誤解
絵美とビアンキ、隼人の間に生じた拗れは、そう簡単に解消されるものではなかった。
ビアンキのことも隼人のことも絵美はろくに取り合わないまま、彼女の退院の日が近付いていた。
「絵美、あなたが帰国する時送迎ついでに一緒に行きたい場所があるんだけど、ダメかしら?」
「帰国する時?送迎なんていらないのですが。」
「あら、つれないこと言わないで。帰省ついでなんだから。」
「……その行きたい場所とやらはイタリアにあるのですか?」
「ええ」
ビアンキは頷く。
「ボスにはさっさと治して帰って来いって言われているのですが……どれぐらい時間かかりますか?」
「半日くらいロスするかしら。飛行機の到着時間次第では寄り道しても夜にはヴァリアー本部に着けるわ。」
「場所は?」
「………私達が昔住んでた城よ。」
「ええっ!?」
絵美は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「あの城ってファミリーが崩壊した時にギアーゼィに乗っ取られたんじゃ?」
「……色々あって取り返したわ。」
何か訳ありそうな複雑な表情をビアンキは浮かべたが、絵美はそこについては追及しないことにした。
「そう……。ボスの許可が降りたら付き合います。」
「ありがとう。隼人も一緒に連れて行きたいから、早めに確認してくれると嬉しいわ。」
「わかった。」
「じゃあ飲み物と間食は冷蔵庫に入れておいたから、明日また来るわ。」
ビアンキはそう言って上機嫌な様子で病室を出た。
絵美はいつ許可を取るべきか少し迷ったが、ザンザスの性格上早いに越したことはないと結論付けた。
早速スクアーロから支給された携帯電話を開いて、現在時刻を確認した。
17時37分。
イタリアは昼間だろうと計算した彼女は、携帯電話内の電話帳を開いた。
目的の名前はXで始まるからか、最後に表情された。
XANXASと書かれた番号を選択して、携帯を耳に当てた。
10コール以上鳴っただろうか。
結局彼が出ることはなく、留守番電話に切り替わった。
「(確かにボスが電話に出てるところなんて見たことないな……。スクアーロさんあたりに相談してみるか……。)」
絵美がそのように考えたそばから携帯電話が震えた。
絵美は画面に映るその6文字に歓喜して、早速その折り返しの電話に出た。
「もしもし、絵美です。」
『…何の用だ?』
「帰国のことでお願いがあってお電話しました。」
『遅くなるのか?』
「半日だけ。お姉様が私達が育った城に寄り道したいみたいで。」
『あ?何でテメェの姉がついてくる?』
「さあ……気付いたらお姉様がついてくる流れになってましたね。隼人もついてくるそうですよ。帰省ってやつらしいです。」
『……………』
「ダメですか?ダメでしたら断りますが…」
『俺の命令に背いてまで姉に付き合いたい理由は何だ?』
ザンザスに動機を尋ねられ、絵美はしばし考え込んだ。
「………きっとお姉様は私達兄弟の仲を改善したいのでしょう。私はそんなのどうでも良いですが、機会を与えないと何度でも隙あらば家族の時間を持とうとすると思うので、これを機に決着を付けてこようかと。」
『……チッ……許可する。いつこっちに着く?』
「明日退院できるかどうかの判断がされて、早ければ明後日には退院できます。そちらに到着するのは明々後日の夜になるかと。」
『そうか。用事が済んだらさっさと戻って来い。』
「はい、もちろんです。」
絵美は早くザンザスに会いたいと思った。
彼女は心の中で思っていたつもりだったが、それは口を突いて出ていた。
「早く会いたいな……」
『は?』
「え?…あっ、何でもないです。」
自分が考えていたことを口にしていたことに気付いた絵美は慌てて誤魔化した。
自分の考えていることがまるで恋する乙女のような思考回路のように感じ、そういったものをザンザスが好まないと思ってのことだった。
『…………』
「予定に変更がありそうならまたご連絡しますね。失礼します。」
『…ああ』
絵美はザンザスの返事を聞いてすぐに電話を切った。
もうすぐ夕食が運ばれる時間だが、お腹が空いた絵美はビアンキが置いて行った間食を確認すべくベッドから離れ、冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫にあった紫色かつ謎のキノコが生えた三角柱の物体を見て、絵美は溜息をついた。
「またポイズンクッキング…」
絵美は食べるかどうかしばし逡巡して、結局食べないことにした。
「(毒耐性あるといっても、入院中まで食べる必要はないよね。)」
絵美にもポイズンクッキングを作る能力はある。
ビアンキと異なり、意図的に作ることができる。
一見ビアンキの上位互換のような能力に思えるが、絵美のポイズンクッキングはビアンキのものに比べると毒性が低く、毒に多様性もない。
ビアンキの千紫毒万紅のように、物に触れただけでポイズンクッキングにするような技もない。
絵美の持つポイズンクッキングの才能は、ビアンキの下位互換なのである。
ただ、絵美にとって幸運だったのはビアンキと同等の毒耐性があることだった。
飢え死にしかけた時に毒キノコを食べて助かったこともある。
その毒耐性から絵美は幼少期ビアンキのポイズンクッキングをまずいと思いながらもたくさん食べてきた。
ポイズンクッキングを食べ続けたからこそ手に入れた毒耐性なのか、もともと彼女に備わっていた才能なのかは神のみぞ知るところである。
何も見なかったことにして冷蔵庫を閉めて、絵美はベッドに戻った。
暗くなった並盛の町の夜景を眺めながら、絵美はボソリと呟いた。
「ボスに……会いたいな……」
一方その頃のイタリアでは、スクアーロが困っていた。
スクアーロだけではない。
ルッスーリア、レヴィ、ベルフェゴール、マーモン、即ち会議に集まった幹部全員が困っていた。
「何でボスはあんなに不機嫌なのかしら…?」
「知らん。だが、明らかに怒っているな。」
「午前中は普通だったはず……王子的には。」
「誰かまたやらかしたの?」
ヒソヒソと幹部の面々がザンザスの機嫌について言及する。
ザンザスの機嫌を窺うことはままあることだが、今日は特に酷かった。
完全に自分の世界に入ってイライラしているのが見て取れた。
「ボスさんよぉ、そろそろ会議始めてーんだが良いよなぁ?」
普段ならザンザスの機嫌などいちいち取らず、問答無用で会議を始めるスクアーロでさえ、断りを入れた。
「……あ゛?」
「………何かあったのかぁ?」
余りに酷いザンザスの様子に居た堪れなくなったスクアーロは思い切って尋ねてみた。
他の幹部の面々全員が次の瞬間にはスクアーロが死ぬと予想した。
しかし、意外にもザンザスの手は出ない。
いつもならグラスの1つでも飛ぶはずなのにだ。
「絵美から連絡があった。」
「う゛お゛ぉい、帰国の予定が決まったか?」
「明々後日」
ヴァリアーの面々は思った。
むしろそれはザンザスにとって機嫌が良くなるニュースのはずだと。
「良かったじゃない、ボス。絵美のこと気に入ってるんでしょ〜?」
ルッスーリアがそう言うと、鬼の形相でザンザスはルッスーリアを睨んだ。
ルッスーリアの額に大量の汗が滲み出て、ポタポタと落ちて行った。
「兄弟と寄り道するらしい。」
「何か問題が?」
鈍感を通り越したレヴィがそう尋ねると、ザンザスは適当なグラスをレヴィに投げた。
「ぬぉっ!?」
それら見事に命中し、レヴィは気絶した。
普段スクアーロが投げつけられる時は気絶まではしないためいつも以上に力がこもってると皆が確信した。
「行くなって命令すれば良かったんじゃん?絵美はボスに従順だし。」
「同行者が身内で半日程度のロスなら問題ないと判断した。」
意識のないレヴィを除いた幹部全員の頭の上にハテナが浮かぶ。
問題ないと判断したなら、なぜこうも機嫌が悪いのかと。
ザンザスは自分の嫌なことを自らする性分ではないから、問題ないと判断したのであれば彼の中で大した不満はなかったはずだ。
「話が見えねぇ、ザンザス。結局何が問題だったんだ?」
スクアーロが本題に切り込んだ。
「………電話中突然「早く会いたい」と呟いていた。寄り道をする兄弟は今日本で一緒にいるはずなのに、なぜそんな発言が出てくる?本当は別の用事があるんじゃねぇか?」
「別の用事?ししっ、確かに兄弟で寄り道とか俺なら俺なら速攻殺しちゃうね。」
「ベルは特例だよ…。でも確かに絵美も兄弟仲が良いとは言えない。兄弟で寄り道って違和感がある。」
ベルフェゴールとマーモンがそれぞれ感想を述べた。
ますますザンザスの顔つきは険しくなる。
「でも別の用事って言ってもねぇ……。あの子友達いないし。普段の外出も生活必需品や武器の買い足し、あとは毒草集めくらいよねぇ……。その辺りならわざわざ誤魔化したりしないでしょうし。考え過ぎなんじゃないかしらん?というか、あの子が会いたいのはボスじゃない?」
ルッスーリアは冷静に絵美の入隊後の行動を振り返って分析した。
その意見には他の皆も賛成でうんうんと首を縦に振っていた。
「……男って可能性はねぇのか?」
ザンザス以外の男性で付き合っている男性がいるという仮定で話が進んでいることに、スクアーロは一瞬違和感を覚えたが絵美のセフレ発言を思い出して少し納得した。
セフレであれば1人に絞る必要はないのだから。
しかし、彼はキッパリとザンザスの意見を否定した。
「男だぁ?アイツに限ってそんなことはねーだろぉ。」
まだザンザスは反論する。
「アイツの見た目は悪くない。」
「確かに可愛い顔してるけど、本人の性格がああだもんなー。寄ってくる男がいても本人が寄せつけないだろ。」
ベルフェゴールは失言した。
ザンザスの銃が彼に向けて放たれた。
「「「(絵美を可愛いとか言ったらマズいのか……)」」」
スクアーロ、ルッスーリア、マーモンの3人の感想が見事にシンクロした。
ベルフェゴールはさすがヴァリアー1の天才で、何とか避けていた。
肩口が焦げてはいたが。
「ボス、あの兄弟と寄り道っていうのには違和感あるけど、絵美がボス以外の男に懐くなんてありえないと思うよ。」
「そうよねぇ、他人に深く突っ込まない絵美がボスには心開いてるもの。」
「てかよぉ、気になるなら実際に見て確かめれば良いんじゃねーかぁ?」
3人がそう発言したことで、少しだけ機嫌がマシになったザンザスは決断した。
「明々後日、絵美を空港から尾ける。」
ビアンキのことも隼人のことも絵美はろくに取り合わないまま、彼女の退院の日が近付いていた。
「絵美、あなたが帰国する時送迎ついでに一緒に行きたい場所があるんだけど、ダメかしら?」
「帰国する時?送迎なんていらないのですが。」
「あら、つれないこと言わないで。帰省ついでなんだから。」
「……その行きたい場所とやらはイタリアにあるのですか?」
「ええ」
ビアンキは頷く。
「ボスにはさっさと治して帰って来いって言われているのですが……どれぐらい時間かかりますか?」
「半日くらいロスするかしら。飛行機の到着時間次第では寄り道しても夜にはヴァリアー本部に着けるわ。」
「場所は?」
「………私達が昔住んでた城よ。」
「ええっ!?」
絵美は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「あの城ってファミリーが崩壊した時にギアーゼィに乗っ取られたんじゃ?」
「……色々あって取り返したわ。」
何か訳ありそうな複雑な表情をビアンキは浮かべたが、絵美はそこについては追及しないことにした。
「そう……。ボスの許可が降りたら付き合います。」
「ありがとう。隼人も一緒に連れて行きたいから、早めに確認してくれると嬉しいわ。」
「わかった。」
「じゃあ飲み物と間食は冷蔵庫に入れておいたから、明日また来るわ。」
ビアンキはそう言って上機嫌な様子で病室を出た。
絵美はいつ許可を取るべきか少し迷ったが、ザンザスの性格上早いに越したことはないと結論付けた。
早速スクアーロから支給された携帯電話を開いて、現在時刻を確認した。
17時37分。
イタリアは昼間だろうと計算した彼女は、携帯電話内の電話帳を開いた。
目的の名前はXで始まるからか、最後に表情された。
XANXASと書かれた番号を選択して、携帯を耳に当てた。
10コール以上鳴っただろうか。
結局彼が出ることはなく、留守番電話に切り替わった。
「(確かにボスが電話に出てるところなんて見たことないな……。スクアーロさんあたりに相談してみるか……。)」
絵美がそのように考えたそばから携帯電話が震えた。
絵美は画面に映るその6文字に歓喜して、早速その折り返しの電話に出た。
「もしもし、絵美です。」
『…何の用だ?』
「帰国のことでお願いがあってお電話しました。」
『遅くなるのか?』
「半日だけ。お姉様が私達が育った城に寄り道したいみたいで。」
『あ?何でテメェの姉がついてくる?』
「さあ……気付いたらお姉様がついてくる流れになってましたね。隼人もついてくるそうですよ。帰省ってやつらしいです。」
『……………』
「ダメですか?ダメでしたら断りますが…」
『俺の命令に背いてまで姉に付き合いたい理由は何だ?』
ザンザスに動機を尋ねられ、絵美はしばし考え込んだ。
「………きっとお姉様は私達兄弟の仲を改善したいのでしょう。私はそんなのどうでも良いですが、機会を与えないと何度でも隙あらば家族の時間を持とうとすると思うので、これを機に決着を付けてこようかと。」
『……チッ……許可する。いつこっちに着く?』
「明日退院できるかどうかの判断がされて、早ければ明後日には退院できます。そちらに到着するのは明々後日の夜になるかと。」
『そうか。用事が済んだらさっさと戻って来い。』
「はい、もちろんです。」
絵美は早くザンザスに会いたいと思った。
彼女は心の中で思っていたつもりだったが、それは口を突いて出ていた。
「早く会いたいな……」
『は?』
「え?…あっ、何でもないです。」
自分が考えていたことを口にしていたことに気付いた絵美は慌てて誤魔化した。
自分の考えていることがまるで恋する乙女のような思考回路のように感じ、そういったものをザンザスが好まないと思ってのことだった。
『…………』
「予定に変更がありそうならまたご連絡しますね。失礼します。」
『…ああ』
絵美はザンザスの返事を聞いてすぐに電話を切った。
もうすぐ夕食が運ばれる時間だが、お腹が空いた絵美はビアンキが置いて行った間食を確認すべくベッドから離れ、冷蔵庫を開けた。
冷蔵庫にあった紫色かつ謎のキノコが生えた三角柱の物体を見て、絵美は溜息をついた。
「またポイズンクッキング…」
絵美は食べるかどうかしばし逡巡して、結局食べないことにした。
「(毒耐性あるといっても、入院中まで食べる必要はないよね。)」
絵美にもポイズンクッキングを作る能力はある。
ビアンキと異なり、意図的に作ることができる。
一見ビアンキの上位互換のような能力に思えるが、絵美のポイズンクッキングはビアンキのものに比べると毒性が低く、毒に多様性もない。
ビアンキの千紫毒万紅のように、物に触れただけでポイズンクッキングにするような技もない。
絵美の持つポイズンクッキングの才能は、ビアンキの下位互換なのである。
ただ、絵美にとって幸運だったのはビアンキと同等の毒耐性があることだった。
飢え死にしかけた時に毒キノコを食べて助かったこともある。
その毒耐性から絵美は幼少期ビアンキのポイズンクッキングをまずいと思いながらもたくさん食べてきた。
ポイズンクッキングを食べ続けたからこそ手に入れた毒耐性なのか、もともと彼女に備わっていた才能なのかは神のみぞ知るところである。
何も見なかったことにして冷蔵庫を閉めて、絵美はベッドに戻った。
暗くなった並盛の町の夜景を眺めながら、絵美はボソリと呟いた。
「ボスに……会いたいな……」
× × × × × × × × × × ×
一方その頃のイタリアでは、スクアーロが困っていた。
スクアーロだけではない。
ルッスーリア、レヴィ、ベルフェゴール、マーモン、即ち会議に集まった幹部全員が困っていた。
「何でボスはあんなに不機嫌なのかしら…?」
「知らん。だが、明らかに怒っているな。」
「午前中は普通だったはず……王子的には。」
「誰かまたやらかしたの?」
ヒソヒソと幹部の面々がザンザスの機嫌について言及する。
ザンザスの機嫌を窺うことはままあることだが、今日は特に酷かった。
完全に自分の世界に入ってイライラしているのが見て取れた。
「ボスさんよぉ、そろそろ会議始めてーんだが良いよなぁ?」
普段ならザンザスの機嫌などいちいち取らず、問答無用で会議を始めるスクアーロでさえ、断りを入れた。
「……あ゛?」
「………何かあったのかぁ?」
余りに酷いザンザスの様子に居た堪れなくなったスクアーロは思い切って尋ねてみた。
他の幹部の面々全員が次の瞬間にはスクアーロが死ぬと予想した。
しかし、意外にもザンザスの手は出ない。
いつもならグラスの1つでも飛ぶはずなのにだ。
「絵美から連絡があった。」
「う゛お゛ぉい、帰国の予定が決まったか?」
「明々後日」
ヴァリアーの面々は思った。
むしろそれはザンザスにとって機嫌が良くなるニュースのはずだと。
「良かったじゃない、ボス。絵美のこと気に入ってるんでしょ〜?」
ルッスーリアがそう言うと、鬼の形相でザンザスはルッスーリアを睨んだ。
ルッスーリアの額に大量の汗が滲み出て、ポタポタと落ちて行った。
「兄弟と寄り道するらしい。」
「何か問題が?」
鈍感を通り越したレヴィがそう尋ねると、ザンザスは適当なグラスをレヴィに投げた。
「ぬぉっ!?」
それら見事に命中し、レヴィは気絶した。
普段スクアーロが投げつけられる時は気絶まではしないためいつも以上に力がこもってると皆が確信した。
「行くなって命令すれば良かったんじゃん?絵美はボスに従順だし。」
「同行者が身内で半日程度のロスなら問題ないと判断した。」
意識のないレヴィを除いた幹部全員の頭の上にハテナが浮かぶ。
問題ないと判断したなら、なぜこうも機嫌が悪いのかと。
ザンザスは自分の嫌なことを自らする性分ではないから、問題ないと判断したのであれば彼の中で大した不満はなかったはずだ。
「話が見えねぇ、ザンザス。結局何が問題だったんだ?」
スクアーロが本題に切り込んだ。
「………電話中突然「早く会いたい」と呟いていた。寄り道をする兄弟は今日本で一緒にいるはずなのに、なぜそんな発言が出てくる?本当は別の用事があるんじゃねぇか?」
「別の用事?ししっ、確かに兄弟で寄り道とか俺なら俺なら速攻殺しちゃうね。」
「ベルは特例だよ…。でも確かに絵美も兄弟仲が良いとは言えない。兄弟で寄り道って違和感がある。」
ベルフェゴールとマーモンがそれぞれ感想を述べた。
ますますザンザスの顔つきは険しくなる。
「でも別の用事って言ってもねぇ……。あの子友達いないし。普段の外出も生活必需品や武器の買い足し、あとは毒草集めくらいよねぇ……。その辺りならわざわざ誤魔化したりしないでしょうし。考え過ぎなんじゃないかしらん?というか、あの子が会いたいのはボスじゃない?」
ルッスーリアは冷静に絵美の入隊後の行動を振り返って分析した。
その意見には他の皆も賛成でうんうんと首を縦に振っていた。
「……男って可能性はねぇのか?」
ザンザス以外の男性で付き合っている男性がいるという仮定で話が進んでいることに、スクアーロは一瞬違和感を覚えたが絵美のセフレ発言を思い出して少し納得した。
セフレであれば1人に絞る必要はないのだから。
しかし、彼はキッパリとザンザスの意見を否定した。
「男だぁ?アイツに限ってそんなことはねーだろぉ。」
まだザンザスは反論する。
「アイツの見た目は悪くない。」
「確かに可愛い顔してるけど、本人の性格がああだもんなー。寄ってくる男がいても本人が寄せつけないだろ。」
ベルフェゴールは失言した。
ザンザスの銃が彼に向けて放たれた。
「「「(絵美を可愛いとか言ったらマズいのか……)」」」
スクアーロ、ルッスーリア、マーモンの3人の感想が見事にシンクロした。
ベルフェゴールはさすがヴァリアー1の天才で、何とか避けていた。
肩口が焦げてはいたが。
「ボス、あの兄弟と寄り道っていうのには違和感あるけど、絵美がボス以外の男に懐くなんてありえないと思うよ。」
「そうよねぇ、他人に深く突っ込まない絵美がボスには心開いてるもの。」
「てかよぉ、気になるなら実際に見て確かめれば良いんじゃねーかぁ?」
3人がそう発言したことで、少しだけ機嫌がマシになったザンザスは決断した。
「明々後日、絵美を空港から尾ける。」
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