パーティーの参加可否

イタリア、ヴァリアー本部にて。
スクアーロはザンザスの前で部下が送ってきた報告書を掻い摘んで読み上げていた。

「初日に獄寺と合流、2日目に沢田の家で歓迎会、3日目に姉と女友達2人とショッピング、4日目に山本武と剣の打合い、5日目に沢田を狙った殺し屋を返り討ち、6日目は山本武の野球応援、7日目は笹川の妹とバレエ鑑賞…………アイツの適応力の高さは知ってたっちゃ知ってたが、随分と楽しそうにしてるなぁ、ボスさんよぉ。案外すぐにテメーのこと忘れちまうかもしれねーぜぇ?」

スクアーロが挑発するようにそう言うと、ウイスキーが入ったグラスをザンザスはスクアーロに投げつけた。
それを予期していたスクアーロは軽々避けたが、その後にウイスキーのボトルが飛んできて、それを避けきれず肩に衝撃が走った。

「ってぇなぁ!!せっかく人が報告してやってるってのによぉ!!」
「るせぇ。」

スクアーロをやり返そうとしたが、ザンザスの睨みに動きを止め、溜め息をついた。

「……ザンザス、テメー本当にこれで良いのか?」
「あ?」
「楽しそうにはやってるが、2日目には会話の内容はわからねぇが姉のもとで号泣してたって報告もある。」
「だから何だ?」
「う゛お゛ぉい!とぼけんなぁ。絵美はお前を思って泣いてたんじゃねぇのか?」
「別にいいだろうが。アイツは俺の女だ。俺が泣かして何が悪い?」

ザンザスのその発言にスクアーロはドン引いた。

「……お前に惚れられた絵美に同情するぜ。」

思わず本音が漏れ、再度制裁を喰らうスクアーロであった。

× × × × × × × × × × ×

少し暖かくなり桜の木に蕾がなり始めた3月の中旬、絵美と獄寺はリボーンに呼び出され、沢田家を訪れていた。
どうやら山本、了平、クロームも呼び出されていたらしく、彼らは先に綱吉の部屋で待機していた。

「今日お前達を呼んだのは来月の9代目の誕生日パーティーの件について説明するためだぞ。」

リボーンは早速話題を切り出した。

「誕生日パーティー?」
「9代目の?」

思わぬ用件に皆困惑した。

「4月17日は9代目の誕生日だ。毎年盛大なパーティーが行われている。今までツナ達は参加して来なかったが、そろそろ本国のボンゴレの行事に参加していくべきだ。」
「それはそうっすね。」
「パーティーなど極限に燃えるではないか!」
「でも本国のってことはイタリアで?」

納得する獄寺と了平、そして開催場所を気にする山本。
反応は人それぞれだ。

「そうだ。イタリアで開かれる。学校が終わったらすぐ移動だ。」
「ちょっと待って、リボーン!確かに9代目の誕生日はお祝いしたいけど、ボンゴレの行事には参加したくないよ!」

やはりマフィアになりたくない綱吉は反対した。
リボーンはそれを暴力でねじ伏せる。
具体的には彼は綱吉の腕を締め上げた。

「いい加減こういうのにも慣れろ、ツナ。去年はリング争奪戦(内輪揉め)があった上に、継承式を中止、虹の代理戦争でボンゴレは少なからず損害が出ている。10年後の件と虹の赤ん坊(アルコバレーノ)制度の廃止でトゥリニセッテのパワーバランスも変わっている。ここでボンゴレが健在だと見せつけなければ、今のボンゴレは維持できねぇぞ。」
「どういうこと?維持ができない?」
「他所から見たらボンゴレは弱体化しているように見えるってこと。ボンゴレの力に屈して仕方なく同盟に参加しているファミリーや同盟の振りをしてボンゴレの地位を虎視眈々と狙っているファミリーの離反、もちろん元から敵対しているファミリーからの攻撃がそろそろ起きるかもしれないことをリボーンは懸念しているんだよ。」

絵美は理解の追いついていない綱吉に説明した。

「それで何でパーティーなの?」
「パーティーはその規模でボンゴレの資金力と同盟の結束力を見せつけることができる。想像してみて。豪華で盛大なパーティーに招かれたら、招待客は招待主のことを金持ちだと思うし、9代目と楽しそうに談笑している他の参加者を見たらその参加者は9代目の味方だと思うでしょう?」
「確かに……。でもそれで何で俺が参加しなきゃいけないの?」
「ボンゴレの弱体化を狙う連中が狙うべき標的って誰?」
「9代目………それと認めたくないけど、俺……」
「そういうこと。牽制のためにボンゴレの権力を見せつけるべきは9代目だけれど、それを丸々引き継ぐことを示さなきゃいけないのは沢田君。君は争いごとは嫌いでしょ?パーティーに参加するだけで無用の争いの1つ2つは減るって聞いても参加しない?」
「っ〜〜〜〜!絵美ちゃんって策士だね!そんなこと言われたどんなにボスになるのが嫌な俺でも参加しない訳にはいかないじゃん!」

問答を繰り返した絵美は最終的に綱吉を言いくるめた。
リボーンはニヤリと笑う。

「俺の言おうとしていたこと全部言われちまったな。さすが絵美だ、幼くしてこの社会で育ってきただけある。」
「お褒めに預かり光栄です、リボーン。ただ1点質問。なぜ私まで?人数集め?」
「もちろん人数集めの側面はある。雲雀には既に説明したがあの性格だ、俺との決闘をチラつかせても来ない可能性がある。ランボも場を壊すからまだ早い。」
「(戦闘はさせてパーティーはまだ早いってどういう基準だよ…)」

綱吉は心の中で突っ込んだ。

「ただ、絵美、この招待リストを見たらお前は行きたがるんじゃないかと思ってな。」

リボーンは分厚い招待リストを渡そうとした。
しかし、そのリストの中身を察した絵美はそれを受け取らずに首を横に振った。

「幹部はともかくボスは参加しないと思う……あ、でも………」

絵美は考え込んだ。
リボーンはその様子を見てニヤリと笑う。

「ザンザスがこのパーティーの意義を理解していて顔を一切出さないとも言い切れないだろ?」
「そうだね……主役が沢田君であれば絶対欠席だけれど、9代目だと絶対とは言い切れない……。」
「どうだ?参加したくなったか?」
「正直それでも来ないとは思うけれど、今は沢田君の部下の身よ?不参加という選択肢はないと思うんだけれど……違う?」
「理解が早くて助かる。」

リボーンと絵美のやりとりを、ここで隼人が止めた。

「ちょっと待て、絵美。さっきから話聞いてて思ったんだが、そもそも何でザンザスが10代目を狙う連中に含まれてねぇんだ?」
「もしかして隼人ってボスのこと、怒りっぽくて単純な人だと思っている?」
「いや……まあ、そうだな。」

獄寺の歯切れの悪い肯定に絵美はため息をついた。

「ボスの名誉の為に言っておくけど、ボスは怒りっぽくて傲岸不遜で狡猾で虎視眈々と獲物を狙う人だからね?」
「いや、お前、マジで何でザンザスが好きなんだよ?」

隼人は思わず突っ込んだ。
絵美は首を傾げた。

「え?かっこよくない?ボスのかっこよさならいくらでも語れるけど……いや、話逸れちゃうからそこは語らないけど。ボスはね、最強のボンゴレが欲しいの。確かに沢田君のことは目障りだと思っているけれど、今は代理戦争のように部下の呪いを解くみたいな大義名分がない。そんな状態で今沢田君をかっ消したらボンゴレの半数以上がボスに反抗して内戦が起きるし、粛清の規模も大きくなって、ボンゴレは弱体化する。それはボスの本望じゃないの。」
「なるほどな。」
「確かにアイツ、回りくどい手でツナのこと悪者に仕立てようとしてたもんな。」
「そうだな……極限に卑怯だと思うが。」

納得する隼人に山本と了平が同調する。
クロームもうんうんと頷いている。
綱吉だけは絵美の話から新たな疑問が生まれたようで、絵美にそれを尋ねた。

「ねえ、絵美ちゃん。それって最強のボンゴレを維持しないでおけばヴァリアーと敵対せずに済むってこと?」
「甘いね、沢田君。それは違うよ。沢田君が意図的にボンゴレを弱体化させるなら、強硬派がボスを担ぎ出してボスに大義名分を作るはずだよ。ボスは喜んで沢田君を殺しに来るよ。」
「はぁ……やっぱりそう甘くないか……」
「10年後の世界にはミルフィオーレがあったみたいだけど、今はその規模のファミリーはないから、ボンゴレが倒れれば裏社会は群雄割拠状態になる。沢田君が最も見たくない血で血を洗うような争いが見れるだろうね。」
「ひいぃぃっ!やっぱり俺、マフィアとか嫌だよぉぉぉ!!」

綱吉は両手で頭を抱えた。

「10代目!10代目なら無用な争いをなくすことができます!」
「俺もそう思うぜ!」
「極限に俺もそう思う!」
「ボス、私もそう思う…」

隼人、山本、了平、クロームはそれぞれ綱吉を励ました。

「沢田君、君が無用な争いを避けたいなら、ボスにならなければ解決するという考えはさっさと捨てて、早くボンゴレ10代目としてどうボンゴレの舵取りをすべきか考えた方が良い。私だって今は沢田君の味方だけど、ボスが私を呼び戻してあなたをかっ消せと命令すれば敵になってしまうのだから。」
「絵美の言う通りだぞ、ツナ。お前がブレブレだとそれだけで要らねぇ争いが起こるんだ。いい加減、覚悟を決めやがれ!」

そう言ってリボーンは綱吉の側頭部に蹴りを入れた。

「いったぁ…!」
「まずはパーティー参加から始めるぞ。」
「俺の意向は無視かよ!パーティーは出るよ!でもボンゴレのボスには俺はならないからな!」

しばらくリボーンと綱吉のボスになるならない戦争が繰り広げられた。
途中から隼人や山本、了平は仲裁に入ろうとし、クロームと絵美はそれを見守っていた。
結局妥協したのはリボーンの方で、とりあえず目先のイベントには参加するため今日のとこらはこれ以上強要しないことにしたのだった。

× × × × × × × × × × ×

一方、その頃イタリアのヴァリアー本部では…

「う゛お゛ぉい!ボスさんよぉ、そっちの経過は順調か?」

スクアーロの質問にザンザスは頷いた。

「じゃあ、来月のパーティーは作戦通りに進める。」

スクアーロのその言葉に他の幹部の面々も頷いた。

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