堕天使の秘薬
パーティー参加を決めた翌日の放課後、絵美はリボーンに並盛中の音楽室に呼び出された。
「あれ?クロームちゃんもリボーンに呼び出されたの?」
「うん…」
後から音楽室に入ってきたクロームは頷く。
「揃ったな。」
いつの間にかピアノの椅子に座っていたリボーンが2人に声をかけ、教壇の上に立った。
2人は適当に空いている席に座った。
「リボーン、私達だけを呼び出してどうしたの?」
「イタリアに行くにあたって、頭に入れておいた方がいいことがあって呼び出した。行く頃には解決しているかもしれねーけどな。」
絵美とクロームの顔つきが真剣なものになる。
「女性だけを呼んだってことは、性犯罪でも多発しているの?」
「勘が良いな、絵美。そうだ、今イタリアでは強力な媚薬を女性の飲み物に盛り、興奮させて女性がまともな判断ができない状態で無理やり犯すという手口の強姦事件が増えてんだ。どうやらリング争奪戦があった辺りからこの事件は始まっていたようだが、最近になって発覚したんだ。」
「最近?確かに強姦の場合、女性が泣き寝入りするケースは多いけれど半年も表面化しなかったのはいくらイタリアとはいえ、長過ぎない?」
「ああ、発覚が遅れたのは被害者が酒のせいで記憶がなかったり、記憶があっても薬のせいだと知らない被害者が自分もノリノリで関係を持ってしまったと思い込んで文句を言うのは筋違いだと思ったからだ。警察も話を聞いて同意のもとだと判定してまともに取り合わなかった。先月頭にキャバッローネのシマで被害に遭った女性が絶対に普段の自分なら同意しない、何か盛られたに違いないと強く主張して即座に検査をしてやっと発覚したんだ。」
絵美は納得した。
「それで9代目はどうするつもりなの?同盟のシマでそんなことが起きてて放置する人ではないでしょう?」
「ああ、既にその薬は9代目が禁薬に指定した。裏社会で捌いてる連中が大勢いたからな。だが回収には時間がかかる上に、製造元が特定できてねぇ。ボンゴレの力を持ってすればあと1ヶ月で解決するかもしれねーが、念の為頭に入れておけ。パーティーで近付いてくる男には用心しろ。」
「わかった。」
絵美は頷いた。
しかしクロームは少し様子が違った。
「あの……飲み物に気を付けないきゃいけないのはわかったけど……媚薬って何?」
「「……………………………」」
リボーンと絵美の間に沈黙が流れた。
「クロームちゃん、凄く失礼なこと聞いていい?あなたそんなに可愛くて性の知識なくてここまで何ともなくやってこれたの?」
「あ……」
クロームは戸惑いつつも頷いた。
10年後の世界でミルフィオーレの六弔花、グロキシニアにその貞操を狙われていたのだが、本人に自覚はない。
「クロームは日本生まれ日本育ちだからそんなもんだぞ。大半の奴らが性犯罪と自分は無関係だと思ってやがる。そこらへんの教育も甘ぇしな。」
「まあ来てみて思ったけれど、本当平和よね、この国………。でも、クロームちゃん、あなたが来月行くのはイタリアだから後で女の子同士、後でしっかり話そうか。とりあえず、リボーン、その薬の詳細を教えて。」
「薬はルチーフェロと呼ばれている。極めて強力な媚薬で、500mlの液体に5ml混ぜれば一口で効き目があるらしい。色は濁りのない薄い黄色で、ビール、ハイボール、ファジーネーブルなんかに混ぜるのが常套手段のようだ。独特の苦味があるらしいが、苦味に気付く頃には薬が効いてるって算段らしい。他にも動悸を感じるケースが多いみたいだ。どうも心拍数を上げて血行を良くする成分が入ってるようだ。」
「薬の回りを速くするのと、ドキドキさせることで目の前の相手にときめいてると錯覚させるんだね。にしても、堕天使って随分と皮肉が効いた名前ね。」
「皮肉?」
クロームは首を傾げた。
「ルチーフェロはイタリア語で日本語に訳すと堕天使という意味なの。きっとどんな女性も薬の効き目で理性を失ってしまう様子を堕天使と例えてるんだと思う。」
「ちなみに絵美はビアンキ並みの毒耐性があるって効いてるが媚薬はどうなんだ?」
「正直わからない。私の毒耐性はポイズンクッキング由来だから、媚薬にどこまで耐性があるかは正直微妙。だって私、普通の薬はそこそこ効いてるしね?」
「やはりそうか。」
「普通の人が飲むよりは幾分かはリスクが低いかもしれないから、飲み物を勧められたら先に私が毒味するよ。まあ、パーティーで盛られるとしたら媚薬より普通の毒の可能性の方が高いけど。」
「そしたら絵美ちゃんが危ないんじゃ…」
「基本的に殺害を目的とした毒物は効かないから安心して。それにクロームちゃんに毒なんか盛られたら六道骸が怒るでしょ。その怒りの矛先がボンゴレに向いたら、結局ボンゴレ内で内戦になっちゃう。」
「うん………」
クロームはようやく首を縦に振った。
「じゃあ決まり。クロームちゃん、この後お姉様のとこに行きましょう。私も性知識ないとか人に言われるし。」
「絵美ちゃんが…?」
「絵美が?」
「何でリボーンまで驚くの?」
クロームとリボーンが驚き、絵美までもが驚く。
「お前とザンザスの関係は察しがついてる。経験あるんだろ?なんで知識ないなんて言われるんだ?」
「うーん………何でだろう……いや、なんとなくはわかるの。多分私が知ってる知識って生物学的なものに偏り過ぎているの。だからその……あれしろ、これしろって言った時に戸惑っちゃって、ボスに知識ないって笑われるの……」
絵美は顔を赤くしながら言った。
「(あのザンザスが笑う、か……意外と大物だな、絵美は。)」
リボーンはそんな感想を持つ。
「そうか。だが、絵美が知らないことに関してはビアンキにも期待しない方が良いぞ。」
リボーンにそう指摘され、絵美は不思議そうにリボーンを見て、納得した。
「(確かに、肉体的に赤ん坊のリボーンとそういうことするわけないじゃん…!!)」
「絵美ちゃんが知らなくて困ることなら私も知りたい。」
クロームが突然そう言い出す。
絵美は首を横に振った。
「リボーンの言う通り、そっちの知識に関してはお姉様もダメそうだし、今日は保健体育的な基礎分野をしっかり勉強しよう?」
「うん…」
クロームは頷いた。
「…ってことがあったの。」
絵美は沢田家のリビングでビアンキに訪れた経緯を説明していた。
因みに家主の奈々はフゥ太、ランボ、イーピンと共に外出中である。
「それでクロームと一緒に来たのね。いいわ、みっちり教え込んであげる。」
そう言ったビアンキはまずクロームの知識レベルを確認し、不足しているところを補った。
その次に性犯罪の話をした。
クロームは真面目に聞いていた。
「あの人………私にそんなことしようとしてたんだ………」
クロームは青い顔で言った。
「クロームちゃん、大丈夫?」
「大丈夫………絵美ちゃんがさっき驚いてたの納得した。」
「そう?」
「骸様に助けてもらえなかったらと思うとゾッとする……」
「助けてもらえたんだね。」
「うん」
クロームは微笑んだ。
「クロームちゃんが強いのは知っているけれど、被害に遭ってからじゃ遅いから。良かった、今日話せて。」
「うん」
「じゃあ今日はこれで終わり!クロームちゃん、帰りがけに商店街のケーキ屋さん寄らない?奢るよ!」
「行きたい」
「あら、私も奢って欲しいわ。」
すかさずビアンキが強請った。
絵美は眉を垂れ下げて笑う。
「お姉様まで奢ったら沢田家のみんなに奢らなきゃいけなくない?」
「確かに」
「お姉様にはまた今度ね。」
「ええ。ちゃんと覚えとくから。」
「忘れてくれると嬉しいな。」
思わず本音を漏らした絵美だった。
「あれ?クロームちゃんもリボーンに呼び出されたの?」
「うん…」
後から音楽室に入ってきたクロームは頷く。
「揃ったな。」
いつの間にかピアノの椅子に座っていたリボーンが2人に声をかけ、教壇の上に立った。
2人は適当に空いている席に座った。
「リボーン、私達だけを呼び出してどうしたの?」
「イタリアに行くにあたって、頭に入れておいた方がいいことがあって呼び出した。行く頃には解決しているかもしれねーけどな。」
絵美とクロームの顔つきが真剣なものになる。
「女性だけを呼んだってことは、性犯罪でも多発しているの?」
「勘が良いな、絵美。そうだ、今イタリアでは強力な媚薬を女性の飲み物に盛り、興奮させて女性がまともな判断ができない状態で無理やり犯すという手口の強姦事件が増えてんだ。どうやらリング争奪戦があった辺りからこの事件は始まっていたようだが、最近になって発覚したんだ。」
「最近?確かに強姦の場合、女性が泣き寝入りするケースは多いけれど半年も表面化しなかったのはいくらイタリアとはいえ、長過ぎない?」
「ああ、発覚が遅れたのは被害者が酒のせいで記憶がなかったり、記憶があっても薬のせいだと知らない被害者が自分もノリノリで関係を持ってしまったと思い込んで文句を言うのは筋違いだと思ったからだ。警察も話を聞いて同意のもとだと判定してまともに取り合わなかった。先月頭にキャバッローネのシマで被害に遭った女性が絶対に普段の自分なら同意しない、何か盛られたに違いないと強く主張して即座に検査をしてやっと発覚したんだ。」
絵美は納得した。
「それで9代目はどうするつもりなの?同盟のシマでそんなことが起きてて放置する人ではないでしょう?」
「ああ、既にその薬は9代目が禁薬に指定した。裏社会で捌いてる連中が大勢いたからな。だが回収には時間がかかる上に、製造元が特定できてねぇ。ボンゴレの力を持ってすればあと1ヶ月で解決するかもしれねーが、念の為頭に入れておけ。パーティーで近付いてくる男には用心しろ。」
「わかった。」
絵美は頷いた。
しかしクロームは少し様子が違った。
「あの……飲み物に気を付けないきゃいけないのはわかったけど……媚薬って何?」
「「……………………………」」
リボーンと絵美の間に沈黙が流れた。
「クロームちゃん、凄く失礼なこと聞いていい?あなたそんなに可愛くて性の知識なくてここまで何ともなくやってこれたの?」
「あ……」
クロームは戸惑いつつも頷いた。
10年後の世界でミルフィオーレの六弔花、グロキシニアにその貞操を狙われていたのだが、本人に自覚はない。
「クロームは日本生まれ日本育ちだからそんなもんだぞ。大半の奴らが性犯罪と自分は無関係だと思ってやがる。そこらへんの教育も甘ぇしな。」
「まあ来てみて思ったけれど、本当平和よね、この国………。でも、クロームちゃん、あなたが来月行くのはイタリアだから後で女の子同士、後でしっかり話そうか。とりあえず、リボーン、その薬の詳細を教えて。」
「薬はルチーフェロと呼ばれている。極めて強力な媚薬で、500mlの液体に5ml混ぜれば一口で効き目があるらしい。色は濁りのない薄い黄色で、ビール、ハイボール、ファジーネーブルなんかに混ぜるのが常套手段のようだ。独特の苦味があるらしいが、苦味に気付く頃には薬が効いてるって算段らしい。他にも動悸を感じるケースが多いみたいだ。どうも心拍数を上げて血行を良くする成分が入ってるようだ。」
「薬の回りを速くするのと、ドキドキさせることで目の前の相手にときめいてると錯覚させるんだね。にしても、堕天使って随分と皮肉が効いた名前ね。」
「皮肉?」
クロームは首を傾げた。
「ルチーフェロはイタリア語で日本語に訳すと堕天使という意味なの。きっとどんな女性も薬の効き目で理性を失ってしまう様子を堕天使と例えてるんだと思う。」
「ちなみに絵美はビアンキ並みの毒耐性があるって効いてるが媚薬はどうなんだ?」
「正直わからない。私の毒耐性はポイズンクッキング由来だから、媚薬にどこまで耐性があるかは正直微妙。だって私、普通の薬はそこそこ効いてるしね?」
「やはりそうか。」
「普通の人が飲むよりは幾分かはリスクが低いかもしれないから、飲み物を勧められたら先に私が毒味するよ。まあ、パーティーで盛られるとしたら媚薬より普通の毒の可能性の方が高いけど。」
「そしたら絵美ちゃんが危ないんじゃ…」
「基本的に殺害を目的とした毒物は効かないから安心して。それにクロームちゃんに毒なんか盛られたら六道骸が怒るでしょ。その怒りの矛先がボンゴレに向いたら、結局ボンゴレ内で内戦になっちゃう。」
「うん………」
クロームはようやく首を縦に振った。
「じゃあ決まり。クロームちゃん、この後お姉様のとこに行きましょう。私も性知識ないとか人に言われるし。」
「絵美ちゃんが…?」
「絵美が?」
「何でリボーンまで驚くの?」
クロームとリボーンが驚き、絵美までもが驚く。
「お前とザンザスの関係は察しがついてる。経験あるんだろ?なんで知識ないなんて言われるんだ?」
「うーん………何でだろう……いや、なんとなくはわかるの。多分私が知ってる知識って生物学的なものに偏り過ぎているの。だからその……あれしろ、これしろって言った時に戸惑っちゃって、ボスに知識ないって笑われるの……」
絵美は顔を赤くしながら言った。
「(あのザンザスが笑う、か……意外と大物だな、絵美は。)」
リボーンはそんな感想を持つ。
「そうか。だが、絵美が知らないことに関してはビアンキにも期待しない方が良いぞ。」
リボーンにそう指摘され、絵美は不思議そうにリボーンを見て、納得した。
「(確かに、肉体的に赤ん坊のリボーンとそういうことするわけないじゃん…!!)」
「絵美ちゃんが知らなくて困ることなら私も知りたい。」
クロームが突然そう言い出す。
絵美は首を横に振った。
「リボーンの言う通り、そっちの知識に関してはお姉様もダメそうだし、今日は保健体育的な基礎分野をしっかり勉強しよう?」
「うん…」
クロームは頷いた。
× × × × × × × × × × ×
「…ってことがあったの。」
絵美は沢田家のリビングでビアンキに訪れた経緯を説明していた。
因みに家主の奈々はフゥ太、ランボ、イーピンと共に外出中である。
「それでクロームと一緒に来たのね。いいわ、みっちり教え込んであげる。」
そう言ったビアンキはまずクロームの知識レベルを確認し、不足しているところを補った。
その次に性犯罪の話をした。
クロームは真面目に聞いていた。
「あの人………私にそんなことしようとしてたんだ………」
クロームは青い顔で言った。
「クロームちゃん、大丈夫?」
「大丈夫………絵美ちゃんがさっき驚いてたの納得した。」
「そう?」
「骸様に助けてもらえなかったらと思うとゾッとする……」
「助けてもらえたんだね。」
「うん」
クロームは微笑んだ。
「クロームちゃんが強いのは知っているけれど、被害に遭ってからじゃ遅いから。良かった、今日話せて。」
「うん」
「じゃあ今日はこれで終わり!クロームちゃん、帰りがけに商店街のケーキ屋さん寄らない?奢るよ!」
「行きたい」
「あら、私も奢って欲しいわ。」
すかさずビアンキが強請った。
絵美は眉を垂れ下げて笑う。
「お姉様まで奢ったら沢田家のみんなに奢らなきゃいけなくない?」
「確かに」
「お姉様にはまた今度ね。」
「ええ。ちゃんと覚えとくから。」
「忘れてくれると嬉しいな。」
思わず本音を漏らした絵美だった。
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