転入
並盛中学校2年A組のホームルームは転校生の紹介から始まった。
「転校生を紹介するぞ。」
担任のその一言にクラスがざわつく。
1人だけそれが誰かを知っている隼人は、珍しく寝坊せずにホームルームに参加していた。
ドアを開けて入ってきた絵美によりクラスがざわついた。
そして驚愕している者が3人。
「ええ!?絵美ちゃん!?」
「!」
「ヴァリアーの人……」
綱吉、山本、クロームの3人だ。
「なんだ沢田、知り合いか。まあそれもおかしくないか。」
担任は勝手に納得した。
「獄寺絵美です。宜しくお願いします。」
絵美は軽く頭を下げた。
「獄寺さんは……っていうと紛らわしいな。絵美さんは獄寺の双子の妹だそうだ。家庭の事情でイタリアから兄のいる日本へはるばる来たらしい。皆仲良くするように。」
担任が簡単な紹介をして、絵美に席につくよう促した。
絵美は綱吉の横を通り過ぎて1番後ろの通路側の席に座った。
1限目の休み時間、絵美の予測通り綱吉が問い詰めにくるかと思いきや、クラスメートとなる男達が絵美に詰め寄った。
「ねえ、絵美ちゃんってイタリア語喋れるの?」
「うん、イタリア語は母国語だから。」
実のところ絵美はイタリア語以外にも日本語、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語が話せる。
一応ドイツ語と韓国語については勉強したが、ドイツ語はちょっと単語が怪しく、韓国語は発音が少し苦手である。
しかしそこまでの情報は話さない。
「すげー、頭いいんだ!」
「英語は!?同じヨーロッパの言葉だし!」
「うん、喋れるよ。」
「「「おおっ!」」」
「趣味は?」
「趣味?うーん……料理とか。」
「「「「「おおおおおっ!」」」」」
その料理がポイズンクッキングであることを知らない男子達は歓喜した。
その様子を自席から見ていた隼人は青筋を立てながら踵で机を叩いた。
バンッと大きな音が鳴り、教室がシーンと静まり返る。
皆がその音の発生源を見た。
「テメーら人の妹に手ェ出したらタダじゃおかねぇからな。」
その一言で男子達は散った。
代わりに絵美は女の子に囲まれることとなったが。
綱吉は恐る恐る小声で隼人に話しかけた。
「獄寺君、絵美ちゃん何で急に日本へ?ビアンキから聞いた話だと説得失敗したって……」
「何か事情があるみたいっす。10代目にお話するつもりはあるようですが、姉貴も含めて皆が集まってる時に説明したいらしいので、今日の放課後10代目のお屋敷にお邪魔していいすか?」
「あれのどこが屋敷に見えるの……まあ、うちに来るのはいいよ。ビアンキも今日は家にいるんじゃないかな?ボンゴレ絡みの話だし、お兄さんとクロームと山本も呼ぶか。」
「そっすね。」
絵美が目論んだ通り、放課後の時間まとめて説明する方向で話が進んだ。
綱吉の部屋に本日の主役の絵美と綱吉、リボーン、ビアンキ、隼人、山本、了平、クロームが集まった。
流石にこの人数では狭いが、絵美はオフィスチェアに座り、綱吉と山本がベッドに腰掛け、リボーンがビアンキの膝に乗り、他のメンバーがローテーブルを囲うことでなんとか皆座ることができた。
「そんな大した話じゃないんだけど、まさか守護者がこんなに集まるなんて……」
「一応ボンゴレに関わる話かと思って集めちゃったんだけど……いや、本当はボンゴレには関わりたくないけど…」
そう口にする綱吉だが、後半は小声だった。
「まあ、いいや。今回私が引き受けた任務は山本武に修行をサボらせるな、サボるようなら私が相手になれっていうものなんです。スクアーロさんからの個人的な依頼です。」
「えっ、俺?」
「んなぁ!?あの人山本を剣の道に引き摺り込むためにそんなことまでするの!?」
「ははっ、スクアーロらしいっちゃスクアーロらしいな。」
「極限に良い話ではないか!良かったな、山本!」
突っ込みを入れる綱吉に、明るく笑う山本と了平だが、ビアンキと獄寺はそんな雰囲気ではない。
彼女がどれだけ自分達のもとへ来るのを嫌がっていたか知っているからだ。
「個人的な頼みなら断ることもできたはずだ。なぜ引き受けた?」
リボーンが切り込んだ。
絵美は寂しそうに笑う。
「任務自体はスクアーロさんからの依頼ですが、ボスが私を遠ざけろとスクアーロさんに命令したらしいんです。」
「何でそんな命令を?」
「………ボスは今結婚を検討している女性がいるみたいです。」
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
「私は……邪魔なようです……」
自分で言っていて悲しくなってきた絵美は目に涙を浮かべた。
「どこから突っ込めばいいか……ザンザスって絵美ちゃんのこと好きなんじゃ?何で他の人と結婚なんて…」
動揺しながら綱吉が尋ねてくる。
結婚の目的は恐らく権力基盤の強化だが、その目的をはっきりと伝えられた訳ではない絵美は最後の質問は有耶無耶に回答することにした。
「ボスは私のことを自分の物だと思っています。でもそれはボスが私の彼氏って意味ではないです。ボスにとって私は、好きな時に呼び出して嫌な時に遠ざけて良い存在なんです。結婚の理由についてははっきりと聞いた訳ではないのでなんとも……」
「アイツはいつかぜってー絵美を泣かすと思っていたが、本当にやりやがって…!次会ったらぶっ飛ばす!!」
「ええ、私も手伝うわ、隼人。」
立ち上がって怒りを見せる隼人にビアンキが同調した。
「別に泣いてないんだけど…」
「目に涙が浮かんでるわよ。」
絵美はビアンキの指摘を受けて、目を擦った。
「目にゴミが入っただけ!そんなことしなくて大丈夫。結婚の理由はわからなくても遠ざけた理由は察しがつくから。」
「遠ざけた理由?用済みってか?」
言葉選びが酷い隼人である。
「ちょっとやめて、その言い方。いや、確かに用済みは用済みだろうけど……私はお母様のようにはなりたくないから…」
「!」
「きっとボスは自分が特定の誰かを決めたら私がお側にいられないってわかってたから、遠ざけたんだと思う。きっと私の気持ちに配慮してくれたんだ。」
「けどよ、お前に手ェ出しときながら振った時点で俺は許せねぇ!」
「殺し以外もボスに従うことは私が選んだことだから介入しないで。とにかく……しばらくお世話になります。日本にいる間は沢田君の部下という扱いでお願いします。」
絵美は強引に話をまとめた。
「……絵美の歓迎会でもやるか。」
リボーンがポツリとそう言うと、皆が同意する。
「そうだな!極限に楽しませてやるぞ!」
「また優勝者には景品とかあるんすか?」
「ハハッ、いいな!今回は何するんだ?」
「京子ちゃんとハルちゃんも誘いたい…」
そこにビアンキが口を挟んだ。
「歓迎会の前に少しだけ絵美と2人で話させてもらってもいいかしら?」
「あ、そうだよね、姉妹水入らずで話したいことあるよね。1階で歓迎会の準備しておくから、俺の部屋使って。」
綱吉がそう言うと他の面々は降りていった。
2人きりになった部屋で、ビアンキが先に口を開いた。
「絵美、城でのことはごめんなさい。あなたの優しさを甘く見ていたわ。」
「お姉様が謝る必要は………」
「あなたに私の愛が重いことは重々承知しているけれど、それでも絵美は私の愛する妹なの。日本 に来てくれて嬉しいわ。」
「お姉様はどうして……受け入れてもらえないとわかっていながら、そんなに真っ直ぐ愛をぶつけられるのですか?」
絵美は前々から感じていた疑問をぶつけてみた。
ビアンキは微笑んで答える。
「それが愛だからよ。どんなに相手に受け入れてもらえなくても、好きだから相手のために何かしたいと強く思うことが。」
「………私にもお姉様程の勇気があれば………」
絵美は目に涙を溜めた。
「辛い思いをしているのね。」
ビアンキは絵美を抱き締めた。
絵美の後頭部をゆっくり撫でながら穏やかな口調で話す。
「泣いていいのよ。その涙はきっとあなたを強くするわ。」
「ぅ……うわああああああん!」
絵美は何年ぶりかわからないがビアンキの胸の中で大声をあげて泣いた。
しばらくして絵美は泣き止み、ビアンキから体を離した。
「お姉様、ごめんなさい。城でのことを謝るべきは私です。」
「いいのよ、そんなことは。手紙は絵美をかえって苦しませると少し考えればわかることなのに、焦ってあなたを傷つけてしまったわ。でも本音が少し聞けたのは良かった。」
「本音?」
「ずっとお母様と私の気持ちを考えてくれていたんでしょう?それがあなたを苦しめていたことは姉として複雑だけど、ありがとう。」
絵美はまた涙が頬を伝っていくのを感じた。
「お姉様…………」
「1つだけ教えて欲しいの。あの日、私達と別れた後どこへ行ったの?」
あの日が一家離散を余儀なくされ、その原因となったギアーゼィの追手から逃げていた日のことを指していると察した絵美は答えた。
「囮役はちゃんと果たしました。でもお姉様を待っている時にギアーゼィに捕まってしまいました。幼いから暗殺者教育を施せば使える駒になるはずだと……1年間訓練に耐えて逃げました。その後は色んなマフィアを転々としたけれど、ロリコン親父の相手をさせようとしたり、私を人体実験に使用しようとしたり、果ては臓器提供元としか見てなかったり………同じ対等な人間としては見てもらえなくて、やっと辿り着いたのがヴァリアーだったんです。あそこでは私を1人の殺し屋として見てくれる人達がいた。嫌々やっていた殺しが私の仕事に、誇りになった。ボスは私を女として見てはいるけど、殺し屋としても評価してくれます。だから離れたくなかったんです。」
「そう……たくさん辛い思いをして、それを乗り越えてきたのね。」
「はい、たくさん……たくさん乗り越えてきました。」
「ザンザスのことは……やっぱり愛しているのね?」
絵美は黙って頷いた。
「ボスに伝えるつもりはないので他言無用でお願いします。」
「わかったわ。私は一旦下の様子を見に行ってくるわね。少しここで待っていて。」
「はい、わかりました。」
絵美が頷いたのを確認してビアンキは下に降りて行った。
絵美はベッドに寄りかかって座った。
「(ボス……会いたい……………)」
自分でも思っていた以上にザンザスを愛していることを自覚した絵美は、少しだけまた泣いた。
「転校生を紹介するぞ。」
担任のその一言にクラスがざわつく。
1人だけそれが誰かを知っている隼人は、珍しく寝坊せずにホームルームに参加していた。
ドアを開けて入ってきた絵美によりクラスがざわついた。
そして驚愕している者が3人。
「ええ!?絵美ちゃん!?」
「!」
「ヴァリアーの人……」
綱吉、山本、クロームの3人だ。
「なんだ沢田、知り合いか。まあそれもおかしくないか。」
担任は勝手に納得した。
「獄寺絵美です。宜しくお願いします。」
絵美は軽く頭を下げた。
「獄寺さんは……っていうと紛らわしいな。絵美さんは獄寺の双子の妹だそうだ。家庭の事情でイタリアから兄のいる日本へはるばる来たらしい。皆仲良くするように。」
担任が簡単な紹介をして、絵美に席につくよう促した。
絵美は綱吉の横を通り過ぎて1番後ろの通路側の席に座った。
× × × × × × × × × × ×
1限目の休み時間、絵美の予測通り綱吉が問い詰めにくるかと思いきや、クラスメートとなる男達が絵美に詰め寄った。
「ねえ、絵美ちゃんってイタリア語喋れるの?」
「うん、イタリア語は母国語だから。」
実のところ絵美はイタリア語以外にも日本語、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語が話せる。
一応ドイツ語と韓国語については勉強したが、ドイツ語はちょっと単語が怪しく、韓国語は発音が少し苦手である。
しかしそこまでの情報は話さない。
「すげー、頭いいんだ!」
「英語は!?同じヨーロッパの言葉だし!」
「うん、喋れるよ。」
「「「おおっ!」」」
「趣味は?」
「趣味?うーん……料理とか。」
「「「「「おおおおおっ!」」」」」
その料理がポイズンクッキングであることを知らない男子達は歓喜した。
その様子を自席から見ていた隼人は青筋を立てながら踵で机を叩いた。
バンッと大きな音が鳴り、教室がシーンと静まり返る。
皆がその音の発生源を見た。
「テメーら人の妹に手ェ出したらタダじゃおかねぇからな。」
その一言で男子達は散った。
代わりに絵美は女の子に囲まれることとなったが。
綱吉は恐る恐る小声で隼人に話しかけた。
「獄寺君、絵美ちゃん何で急に日本へ?ビアンキから聞いた話だと説得失敗したって……」
「何か事情があるみたいっす。10代目にお話するつもりはあるようですが、姉貴も含めて皆が集まってる時に説明したいらしいので、今日の放課後10代目のお屋敷にお邪魔していいすか?」
「あれのどこが屋敷に見えるの……まあ、うちに来るのはいいよ。ビアンキも今日は家にいるんじゃないかな?ボンゴレ絡みの話だし、お兄さんとクロームと山本も呼ぶか。」
「そっすね。」
絵美が目論んだ通り、放課後の時間まとめて説明する方向で話が進んだ。
× × × × × × × × × × ×
綱吉の部屋に本日の主役の絵美と綱吉、リボーン、ビアンキ、隼人、山本、了平、クロームが集まった。
流石にこの人数では狭いが、絵美はオフィスチェアに座り、綱吉と山本がベッドに腰掛け、リボーンがビアンキの膝に乗り、他のメンバーがローテーブルを囲うことでなんとか皆座ることができた。
「そんな大した話じゃないんだけど、まさか守護者がこんなに集まるなんて……」
「一応ボンゴレに関わる話かと思って集めちゃったんだけど……いや、本当はボンゴレには関わりたくないけど…」
そう口にする綱吉だが、後半は小声だった。
「まあ、いいや。今回私が引き受けた任務は山本武に修行をサボらせるな、サボるようなら私が相手になれっていうものなんです。スクアーロさんからの個人的な依頼です。」
「えっ、俺?」
「んなぁ!?あの人山本を剣の道に引き摺り込むためにそんなことまでするの!?」
「ははっ、スクアーロらしいっちゃスクアーロらしいな。」
「極限に良い話ではないか!良かったな、山本!」
突っ込みを入れる綱吉に、明るく笑う山本と了平だが、ビアンキと獄寺はそんな雰囲気ではない。
彼女がどれだけ自分達のもとへ来るのを嫌がっていたか知っているからだ。
「個人的な頼みなら断ることもできたはずだ。なぜ引き受けた?」
リボーンが切り込んだ。
絵美は寂しそうに笑う。
「任務自体はスクアーロさんからの依頼ですが、ボスが私を遠ざけろとスクアーロさんに命令したらしいんです。」
「何でそんな命令を?」
「………ボスは今結婚を検討している女性がいるみたいです。」
「「「「「「ええっ!?」」」」」」
「私は……邪魔なようです……」
自分で言っていて悲しくなってきた絵美は目に涙を浮かべた。
「どこから突っ込めばいいか……ザンザスって絵美ちゃんのこと好きなんじゃ?何で他の人と結婚なんて…」
動揺しながら綱吉が尋ねてくる。
結婚の目的は恐らく権力基盤の強化だが、その目的をはっきりと伝えられた訳ではない絵美は最後の質問は有耶無耶に回答することにした。
「ボスは私のことを自分の物だと思っています。でもそれはボスが私の彼氏って意味ではないです。ボスにとって私は、好きな時に呼び出して嫌な時に遠ざけて良い存在なんです。結婚の理由についてははっきりと聞いた訳ではないのでなんとも……」
「アイツはいつかぜってー絵美を泣かすと思っていたが、本当にやりやがって…!次会ったらぶっ飛ばす!!」
「ええ、私も手伝うわ、隼人。」
立ち上がって怒りを見せる隼人にビアンキが同調した。
「別に泣いてないんだけど…」
「目に涙が浮かんでるわよ。」
絵美はビアンキの指摘を受けて、目を擦った。
「目にゴミが入っただけ!そんなことしなくて大丈夫。結婚の理由はわからなくても遠ざけた理由は察しがつくから。」
「遠ざけた理由?用済みってか?」
言葉選びが酷い隼人である。
「ちょっとやめて、その言い方。いや、確かに用済みは用済みだろうけど……私はお母様のようにはなりたくないから…」
「!」
「きっとボスは自分が特定の誰かを決めたら私がお側にいられないってわかってたから、遠ざけたんだと思う。きっと私の気持ちに配慮してくれたんだ。」
「けどよ、お前に手ェ出しときながら振った時点で俺は許せねぇ!」
「殺し以外もボスに従うことは私が選んだことだから介入しないで。とにかく……しばらくお世話になります。日本にいる間は沢田君の部下という扱いでお願いします。」
絵美は強引に話をまとめた。
「……絵美の歓迎会でもやるか。」
リボーンがポツリとそう言うと、皆が同意する。
「そうだな!極限に楽しませてやるぞ!」
「また優勝者には景品とかあるんすか?」
「ハハッ、いいな!今回は何するんだ?」
「京子ちゃんとハルちゃんも誘いたい…」
そこにビアンキが口を挟んだ。
「歓迎会の前に少しだけ絵美と2人で話させてもらってもいいかしら?」
「あ、そうだよね、姉妹水入らずで話したいことあるよね。1階で歓迎会の準備しておくから、俺の部屋使って。」
綱吉がそう言うと他の面々は降りていった。
2人きりになった部屋で、ビアンキが先に口を開いた。
「絵美、城でのことはごめんなさい。あなたの優しさを甘く見ていたわ。」
「お姉様が謝る必要は………」
「あなたに私の愛が重いことは重々承知しているけれど、それでも絵美は私の愛する妹なの。
「お姉様はどうして……受け入れてもらえないとわかっていながら、そんなに真っ直ぐ愛をぶつけられるのですか?」
絵美は前々から感じていた疑問をぶつけてみた。
ビアンキは微笑んで答える。
「それが愛だからよ。どんなに相手に受け入れてもらえなくても、好きだから相手のために何かしたいと強く思うことが。」
「………私にもお姉様程の勇気があれば………」
絵美は目に涙を溜めた。
「辛い思いをしているのね。」
ビアンキは絵美を抱き締めた。
絵美の後頭部をゆっくり撫でながら穏やかな口調で話す。
「泣いていいのよ。その涙はきっとあなたを強くするわ。」
「ぅ……うわああああああん!」
絵美は何年ぶりかわからないがビアンキの胸の中で大声をあげて泣いた。
しばらくして絵美は泣き止み、ビアンキから体を離した。
「お姉様、ごめんなさい。城でのことを謝るべきは私です。」
「いいのよ、そんなことは。手紙は絵美をかえって苦しませると少し考えればわかることなのに、焦ってあなたを傷つけてしまったわ。でも本音が少し聞けたのは良かった。」
「本音?」
「ずっとお母様と私の気持ちを考えてくれていたんでしょう?それがあなたを苦しめていたことは姉として複雑だけど、ありがとう。」
絵美はまた涙が頬を伝っていくのを感じた。
「お姉様…………」
「1つだけ教えて欲しいの。あの日、私達と別れた後どこへ行ったの?」
あの日が一家離散を余儀なくされ、その原因となったギアーゼィの追手から逃げていた日のことを指していると察した絵美は答えた。
「囮役はちゃんと果たしました。でもお姉様を待っている時にギアーゼィに捕まってしまいました。幼いから暗殺者教育を施せば使える駒になるはずだと……1年間訓練に耐えて逃げました。その後は色んなマフィアを転々としたけれど、ロリコン親父の相手をさせようとしたり、私を人体実験に使用しようとしたり、果ては臓器提供元としか見てなかったり………同じ対等な人間としては見てもらえなくて、やっと辿り着いたのがヴァリアーだったんです。あそこでは私を1人の殺し屋として見てくれる人達がいた。嫌々やっていた殺しが私の仕事に、誇りになった。ボスは私を女として見てはいるけど、殺し屋としても評価してくれます。だから離れたくなかったんです。」
「そう……たくさん辛い思いをして、それを乗り越えてきたのね。」
「はい、たくさん……たくさん乗り越えてきました。」
「ザンザスのことは……やっぱり愛しているのね?」
絵美は黙って頷いた。
「ボスに伝えるつもりはないので他言無用でお願いします。」
「わかったわ。私は一旦下の様子を見に行ってくるわね。少しここで待っていて。」
「はい、わかりました。」
絵美が頷いたのを確認してビアンキは下に降りて行った。
絵美はベッドに寄りかかって座った。
「(ボス……会いたい……………)」
自分でも思っていた以上にザンザスを愛していることを自覚した絵美は、少しだけまた泣いた。
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