守りたい人からの拒絶

普段ならダラダラ家で過ごすであろう日曜日、今日のツナ君は学校へ向かっていた。
新学期早々休みが続いたことと成績が悪いことの2コンボで補修になったようだ。
そして補修の対象になったのはツナ君だけでなく、獄寺君と山本君、そして僕もだった。
別に僕はツナ君に合わせて成績を落としている訳じゃない。
我が家はバリエラとしての後継者教育には熱心だけど普通の勉強に関しては全く関心がないので、中学生になってこれまで適当にやってきたツケが回ってきてる感じだ。
すなわち、僕は赤点スレスレのお馬鹿さんだ。
だから今日は4人で登校している。

「へー、良かったじゃねーか。親父さん帰って来るなんて。」
「……うん…ま…まぁ…」

山本君の感想にツナ君は歯切れの悪い返事をする。
まあ、2年ぶりだもんね。
僕も正直お父さんには会いたくないんだよなー。
でもツナ君のお父さん   家光さんが帰って来るってことは、イコールでお父さんが帰って来るってことなんだよなー。
あー、やだなー。

獄寺君は気合い入れて家光さんに挨拶するなんて言ってる。
まあ、獄寺君の立場的にはそうだよなぁ。
そしてツナ君はそれを全力で拒否する。
どうやらこの2年間の不在で、ツナ君の家光さんに対する不信感は酷く増したらしい。
いろんな意味で仕方がない気もするけど。

「あんな父親…今更帰ってこられても。」

ツナ君が珍しく人に対する嫌悪感を一切隠さない。
ある意味気を許してる父親相手だからだろうけど。
はーっと大きく溜め息を吐くツナ君にみんながかける言葉を考え込んだ。
最初に名案を思いついたのは山本君だった。

「なあ、このまま遊び行かね!?」
「え!?」
「ナイス、野球バカ!そうしましょう、10代目!!」
「僕も賛成!」
「ええ!?」

ツナ君の戸惑う姿はちょっと可愛い。

「あんま家庭のこととか考え過ぎない方がいいっスよ。」
「ご…獄寺君…」
「オレんちなんか、もっとドロドロのグチャグチャですしね!!」

すっごく爽やかな笑顔で獄寺君は爆弾を投下した。
いや、まあ、ビアンキさんと腹違いの姉弟って時点で家庭のことには触れ辛い雰囲気あったけどさ…!!
でも単純にビアンキさんのポイズンクッキングのせいって可能性も残ってるかなと思ってたんだけど…!!
やっぱり現実はそう甘くないかー。

結局誰も獄寺君の発言には突っ込めずに、ツナ君は遊ぶことに同意した。

× × × × × × × × × × ×

山本君の提案で僕と山本君とそしてなぜか獄寺君でバスケゲームをすることになった。
応援にはフゥ太君がいる。
確かに7号サイズのボールを扱うのは10歳のフゥ太君には厳しいかも。
息抜きをして欲しい張本人のツナ君は今のところランボ君に振り回されっぱなしの状態だ。

「テメーには負けねーぜ、野球バカ!」
「おっ!燃えてきたな!オレも負けねーぜ!」
「僕のことも忘れられちゃ困るね。」
「優希姉は並盛中女子運動神経ランキング堂々の第1位だから楽しみだよ!」
「並中女子イチィ?」

獄寺君は訝しげに僕を見てきた。

「フゥ太君が言うなら本当なんじゃない?スポーツはそれなりに自信あるよ。」
「そうこなくっちゃな♪」

山本君は凄くやる気満々だ。
自分が勝つまで付き合わされそうなそんな雰囲気さえ感じる。
正直至近距離のバスケのシュートじゃ2人と僕の間で差は出ないだろうな。

「じゃ、先行オレ行くぜ。」

山本君が早速始める。
1発目だけ外したけど、それ以降は全てコンスタントにシュートを決めた。
1秒1シュートの速さで投げているけど途中ボールが降りて来なかったりして、決まったシュートの本数は31本。
そのうち3点の加点がつくラスト20秒で決めたシュートは10本で、彼のスコアは72点だった。
これは1本も外せないな。

「次はオレが行くぜ。」

獄寺君はタバコを咥えたままゲームを始める。
やはり獄寺君も運動神経抜群で全てのシュートを決めた。
でも若干山本君よりペースが遅かったせいか決まったシュートの本数は30本、20秒で決めたシュートは10本で、彼のスコアは70点だった。

「チッ…」

獄寺君は舌打ちして新しいタバコに口をつけた。

「じゃあ次は僕だね。」

僕も早速ゲームを始めた。
山本君よりほんの少し早いペースでボールを投げ続け、前半で21本、後半で11本決めることができた。
スコアは75点だ。

「やったー!僕の勝ちー!」
「マジかよ…」
「ありえねー」

悔しさよりも困惑が勝っていそうな山本君に、いかにも不正を疑っていそうな獄寺君。

「テメー、不正してんじゃ…っ!!」

獄寺君の表情が変わった。
彼の注意の先が外に向かったことが視線でわかる。
どうしたんだろ?

「獄寺君?」
「外で爆発音がする!!10代目はどこに!?」
「「!!」」

獄寺君が動くと同時に僕と山本君も動いた。
ゲーセンから出る前に振り返ってフゥ太君に向かって避難指示をする。

「フゥ太君はリボーン君達と合流して!!」

フゥ太君の返事も聞かずに外に出れば、ツナ君は明るい金髪とも茶髪とも取れる髪色の男の子の下敷きになっていた。
その男の子の頭には青い死ぬ気の炎が宿っていて、僕は息を呑んだ。
京子ちゃん、ランボ君、イーピンちゃんも巻き込まれてしまっている。

「う゛お゛ぉい!!なんだぁ?外野がゾロゾロとぉ。邪魔するカスはたたっ斬るぞぉ!!」

見たことのない刺客がいた。
夏の暑さが過ぎ去ったとはいえまだ季節的には早い黒づくめのコートに、特徴的な銀色の長髪。
そして左手には剣。
その剣から肩へと辿るとその二の腕にはボンゴレの特殊暗殺部隊ヴァリアーのエンブレムがあった。
右肩には1本の紐。
彼はヴァリアーの幹部なのか…!
ツナ君の敵だろうか?
とにかく今は京子ちゃん達を避難させないと…!

「女子供は避難するぞ」
「リボーン君………!」

ちゃっかり危険地帯のど真ん中に現れたリボーン様が京子ちゃんに避難指示をする。
僕はその場に残ろうとしたけど、リボーン様に止められた。

「優希、お前もだ。」
「リボーン君…!?」
「命令だ。」

もしあのヴァリアーの人が敵なら今のツナ君達は敵わない可能性が高い。
四の五の言わずに僕に守らせた方がいい。
でもリボーン様はそういう判断じゃないらしい。
とりあえず僕はリボーン様に従って安全な場所まで京子ちゃんとランボ君とイーピンちゃんを連れ出した。
そこにはハルちゃんとフゥ太君もいた。

「リボーン君、僕は戻っていい?」
「そんな…!優希ちゃん、危ないです…!」
「そうだよ…!」

ハルちゃんと京子ちゃんは心配そうに僕の腕を掴む。

「大丈夫、僕強いから。」

僕は2人の手をできるだけ優しい力加減で剥がした。

「手を出さねーって約束すんなら連れてってやる。」

僕が京子ちゃん達に気を取られている一瞬でリボーン様は植木鉢のコスプレに着替えていた。
爆発音のする方に向かいながら僕は尋ねた。

「手を出しちゃいけない理由は僕が正式なバリエラの後継者として内定しているから?」

リボーン様が身を隠すようなコスプレをしている時点で、先程の襲撃者はヴァリアーなんだろう。
そして彼が9代目に反旗を翻した人間ではなく、9代目の手先としてこの騒動を起こしているのなら、正式なボンゴレファミリーであるリボーン様は手が出せない。
そしてバリエラの9代目とボンゴレ9代目から正式にバリエラの10代目として認められている僕は既にボンゴレの所属であり、実際9代目の命令系統に組み込まれている。
あの人が9代目の味方であるならツナ君を守ることはできても、あの人に攻撃することは僕にはできないということだ。

「それもあるが、ツナ達には現実を見せねーとな。」

リボーン様は僕の考えを読み取ったかのようにそう言った。
現場に到着すると、獄寺君と山本君は既に地面に突っ伏していた。
青い死ぬ気の炎の男の子がなんとか粘っている。
リボーン様は自販機の上から狼狽えるツナ君に27と書かれた手袋を落とす。

「おまえ!!おまえ、この大変な時に今までどこにいたんだよ〜!?それに優希まで連れて来て!」
「オレにもいろいろ事情があるんだ。」
「僕が無理言ってついて来ただけだから、リボーン君は責めないで。」

僕らがそんなやりとりをしている時に、青い死ぬ気の炎の少年が倒れた。
リボーン君はすかさずツナ君に死ぬ気弾を撃ち込んだ。

× × × × × × × × × × ×

結局僕はリボーン様の命令を守って、何もできなかった。
結局ディーノさんが現れて、青い死ぬ気の炎の少年   バジル君が持っていた小箱を強奪したことで最低限の成果を得たと判断したのか、ヴァリアーの人   S(スペルビ)・スクアーロは去って行った。
獄寺君と山本君はすぐに意識を取り戻しツナ君の身を案じていたけれど、リボーン様に足手纏いだから帰るようにと促され、もの凄く殺気立っていた。
僕らはとりあえずバジル君を廃病院に運ぶこととなった。
バジル君は命に別状はないらしい。
彼はハーフボンゴレリングというリングをツナ君へ運ぶよう指示されていたが、それは囮だったようで、ディーノさんが本物のリングを持って来たとのことだった。
ツナ君は現実逃避をするように補修の勉強をしなきゃと言って病院を去ったので、慌てて僕は追いかけた。

「ツナ君、大丈夫?顔色悪いよ?」
「だ…大丈夫!それより優希こそ大丈夫?黒曜の時も無茶してたし、今日もあんな危険な場に姿現すし、心臓がいくつあっても足りないよ!」
「僕なら大丈夫だって!運動神経良いんだから。獄寺君や山本君ほどの攻撃力はなくても、防御力なら僕の右に出る人なんていないからさ。」
「どこからその自信湧くんだよ……」
「僕の熱い心から?ツナ君達を守りたいっていう。」
「気持ちは嬉しいんだけどさ!本っ当にやめてくれないかな!?」
「そう言われてもなぁ……」
「優希!!遊びじゃないんだぞ!!」

とぼけた笑みを浮かべて頬をかいていたら、ツナ君は本気で怒鳴った。
きっと僕はツナ君の中ではか弱い守るべき女の子なんだろう。
いつも穏やかな分ギャップで迫力があるけれど、こんなの想定内だ。

「僕も遊びじゃないんだ、ツナ君。」
「えっ……」
「ツナ君が僕を巻き込みたがってないから話を合わせてたけど、マフィアごっこじゃないことぐらい知っているよ。ツナ君がどれだけ危険な世界に身を置いているか知ってるから、守りたいって思うんだよ。もちろん、獄寺君を始めとした他のファミリーのメンバーのことも。」
「な…なんで、優希がそれを…」
「その内説明するよ。今日のところはお互い頭を冷やした方が良いみたいだから先に失礼するね。」

   想定内のはずだった。
ツナ君が自分のために誰かが傷付くのを嫌がる性格だなんてわかってたことだ。
なのに面と向かって否定された事実が僕の胸にずんと重石を乗っけた。

ツナ君に手を振って強引に別れた後、こっそり彼の後ろに回り込み、彼の護衛を続けたけど胸の中に巣食った重石は重くなるばかりだった。

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