」
誰にも口を挟ませず、スクアーロはその場を去った。
光の速さとは言わないが、おおよそ常人には出せない速さで走り、すぐに目的の医務室に着いた。
保健医はどうやら不在のようだ。
スクアーロはアリーチェを空いているベッドの上に降ろすと、慣れた手つきで救急箱を用意し始めた。
「ジーパンは切っていいか?」
「あ、うん。もう使い物にならないし。」
アリーチェの返答を聞いたスクアーロはハサミで裾からジーパンを切り、傷口を晒した。
そして清潔なタオルで血を拭い取った。
消毒液を含ませた脱脂綿で傷口をポンポンと優しく叩き、ガーゼをサージカルテープで固定しながら貼りつけた。
「凄く手際がいいね。」
「剣の修行で慣れてるからなぁ。」
「また借りを作っちゃったね。」
「さっきも言ったがテメーをあそこに行かせたオレのミスだ。気にするな。しかしよぉ……………ろくでもねぇ幼馴染だな。」
「ディーノが?どうして?」
「あの動き、ただ者じゃねぇ。」
「そうなんだ。私にはよくわからないけど、いつも臆病なディーノが地雷原を駆け抜けてきた時はびっくりした。」
「守るものがあると強くなるタイプ……か。そういう奴がいるっつーのはわかっちゃいたが、実際目にすると複雑だな。」
「スクアーロ君は自分の剣のために生きてきたから理解できない?」
「ああ、そういうことだぁ。」
その返答を聞いてアリーチェはクスクス笑った。
彼が将来ザンザスのために尽くす男になることを知っているからである。
「多分スクアーロ君は出会ってないだけなんだよ。」
「は?」
「心から忠誠を捧げたい人に。守るとはちょっと違うと思うけど、きっと自分と尽くしたい誰かのために剣を振るう日がくるよ。」
「オレがぁ?」
スクアーロは困惑した様子を見せた。
アリーチェが余りにも確信した様子で発言したからだ。
「想像がつかねーなぁ。」
そう呟いてスクアーロは救急箱を片付けたのだった。
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