出向
リング争奪戦、継承式、虹の代理戦争のあった怒涛の年が終わり、年が明け、2月の終わりに差し掛かった頃。
相変わらずザンザスは絵美を気に入っていて、任務がなければ毎晩のように抱いていた。
これが白蘭の言っていた絶倫というやつか、などと絵美は実感していた。
ザンザスが当たり前のように毎日寝室に呼ぶので、絵美はザンザスの寝室で寝泊まりするのが習慣になっていた。
絵美が1週間程度の任務が終わって帰ってきた時、ヴァリアー本部内は妙に浮かれた雰囲気に包まれていた。
「お疲れ様です、レヴィさん。ただいま任務から戻りました。ボスに報告したいのですが、自室にいらっしゃいますか?」
帰ってきて最初に会った幹部がレヴィであったため、絵美はレヴィにザンザスの所在を尋ねた。
「ボスなら女の所に…」
「馬鹿か、テメェはぁ!伝え方ってもんがあんだろうかがぁ!!」
タイミング良く通りがかったスクアーロがレヴィの鳩尾を殴った。
自分以外に女ができたかもしれないという可能性に、絵美は内心動揺しつつも平静を装った。
「ボス、私以外にお気に入りができたんですか?」
「いや………そういうのじゃねぇ。」
胃の中の内容物を吐き出すレヴィに代わり、スクアーロが答える。
「……本命ですか?」
「はあ……どうせいつかはわかることだから話すが、同盟ファミリーの女だぁ。お前とは少し事情が違う。」
スクアーロの観念したかの様子に、絵美は恐れていたことが現実になったのだと実感した。
「そうですか。ボスはその人を娶るつもりですか?」
「アイツの権力強化に使える女だぁ。そのつもりだろーなぁ。」
「そうですか……。では私は夜の方はお役御免ですね。」
「……………絵美、お前には次の任務に行ってもらう。今回は俺からの個人的な依頼だ。」
「スクアーロさんの?」
「ああ。絵美には日本に行って山本武と同じ学校に通ってもらう。あのカスが剣の修行を続けているか監視して鈍ってるようなら鍛えろ。」
絵美は激怒した。
かの暴虐邪智なる鮫を除かねばならぬと。
……とはならず。
絵美は口をあんぐりと開けて絶句した。
まさに宇宙猫状態だ。
しばらく経ってようやく言葉が出てきた。
「私が日本で中学生…?」
「そうだぁ」
「ボスは許可を出したのですか?」
「出した。」
「……ああ、そういうことなんですね。」
理解した途端、絵美は目頭が熱くなるのを感じた。
「部下としてもお役御免なんですね……。かっ消されないだけマシだと思えと……。」
こんなことで泣くなんてみっともないと思いながらも、絵美は涙が溢れるのを抑えることはできなかった。
「絵美……」
珍しくスクアーロがオロオロしていた。
先程までリバースしていたレヴィも少し落ち着いたのか絵美の様子に気付いて、彼女を凝視しながら押し黙っていた。
「(悔しい……ボスが私の恋人じゃないのは知ってるけど……他の女に盗られるなんて…………あはっ、私も嫉妬って感情を持ってたんだ……)」
絵美は泣きながら思わず笑みが漏れそうになった。
それを抑えて気付く。
「(これなら私は愛人にはならない………)」
そして思い出す。
「(ユニさんがその内同盟ファミリーを巻き込む試練が訪れるって言ってた……そして一貫してボスを信じればいいって……………ボスを信じて考えれば、私を遠ざけようとしているのはもしかしてボスなりに私の心を守ろうとしてくれてのこと?遠ざけられるより愛人の方が私には無理だとわかっていて……)」
絵美は乱暴に涙を拭った。
「気を遣ってくれたんですよね、スクアーロさん。すみません、こんなことで動揺して。スクアーロさんの依頼、引き受けます。ボスが私をまた部下として必要としてくれた時に腕が鈍っていてはいけないから。」
絵美は精一杯の笑顔を作ってそう言った。
「……ああ。もちろん、お前はこっちに籍を残す。平たく言やぁ、沢田ファミリーへの出向という扱いだ。」
「わかりました。ボスが戻って来いというまでは沢田綱吉が上司ということですね。」
「命令を聞く必要はねぇが、命を狙われるようなら守ってやれ。アイツをかっ消すのはうちのボスだからなぁ。」
「ふふっ、わかりました。」
「転校の手続きは済ませてある。住む場所はお前の意見を聞いてから決めるつもりでまだ手配してねーがどうする?」
絵美は顎に手を当てしばらく考えた。
「隼人の家に行きます。」
前回酷い別れ方をしたにも関わらず、彼女は兄が受け入れてくれると、そう思った。
それは彼女が愛という感情を取り戻したから、他者からの愛を少しだけ信じられるようになったのだろう。
城でのやり取りを見ているスクアーロは眉をひそめた。
「いいのか?それで。ホテル暮らしって手もあるが。」
「日本の学校のことはよくわからないけれど、ホテル暮らしが一般的でないのはわかります。お姉様に沢田家に連れ込まれないためにもそっちの方が良いかと。」
それを聞いたスクアーロはありありとビアンキに沢田家へ連行される絵美の姿が思い浮かんだ。
絵美の意見に納得した彼は頷いた。
「わかった、ホテルの手配はしねぇ。制服や私服が必要になると思うがそれは経費で出す。領収書は取っておけ。」
絵美はその指示に違和感を覚えた。
ヴァリアーからの正式任務ではないのに、ヴァリアーの財布から必要経費が出るのはおかしいからだ。
もし出るのならば絵美の知らない事実が他にもあるはずだ。
「経費で落とせるのですか?スクアーロさんの個人的な依頼なんですよね?」
「チッ……気付いたか。絵美をしばらく遠ざけろと言ったのはボスさんだ。当然ヴァリアーから金は出る。生活費や給料もな。しばらくの生活費は出発前に渡す。それ以降はお前の口座に振り込むが、日本の銀行で口座を作っとけ。円で渡さねぇと不便だろぉ?」
「そうですね……了解しました。では日本行く支度をしてきます。あ、さっきまでよ任務の報告が先ですかね。スクアーロさんにすれば良いですか?」
「後で報告書にまとめて俺の部屋に持って来い。先に日本に行く準備をしろ。明日の便だからなぁ。」
「わかりました。」
絵美は足早に自室へと向かった。
「ボスさんよぉ、あんな良い女泣かせて本当に良かったのかぁ?」
絵美の背中を見つめながら、スクアーロは1人ごちた。
獄寺隼人は驚愕した。
バイトが終わって家に戻ったら、妹が部屋の前で座り込みをしていたのだから。
「絵美?お前何でここに…!?」
「隼人が言ったんじゃない、ヴァリアー辞めて一緒に日本で暮らせって。」
「いや、言ったけどよぉ……9代目の説得にも応じなかったって聞いたから……」
「まあ、実際のところヴァリアーは辞めてないの。沢田ファミリーへの出向って形ね。」
「出向?」
「詳しいことは中で話さない?流石に寒くて。」
「ああ、そうだな。」
隼人は家の鍵を取り出して鍵を開錠し扉を開けた。
絵美は彼の好意に甘え先に部屋に入った。
だいたい予想していたような部屋だった。
ピアノが置いてあるのは意外だったが。
「ちょくちょくピアノ弾いてるってこういうことだったの……」
「ああ、まあな。お前も弾きたかったら好きに弾けばいい。この部屋は防音だから問題はねぇ。」
「ありがとう。気が向いたらね。」
「お茶で良いか?」
「できれば温かいので。」
隼人は頷いて給湯器に水を入れ、スイッチを押した。
「で、何で出向になった?」
シンクに腰をつけた状態で隼人は尋ねた。
「うーん、思ったんだけど、やっぱりそこら辺の事情は沢田綱吉とお姉様がいる時に説明していい?」
「はあ?何でだよ?」
「1人ずつ説明すると効率悪いじゃん。しばらく上司になる沢田綱吉とお姉様への説明は必須でしょ?」
「まあ……そうだな。てか、10代目が上司になるってんならいい加減呼び方変えろよ。呼び捨ては失礼だろうが。」
「確かにそうだね。じゃあ、沢田君で。」
「君 付けかよ。」
「10代目とかボスとかは死んでも呼ばない。同い年だし君でいいでしょ。あの性格じゃ絶対気にしない。」
「10代目は寛大なお方だからな。」
隼人は自慢げにそう言った。
給湯器が終了の音を鳴らす。
隼人はインスタントのお茶を淹れて、絵美に出した。
絵美がお茶を啜っていると、隼人が尋ねた。
「出向の期間は決まってるのか?」
「特には決まってない。明日から並盛中に通う。」
「明日から!?随分急だな。」
「私もそう思う。とりあえず制服は買ってきた。」
絵美は持ってきた荷物のうち、紙袋を見やる。
「明日の放課後は沢田君達への事情説明で潰れるだろうから……明後日買い物に付き合ってくれない?」
「買い物?」
「ヴァリアーって基本隊服だから私服そんなに持ってないの。」
「それは姉貴に頼んだ方がいいんじゃねぇか?俺は女の服のことなんかわかんねーし。」
「確かに。そうする。」
隼人は先程から疑問に思っていることを尋ねた。
「つか、お前こんなに急に越してきて家はどーすんだよ?」
「え?住んじゃダメなの?」
あっけらかんと言い放つ絵美に隼人は呆れた。
「一応俺も年頃の男だぞ?」
「妹相手に欲情なんかしないでしょ?ホテル暮らしも提案されたけど、そんなことお姉様に知られたら沢田家に引っ張られそうじゃない?」
「確かに……」
「だからここしかないかなって。他に頼る相手はいないし。あ、もちろん、家賃光熱費食費諸々折半するから。」
その言葉を聞いて隼人の目がきらりと光る。
「わかった。好きに住め。」
先程の呆れた態度とは打って変わって、彼は嬉しそうにそう言った。
目が完全に¥になっていて、想像以上に彼がお金に苦労しているのだと絵美は理解した。
かくして絵美は日本での住処をゲットしたのであった。
相変わらずザンザスは絵美を気に入っていて、任務がなければ毎晩のように抱いていた。
これが白蘭の言っていた絶倫というやつか、などと絵美は実感していた。
ザンザスが当たり前のように毎日寝室に呼ぶので、絵美はザンザスの寝室で寝泊まりするのが習慣になっていた。
絵美が1週間程度の任務が終わって帰ってきた時、ヴァリアー本部内は妙に浮かれた雰囲気に包まれていた。
「お疲れ様です、レヴィさん。ただいま任務から戻りました。ボスに報告したいのですが、自室にいらっしゃいますか?」
帰ってきて最初に会った幹部がレヴィであったため、絵美はレヴィにザンザスの所在を尋ねた。
「ボスなら女の所に…」
「馬鹿か、テメェはぁ!伝え方ってもんがあんだろうかがぁ!!」
タイミング良く通りがかったスクアーロがレヴィの鳩尾を殴った。
自分以外に女ができたかもしれないという可能性に、絵美は内心動揺しつつも平静を装った。
「ボス、私以外にお気に入りができたんですか?」
「いや………そういうのじゃねぇ。」
胃の中の内容物を吐き出すレヴィに代わり、スクアーロが答える。
「……本命ですか?」
「はあ……どうせいつかはわかることだから話すが、同盟ファミリーの女だぁ。お前とは少し事情が違う。」
スクアーロの観念したかの様子に、絵美は恐れていたことが現実になったのだと実感した。
「そうですか。ボスはその人を娶るつもりですか?」
「アイツの権力強化に使える女だぁ。そのつもりだろーなぁ。」
「そうですか……。では私は夜の方はお役御免ですね。」
「……………絵美、お前には次の任務に行ってもらう。今回は俺からの個人的な依頼だ。」
「スクアーロさんの?」
「ああ。絵美には日本に行って山本武と同じ学校に通ってもらう。あのカスが剣の修行を続けているか監視して鈍ってるようなら鍛えろ。」
絵美は激怒した。
かの暴虐邪智なる鮫を除かねばならぬと。
……とはならず。
絵美は口をあんぐりと開けて絶句した。
まさに宇宙猫状態だ。
しばらく経ってようやく言葉が出てきた。
「私が日本で中学生…?」
「そうだぁ」
「ボスは許可を出したのですか?」
「出した。」
「……ああ、そういうことなんですね。」
理解した途端、絵美は目頭が熱くなるのを感じた。
「部下としてもお役御免なんですね……。かっ消されないだけマシだと思えと……。」
こんなことで泣くなんてみっともないと思いながらも、絵美は涙が溢れるのを抑えることはできなかった。
「絵美……」
珍しくスクアーロがオロオロしていた。
先程までリバースしていたレヴィも少し落ち着いたのか絵美の様子に気付いて、彼女を凝視しながら押し黙っていた。
「(悔しい……ボスが私の恋人じゃないのは知ってるけど……他の女に盗られるなんて…………あはっ、私も嫉妬って感情を持ってたんだ……)」
絵美は泣きながら思わず笑みが漏れそうになった。
それを抑えて気付く。
「(これなら私は愛人にはならない………)」
そして思い出す。
「(ユニさんがその内同盟ファミリーを巻き込む試練が訪れるって言ってた……そして一貫してボスを信じればいいって……………ボスを信じて考えれば、私を遠ざけようとしているのはもしかしてボスなりに私の心を守ろうとしてくれてのこと?遠ざけられるより愛人の方が私には無理だとわかっていて……)」
絵美は乱暴に涙を拭った。
「気を遣ってくれたんですよね、スクアーロさん。すみません、こんなことで動揺して。スクアーロさんの依頼、引き受けます。ボスが私をまた部下として必要としてくれた時に腕が鈍っていてはいけないから。」
絵美は精一杯の笑顔を作ってそう言った。
「……ああ。もちろん、お前はこっちに籍を残す。平たく言やぁ、沢田ファミリーへの出向という扱いだ。」
「わかりました。ボスが戻って来いというまでは沢田綱吉が上司ということですね。」
「命令を聞く必要はねぇが、命を狙われるようなら守ってやれ。アイツをかっ消すのはうちのボスだからなぁ。」
「ふふっ、わかりました。」
「転校の手続きは済ませてある。住む場所はお前の意見を聞いてから決めるつもりでまだ手配してねーがどうする?」
絵美は顎に手を当てしばらく考えた。
「隼人の家に行きます。」
前回酷い別れ方をしたにも関わらず、彼女は兄が受け入れてくれると、そう思った。
それは彼女が愛という感情を取り戻したから、他者からの愛を少しだけ信じられるようになったのだろう。
城でのやり取りを見ているスクアーロは眉をひそめた。
「いいのか?それで。ホテル暮らしって手もあるが。」
「日本の学校のことはよくわからないけれど、ホテル暮らしが一般的でないのはわかります。お姉様に沢田家に連れ込まれないためにもそっちの方が良いかと。」
それを聞いたスクアーロはありありとビアンキに沢田家へ連行される絵美の姿が思い浮かんだ。
絵美の意見に納得した彼は頷いた。
「わかった、ホテルの手配はしねぇ。制服や私服が必要になると思うがそれは経費で出す。領収書は取っておけ。」
絵美はその指示に違和感を覚えた。
ヴァリアーからの正式任務ではないのに、ヴァリアーの財布から必要経費が出るのはおかしいからだ。
もし出るのならば絵美の知らない事実が他にもあるはずだ。
「経費で落とせるのですか?スクアーロさんの個人的な依頼なんですよね?」
「チッ……気付いたか。絵美をしばらく遠ざけろと言ったのはボスさんだ。当然ヴァリアーから金は出る。生活費や給料もな。しばらくの生活費は出発前に渡す。それ以降はお前の口座に振り込むが、日本の銀行で口座を作っとけ。円で渡さねぇと不便だろぉ?」
「そうですね……了解しました。では日本行く支度をしてきます。あ、さっきまでよ任務の報告が先ですかね。スクアーロさんにすれば良いですか?」
「後で報告書にまとめて俺の部屋に持って来い。先に日本に行く準備をしろ。明日の便だからなぁ。」
「わかりました。」
絵美は足早に自室へと向かった。
「ボスさんよぉ、あんな良い女泣かせて本当に良かったのかぁ?」
絵美の背中を見つめながら、スクアーロは1人ごちた。
× × × × × × × × × × ×
獄寺隼人は驚愕した。
バイトが終わって家に戻ったら、妹が部屋の前で座り込みをしていたのだから。
「絵美?お前何でここに…!?」
「隼人が言ったんじゃない、ヴァリアー辞めて一緒に日本で暮らせって。」
「いや、言ったけどよぉ……9代目の説得にも応じなかったって聞いたから……」
「まあ、実際のところヴァリアーは辞めてないの。沢田ファミリーへの出向って形ね。」
「出向?」
「詳しいことは中で話さない?流石に寒くて。」
「ああ、そうだな。」
隼人は家の鍵を取り出して鍵を開錠し扉を開けた。
絵美は彼の好意に甘え先に部屋に入った。
だいたい予想していたような部屋だった。
ピアノが置いてあるのは意外だったが。
「ちょくちょくピアノ弾いてるってこういうことだったの……」
「ああ、まあな。お前も弾きたかったら好きに弾けばいい。この部屋は防音だから問題はねぇ。」
「ありがとう。気が向いたらね。」
「お茶で良いか?」
「できれば温かいので。」
隼人は頷いて給湯器に水を入れ、スイッチを押した。
「で、何で出向になった?」
シンクに腰をつけた状態で隼人は尋ねた。
「うーん、思ったんだけど、やっぱりそこら辺の事情は沢田綱吉とお姉様がいる時に説明していい?」
「はあ?何でだよ?」
「1人ずつ説明すると効率悪いじゃん。しばらく上司になる沢田綱吉とお姉様への説明は必須でしょ?」
「まあ……そうだな。てか、10代目が上司になるってんならいい加減呼び方変えろよ。呼び捨ては失礼だろうが。」
「確かにそうだね。じゃあ、沢田君で。」
「
「10代目とかボスとかは死んでも呼ばない。同い年だし君でいいでしょ。あの性格じゃ絶対気にしない。」
「10代目は寛大なお方だからな。」
隼人は自慢げにそう言った。
給湯器が終了の音を鳴らす。
隼人はインスタントのお茶を淹れて、絵美に出した。
絵美がお茶を啜っていると、隼人が尋ねた。
「出向の期間は決まってるのか?」
「特には決まってない。明日から並盛中に通う。」
「明日から!?随分急だな。」
「私もそう思う。とりあえず制服は買ってきた。」
絵美は持ってきた荷物のうち、紙袋を見やる。
「明日の放課後は沢田君達への事情説明で潰れるだろうから……明後日買い物に付き合ってくれない?」
「買い物?」
「ヴァリアーって基本隊服だから私服そんなに持ってないの。」
「それは姉貴に頼んだ方がいいんじゃねぇか?俺は女の服のことなんかわかんねーし。」
「確かに。そうする。」
隼人は先程から疑問に思っていることを尋ねた。
「つか、お前こんなに急に越してきて家はどーすんだよ?」
「え?住んじゃダメなの?」
あっけらかんと言い放つ絵美に隼人は呆れた。
「一応俺も年頃の男だぞ?」
「妹相手に欲情なんかしないでしょ?ホテル暮らしも提案されたけど、そんなことお姉様に知られたら沢田家に引っ張られそうじゃない?」
「確かに……」
「だからここしかないかなって。他に頼る相手はいないし。あ、もちろん、家賃光熱費食費諸々折半するから。」
その言葉を聞いて隼人の目がきらりと光る。
「わかった。好きに住め。」
先程の呆れた態度とは打って変わって、彼は嬉しそうにそう言った。
目が完全に¥になっていて、想像以上に彼がお金に苦労しているのだと絵美は理解した。
かくして絵美は日本での住処をゲットしたのであった。
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