恋心の自覚
白蘭には散々振り回されたものの、戦闘の練習に付き合ってもらえたことは絵美にとって非常にプラスであった。
絵美はアニマルリングを使いこなせるようになり、特に大きなトラブルなく時間が過ぎ、絵美は予定通り明日ヴァリアーに戻ることとなった。
ユニの計らいで絵美はユニ、ガンマ、そして監視対象である白蘭と共に晩餐を開いてもらった。
「あっという間でしたね、絵美さん。もっとお話ししたかったです。」
「話…ですか?」
「はい。女子会というものに憧れてまして。」
「女子会?それは何をするものなんですか?」
「私も詳しくはないのですが、女の子だけで集まって恋バナとかするらしいです。」
「恋バナ……すみませんが、私にはついていけない世界です。」
そこに白蘭が口を挟む。
「絵美ちゃんはザンザス君への思いを語ればいいんじゃないかな?」
「ボスへの?うーん、痺れるような殺気がかっこいいとか?」
「なんかずれてるぞ…」
絵美は素直にザンザスに対する感想を言ったつもりだったが、ガンマは引き気味だった。
「他にかっこいいと思う所はないの?」
「自分以外の全てをカスだと思って見下している目とか、人一倍嫌なことには怒りを覚えるのにそれを溜め込んで爆発させるところとか……信頼している相手には速攻で怒りをぶつけるところもかっこいいと思う。共感とか同情とかの言葉とは無縁な所も。」
「あははは!想像以上に絵美ちゃんってザンザス君が好きなんだね♪」
「そうですね。」
白蘭とユニは笑っている。
ガンマは笑っているが、それは苦笑いだった。
絵美だけが1人頭にハテナを浮かべている。
「好意があるかないかで聞かれたらもちろんあるけど、それは殺し屋としての尊敬の情なんですが…」
絵美がそう言うと白蘭は腹を抱えて笑った。
「あはははははは!いやぁ…もう!本当に可愛いな、絵美ちゃんは!絵美ちゃんがさっきから挙げているのはほとんど、ザンザス君の殺し屋としての側面じゃないじゃん♪」
白蘭の指摘を受けて、絵美は目を見開いて固まった。
「自覚してないのがまた可愛いね♪ユニちゃんもそう思うだろ?」
「はい」
絵美は固まり続けたままだ。
「絵美さんはザンザスさんが大好きなんですね。」
ユニにはっきり言語化されて、絵美は顔が熱くなるのを感じた。
「赤くなっちゃって可愛いなー♪僕も絵美ちゃんの彼氏に立候補しちゃおうかな?」
「白蘭、揶揄うのはほどほどにしろ。」
タチの悪い冗談を白蘭が口にしたことで、ガンマが白蘭を注意したが更に絵美に追い討ちをかけた。
「獄寺絵美、強く尊敬している異性を恋愛対象として見るのは不自然ではないと思うぞ。」
絵美は更に顔を赤くして俯いた。
その言葉は胸にストンと落ちる感覚があった。
絵美は生まれて初めて、恋というものを自覚した。
「経験者は語るってやつかな?」
「黙れ、白蘭!」
ずっと笑顔だったユニの表情が一瞬だけ揺らいだ。
しかしすぐにいつもの笑顔に戻った。
「差し支えなければ絵美さんの恋のお話、もっと詳しく聞いてみたいです。」
「詳しくって言われても……」
絵美は狼狽える。
ユニは1ファミリーのボスであり、元大空の虹の赤ん坊 だ。
当然ぞんざいな扱いなどできない。
だが、これ以上この話題を掘り下げられるも嫌だった。
「ザンザスさんとの出会いはどんな感じでしたか?」
「出会い?うーん……初めてボスの殺気を感じた時は直感的にこの人には敵わないと思いました。」
絵美の長所であり欠点でもある点は基本的に思っていることをそのまま口にしてしまう点だろう。
この話題から離れたい思いながらも彼女は質問に対して素直に答えてしまった。
「ザンザスさんは絵美さんに対してどんな感じだったんですか?」
「完全にドカスを見る目でした。私が女ってことも気に食わない様子でした。」
靴を舐めることを要求されたことを思い出したが、流石の絵美もこの質問には忖度して答えた。
「それで何で好きになるんだ?」
ガンマが呆れた顔でそう尋ねた。
「何ででしょうね。目が合った瞬間に私はこの人が私のボスだって思ったんです。」
「!…その感覚はわからないでもない。」
ユニとの出会いを想起したであろうガンマはチラリとユニを見た。
目が合ったユニはより一層笑みを深めた。
「ねえねえ、絵美ちゃん、ザンザス君って夜の方はどうなの?」
ほっこりした雰囲気だったはずなのに、ここで白蘭が爆弾を投下した。
ガンマの顔が引き攣る。
絵美は質問の意味がわからず首を傾げた。
その顔は先程より少し赤味が引いている。
「夜……?」
「僕の予想だとザンザス君は絶倫なんじゃないかなーと思うんだけど、実際どう?」
「絶倫?確かにボスは並外れた能力をお持ちですけど…」
「え、もしかして意味知らない?」
「?」
絵美は頭にハテナを浮かべた。
ユニも同じような様子だ。
「2人共知らなくていい!」
ガンマが叫ぶ。
白蘭は容赦なくその意味を説明した。
「要は性欲ずば抜けてて夜散々付き合わされない?」
意味を理解した絵美はまた顔を赤くした。
ユニも少し頬を染めている。
「そういうことはノーコメントで!失礼ですよ、白蘭!」
「やっぱり凄いんだ♪」
「白蘭ッ!!」
絵美は彼の名を叫ぶ。
「絶対もうあなたの監視なんか引き受けない!」
「えー、つれないなぁ。」
「今のはお前が完全に悪いだろ…」
ガンマはそう突っ込んで溜め息をついた。
この空気をどうにかしようとガンマは話題を変えた。
「そういえば白蘭との修行を見ていたが、絵美は獄寺隼人と同じくダイナマイトを扱うようだな?同じ師に師事していたのか?」
「え?はい…」
急な方向転換に困惑しつつも絵美は頷いた。
「Dr.シャマルに3年ほど見てもらいました。隼人は2年くらいだったはずです。」
「Dr.シャマル!?トライデントモスキートの?」
「はい、その人です。」
「随分なビッグネームに育ててもらったんだな。ボンゴレの関係でか?」
「いえ、私と隼人がそれぞれボンゴレに所属したのはその後の話で、ボンゴレとシャマルは関係ないです。シャマルは2世代前のヴァリアーの勧誘を断っていますし。」
「お前達は最初からボンゴレではないのか?」
「その辺10年後の世界でミルフィオーレは把握してなかったんですか?」
その質問には白蘭が口を挟んだ。
「ん?把握してたよ♪ガンマ君が経歴まで記憶してなかっただけじゃない?」
「確かに過去の経歴は流し読みしていたな。」
「獄寺君は既に滅びてるファミリーのボスの嫡子だったのさ、表向きはね♪」
「表向きって言うと、2人共私生児だったってことか?」
「そうだよ♪その事実を知って獄寺君が城を飛び出したのが6年前。後継者のいなくなった弱小ファミリーの結末はガンマ君ならわかるだろ?」
「………」
「実は未来の僕の記憶によると他の並行世界 の絵美ちゃんはほとんど9歳〜10歳の間に死んじゃってて、ヴァリアーに辿り着けた世界の絵美ちゃんだけが成人してるんだ♪だから絵美ちゃんとザンザス君って運命の相手なのかと思ってたよ♪」
「殺し屋が私の天職という訳ではなくて?」
完全に顔から赤味が引いて冷静になった絵美は白蘭に素朴な疑問をぶつけた。
「フリーの殺し屋として名を馳せた世界もあったけど、全部成人前には死んでるよ。」
白蘭の回答を受けて、絵美は俯いて考え込んだ。
「……殺し屋が短命なのは別に不自然じゃない。ボスが守ってくれてたんですかね…」
「そうかもね♪」
「実は……並行世界 のことはわかりませんが、未来のことは少しだけわかります。絵美さんにこの後試練が訪れます。ボンゴレとボンゴレの同盟ファミリーを巻き込んで。」
絵美は空いた口が塞がらなかった。
「ボンゴレどころか同盟ファミリーまで?」
「ザンザスさんが動きますから。」
「嫌な予感しかしない……」
顔を引き攣らせる絵美とは反対にユニは微笑んだ。
「色々と大変だと思いますが、一貫してあなたのボスを信じれば良いと思います。」
「わかりました。その言葉、胸に刻んでおきます。ありがとう、ユニさん。」
「どういたしまして」
ユニは太陽のような温かな笑みを見せる。
絵美はそれを見てつられて笑い、今度は真顔で白蘭を見た。
「白蘭もありがとう。」
「ん?僕も?」
「私が知らない内にボスに守られてる可能性に気付けて良かった。」
「知ってどうするの?」
「守られるばかりは嫌だから、もっと強くなります。」
「君がもっと強くなるとそれはそれで末恐ろしいなぁ♪」
全くそんなことは思っていなさそうな顔だった。
そのコメントはスルーすることにした絵美はガンマを見た。
「ガンマさんもありがとうございます。」
「俺もか?」
「あなたと話していたら、私がボスを好きなんだって腑に落ちました。」
「そうか。そいつは良かったな。」
この後は他愛もない話をして解散となった。
絵美は自分の恋心を自覚した。
しかし、自覚したのはそれだけ。
「(知らない方がかえって良かったかも…)」
絵美はヴァリアー本部へ向かう電車の中、そう考えた。
絵美は、ザンザスはいつか有力な組織をバックに持つ女性と結婚するだろうと思っている。
マフィアは裏社会だが婚姻政策をすることもある。
沢田綱吉であれば好きな女性と結婚できるだろう。
しかし、ザンザスは違う。
2度も9代目を陥れようとし、沢田綱吉に敗れたザンザスがボンゴレ10代目になるのはそう簡単な話ではない。
切れるカードを全て切っても、ザンザスの考える最強のボンゴレを手に入れるという所業がなせるかどうかは怪しい。
だから絵美は常に思っている。
ザンザスにとって自分は踏み台であり、物であり、ザンザスの将来に役立つ女性が現れたら捨てられると。
捨てられなかったとしても、絵美は身を引くつもりだ。
母親と同じ轍を踏みたくないのだから。
「(この思いを伝えちゃいけない。ボスは受け入れてくれると思うけど、受け入れてくれたらいざという時に私がボスから離れられなくなる。面倒くさい女にならないように気を付けないと……)」
絵美はそう思ったが、現実はそんなに甘くはなかった。
絵美はアニマルリングを使いこなせるようになり、特に大きなトラブルなく時間が過ぎ、絵美は予定通り明日ヴァリアーに戻ることとなった。
ユニの計らいで絵美はユニ、ガンマ、そして監視対象である白蘭と共に晩餐を開いてもらった。
「あっという間でしたね、絵美さん。もっとお話ししたかったです。」
「話…ですか?」
「はい。女子会というものに憧れてまして。」
「女子会?それは何をするものなんですか?」
「私も詳しくはないのですが、女の子だけで集まって恋バナとかするらしいです。」
「恋バナ……すみませんが、私にはついていけない世界です。」
そこに白蘭が口を挟む。
「絵美ちゃんはザンザス君への思いを語ればいいんじゃないかな?」
「ボスへの?うーん、痺れるような殺気がかっこいいとか?」
「なんかずれてるぞ…」
絵美は素直にザンザスに対する感想を言ったつもりだったが、ガンマは引き気味だった。
「他にかっこいいと思う所はないの?」
「自分以外の全てをカスだと思って見下している目とか、人一倍嫌なことには怒りを覚えるのにそれを溜め込んで爆発させるところとか……信頼している相手には速攻で怒りをぶつけるところもかっこいいと思う。共感とか同情とかの言葉とは無縁な所も。」
「あははは!想像以上に絵美ちゃんってザンザス君が好きなんだね♪」
「そうですね。」
白蘭とユニは笑っている。
ガンマは笑っているが、それは苦笑いだった。
絵美だけが1人頭にハテナを浮かべている。
「好意があるかないかで聞かれたらもちろんあるけど、それは殺し屋としての尊敬の情なんですが…」
絵美がそう言うと白蘭は腹を抱えて笑った。
「あはははははは!いやぁ…もう!本当に可愛いな、絵美ちゃんは!絵美ちゃんがさっきから挙げているのはほとんど、ザンザス君の殺し屋としての側面じゃないじゃん♪」
白蘭の指摘を受けて、絵美は目を見開いて固まった。
「自覚してないのがまた可愛いね♪ユニちゃんもそう思うだろ?」
「はい」
絵美は固まり続けたままだ。
「絵美さんはザンザスさんが大好きなんですね。」
ユニにはっきり言語化されて、絵美は顔が熱くなるのを感じた。
「赤くなっちゃって可愛いなー♪僕も絵美ちゃんの彼氏に立候補しちゃおうかな?」
「白蘭、揶揄うのはほどほどにしろ。」
タチの悪い冗談を白蘭が口にしたことで、ガンマが白蘭を注意したが更に絵美に追い討ちをかけた。
「獄寺絵美、強く尊敬している異性を恋愛対象として見るのは不自然ではないと思うぞ。」
絵美は更に顔を赤くして俯いた。
その言葉は胸にストンと落ちる感覚があった。
絵美は生まれて初めて、恋というものを自覚した。
「経験者は語るってやつかな?」
「黙れ、白蘭!」
ずっと笑顔だったユニの表情が一瞬だけ揺らいだ。
しかしすぐにいつもの笑顔に戻った。
「差し支えなければ絵美さんの恋のお話、もっと詳しく聞いてみたいです。」
「詳しくって言われても……」
絵美は狼狽える。
ユニは1ファミリーのボスであり、元大空の
当然ぞんざいな扱いなどできない。
だが、これ以上この話題を掘り下げられるも嫌だった。
「ザンザスさんとの出会いはどんな感じでしたか?」
「出会い?うーん……初めてボスの殺気を感じた時は直感的にこの人には敵わないと思いました。」
絵美の長所であり欠点でもある点は基本的に思っていることをそのまま口にしてしまう点だろう。
この話題から離れたい思いながらも彼女は質問に対して素直に答えてしまった。
「ザンザスさんは絵美さんに対してどんな感じだったんですか?」
「完全にドカスを見る目でした。私が女ってことも気に食わない様子でした。」
靴を舐めることを要求されたことを思い出したが、流石の絵美もこの質問には忖度して答えた。
「それで何で好きになるんだ?」
ガンマが呆れた顔でそう尋ねた。
「何ででしょうね。目が合った瞬間に私はこの人が私のボスだって思ったんです。」
「!…その感覚はわからないでもない。」
ユニとの出会いを想起したであろうガンマはチラリとユニを見た。
目が合ったユニはより一層笑みを深めた。
「ねえねえ、絵美ちゃん、ザンザス君って夜の方はどうなの?」
ほっこりした雰囲気だったはずなのに、ここで白蘭が爆弾を投下した。
ガンマの顔が引き攣る。
絵美は質問の意味がわからず首を傾げた。
その顔は先程より少し赤味が引いている。
「夜……?」
「僕の予想だとザンザス君は絶倫なんじゃないかなーと思うんだけど、実際どう?」
「絶倫?確かにボスは並外れた能力をお持ちですけど…」
「え、もしかして意味知らない?」
「?」
絵美は頭にハテナを浮かべた。
ユニも同じような様子だ。
「2人共知らなくていい!」
ガンマが叫ぶ。
白蘭は容赦なくその意味を説明した。
「要は性欲ずば抜けてて夜散々付き合わされない?」
意味を理解した絵美はまた顔を赤くした。
ユニも少し頬を染めている。
「そういうことはノーコメントで!失礼ですよ、白蘭!」
「やっぱり凄いんだ♪」
「白蘭ッ!!」
絵美は彼の名を叫ぶ。
「絶対もうあなたの監視なんか引き受けない!」
「えー、つれないなぁ。」
「今のはお前が完全に悪いだろ…」
ガンマはそう突っ込んで溜め息をついた。
この空気をどうにかしようとガンマは話題を変えた。
「そういえば白蘭との修行を見ていたが、絵美は獄寺隼人と同じくダイナマイトを扱うようだな?同じ師に師事していたのか?」
「え?はい…」
急な方向転換に困惑しつつも絵美は頷いた。
「Dr.シャマルに3年ほど見てもらいました。隼人は2年くらいだったはずです。」
「Dr.シャマル!?トライデントモスキートの?」
「はい、その人です。」
「随分なビッグネームに育ててもらったんだな。ボンゴレの関係でか?」
「いえ、私と隼人がそれぞれボンゴレに所属したのはその後の話で、ボンゴレとシャマルは関係ないです。シャマルは2世代前のヴァリアーの勧誘を断っていますし。」
「お前達は最初からボンゴレではないのか?」
「その辺10年後の世界でミルフィオーレは把握してなかったんですか?」
その質問には白蘭が口を挟んだ。
「ん?把握してたよ♪ガンマ君が経歴まで記憶してなかっただけじゃない?」
「確かに過去の経歴は流し読みしていたな。」
「獄寺君は既に滅びてるファミリーのボスの嫡子だったのさ、表向きはね♪」
「表向きって言うと、2人共私生児だったってことか?」
「そうだよ♪その事実を知って獄寺君が城を飛び出したのが6年前。後継者のいなくなった弱小ファミリーの結末はガンマ君ならわかるだろ?」
「………」
「実は未来の僕の記憶によると他の
「殺し屋が私の天職という訳ではなくて?」
完全に顔から赤味が引いて冷静になった絵美は白蘭に素朴な疑問をぶつけた。
「フリーの殺し屋として名を馳せた世界もあったけど、全部成人前には死んでるよ。」
白蘭の回答を受けて、絵美は俯いて考え込んだ。
「……殺し屋が短命なのは別に不自然じゃない。ボスが守ってくれてたんですかね…」
「そうかもね♪」
「実は……
絵美は空いた口が塞がらなかった。
「ボンゴレどころか同盟ファミリーまで?」
「ザンザスさんが動きますから。」
「嫌な予感しかしない……」
顔を引き攣らせる絵美とは反対にユニは微笑んだ。
「色々と大変だと思いますが、一貫してあなたのボスを信じれば良いと思います。」
「わかりました。その言葉、胸に刻んでおきます。ありがとう、ユニさん。」
「どういたしまして」
ユニは太陽のような温かな笑みを見せる。
絵美はそれを見てつられて笑い、今度は真顔で白蘭を見た。
「白蘭もありがとう。」
「ん?僕も?」
「私が知らない内にボスに守られてる可能性に気付けて良かった。」
「知ってどうするの?」
「守られるばかりは嫌だから、もっと強くなります。」
「君がもっと強くなるとそれはそれで末恐ろしいなぁ♪」
全くそんなことは思っていなさそうな顔だった。
そのコメントはスルーすることにした絵美はガンマを見た。
「ガンマさんもありがとうございます。」
「俺もか?」
「あなたと話していたら、私がボスを好きなんだって腑に落ちました。」
「そうか。そいつは良かったな。」
この後は他愛もない話をして解散となった。
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絵美は自分の恋心を自覚した。
しかし、自覚したのはそれだけ。
「(知らない方がかえって良かったかも…)」
絵美はヴァリアー本部へ向かう電車の中、そう考えた。
絵美は、ザンザスはいつか有力な組織をバックに持つ女性と結婚するだろうと思っている。
マフィアは裏社会だが婚姻政策をすることもある。
沢田綱吉であれば好きな女性と結婚できるだろう。
しかし、ザンザスは違う。
2度も9代目を陥れようとし、沢田綱吉に敗れたザンザスがボンゴレ10代目になるのはそう簡単な話ではない。
切れるカードを全て切っても、ザンザスの考える最強のボンゴレを手に入れるという所業がなせるかどうかは怪しい。
だから絵美は常に思っている。
ザンザスにとって自分は踏み台であり、物であり、ザンザスの将来に役立つ女性が現れたら捨てられると。
捨てられなかったとしても、絵美は身を引くつもりだ。
母親と同じ轍を踏みたくないのだから。
「(この思いを伝えちゃいけない。ボスは受け入れてくれると思うけど、受け入れてくれたらいざという時に私がボスから離れられなくなる。面倒くさい女にならないように気を付けないと……)」
絵美はそう思ったが、現実はそんなに甘くはなかった。
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