パーティーの開始

(きた)る9代目の誕生日。
絵美達はパーティー会場近くの控室で待機していた。
10代目ファミリーは招待された側ではあるが、他のゲストとは格が違う。
今回のパーティーはボンゴレの健在さを見せつけるというものでもあるため、後から入場することが決まっていた。

「うわぁ……緊張する。」

スーツを着た綱吉がそう呟く。

「大丈夫っすよ、10代目!10代目に変なことぬかす奴らは全員俺がぶっ飛ばします!」
「そういうのダメだって!」
「大丈夫っす!ちょっとぶっ飛ばすだけで殺しはしませんから!」
「(何も大丈夫じゃないよー!)」

綱吉は助けを求めるように絵美を見たが、絵美はその意図が掴めず首を傾げた。

「極限に燃えてきたぞ!」
「楽しみだなっ!ハハッ!」

了平や山本は普通に楽しみそうに待機している。
クロームは多少緊張している様子だが、前回の継承式と異なり幻覚で参加者を増やす必要はないためか、そこまで酷い訳ではなさそうだ。
クロームと絵美はスーツではなく、お揃いのドレスを身に纏っていた。
胸元から膝までを隠すAラインのシンプルな白いドレスだ。
ウエスト周りに巻いているリボンだけ各自の瞳の色に合わせ、クロームは紺色、絵美はライム色にしている。

「後で一緒に踊ってね、隼人。」

絵美はクロームにメイクを施しながらそう言った。
唐突な依頼に隼人は素っ頓狂な声を上げた。

「は!?何で俺?」
「踊ると目立つでしょう?今回は沢田君とその守護者は準主役なんだから目立たないと。ファーストダンスは夫か身内の男性っていうのが鉄板でしょ?沢田君の立場を慮って動いてあげるんだから、右腕としてこれぐらいは協力するでしょう?」
「お前って本当……まあ、いい。それぐらいやってやる。」
「そうこなくっちゃ。………はい、クロームちゃんできたよ。」

絵美はクロームの唇から筆を離してそう言った。

「もともとの素材が良いから、シンプルなメイクでも凄く可愛いね。」

絵美がそう褒めるとクロームは頬を赤く染めて俯いた。

「………ありがと………絵美ちゃんも可愛い。」

クロームのまさかの返しに絵美はパチクリと数度瞬きをした。

「…ありがとう。」

絵美も照れたように笑った。
このタイミングで、9代目の部下が声をかけにきた。

「そろそろ入場のお時間です。」

綱吉達は頷いて、気を引き締めた。
会場の前まで皆で移動した。

「ボンゴレ10代目御一行の入場です!」

会場側で号令がかかり扉が開いて、綱吉を先頭に一行は会場へと入場した。
イタリアなのにヴィクトリア朝を思わせるような絢爛豪華で広い会場に綱吉達は内心感心した。
しかしここがただの楽しいパーティー会場ではないことにすぐ気付く。
殺気を隠した連中がうじゃうじゃおり、品定めするような視線がねっとりと彼らを絡め取ろうとしているからだ。
テーブルは会場の両端に設置されており、中央は広く空いていた。
そこで招かれた客達が談笑している。
入場してすぐの壁際にオーケストラが陣取っており、ドロドロと入り混じった殺気には似つかわない和やかな曲を演奏していた。
絵美は会場の端にヴァリアーの幹部が陣取っていることに気付いた。
ザンザスはそこにおらず、少しだけ安心した。

「ヴァリアーはいるが、ザンザスはいねぇな。」

小声で隼人は絵美に言った。

「うん、多分そうなると思った。あ、沢田君、あそこに古里君達が。」

絵美がそう言うと綱吉は真っ先にシモンファミリーの元へと向かった。

「炎真!」
「ツナ君!」

2人は他愛のない話で談笑する。
それを見て会場が騒つく。
仕方のないことではある。
シモンファミリーは継承式をぶち壊した犯人なのだから。
しかし、これまでボンゴレのためにシモンが受けてきた仕打ちを、9代目はボンゴレの罪として公表し、現在はシモンファミリーの名誉回復を図っているところである。
その一環として綱吉と炎真の友好関係はあえて見せつける必要があった。
綱吉もその意義を理解して……いるかどうかは本人のみぞ知るところだが、楽しそうに炎真と話した。

絵美は周囲に警戒しつつ、他のゲストを見やる。
綱吉の兄貴分であるキャバッローネのディーノはボンゴレの同盟ファミリーでも2番目の勢力を誇るファミリーのボスであるため、次は彼との絡みを見せつけるべきかと絵美は考える。
他にも同盟ファミリーではないがジッリョネロファミリーも来ていた。
相変わらず白蘭はユニに付き纏っているようで今日もこの会場に来ている。
絵美はユニの予言の発端はこのパーティーにあるのではと考えた。

同じ並盛に住むトマゾファミリーの8代目候補は来ていないようだ。
ボンゴレでありボンゴレでないCEDEFも今日は出席しているようで沢田家光の視線を絵美は感じた。

「ボンゴレ9代目のご入場です!」

その号令で賑やかだった会場が1度静まり返り、入場用の入り口に皆の視線が集中する。
この瞬間が暗殺者に狙われやすい瞬間であるため、絵美は神経を研ぎ澄ませた。
幸い、何も起きなかったが。
9代目は真っ直ぐ会場正面の階段を昇り、階段が左右に分かれる踊り場に着いたところで振り返った。

「皆私の誕生日のためにこの場に来てくれてありがとう。今日のパーティーは、普段お世話になっている関係者に感謝を伝えるための宴でもある。存分に楽しんで欲しい。」

9代目のスピーチを皮切りにパーティーが始まった。

× × × × × × × × × × ×

会場の端で大人しくワインを飲んでいるスクアーロには懸念事項があった。

「絵美、来たんだね。」

マーモンが呟く。

「…ああ」

スクアーロは頷きつつ、この後の展開で絵美が動揺しないか心配した。

「あの絵美を見てボスがどんな反応すっかな?」
「もともと可愛くて純粋そうな顔立ちをしているからああいうシンプルなドレスが似合うわね。」
「絵美と一緒にいるあのクロームという少女も妖艶だ……」
「本当キモいな、お前」
「そういえば絵美も美人の部類のはずだけど、なんでレヴィったら興味ないのかしら〜ん?」
「初めてうちに入隊した時のアイツの姿を思い返してみろ。確かに顔立ちは整っていたが、あんな小汚い娘に欲情できると思うか?」
「あー、あん時は酷かったよな、栄養失調でガリガリだったし。」
「そうだろう?それにそもそも俺はボスが気に入っている女に手を出すことなどない。」

スクアーロは他の幹部メンバーが繰り広げる会話に交わるつもりはない。
ザンザスにはこのパーティーで成したいことがある。
ヴァリアーの面々も作戦のためにこのパーティーに参加している。
スクアーロは部下から定期的に絵美の近況を報告されている。
報告通り、絵美はスクアーロの想像以上に綱吉達と打ち解け、仲良くなっていた。
もちろん、その可能性は考慮していたが、実際ザンザスの前でその様子を見せた時にどう転がるかわからず背中を冷や汗が伝う。

「(あのボスさんが堪えてくれりゃいいんだが…)」

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