機械仕掛けから飛び出した真実

雨戦は敵があのヴァリアーのNo.2にして剣帝を倒した剣士スクアーロで、山本君が勝てるかみんな固唾を飲んで見守った。
結果は山本君の逆転勝利だった。
時雨蒼燕流は流派を常に越えようとする流派らしく、山本君は継承された8つの型に自分の型を1つ加えてスクアーロを倒した。
スクアーロはアクアリオンに放たれたサメに食べられてしまい、後味の悪い勝負となってしまった。

霧戦は意外の連続だった。
守護者に選ばれたのがクローム髑髏と名乗る女の子だったこと。
対戦相手の赤ん坊マーモンが藍色のおしゃぶりの虹の赤ん坊(アルコバレーノ)のバイパーだったこと。
クロームちゃんが幻覚の制御を失ったと同時に内臓を失ったこと。
そんなクロームちゃんのピンチに彼女に憑依する形で六道骸が現れたこと。
六道骸がアルコバレーノ相手に圧勝してしまったこと。
幻覚にも驚かされた。
初めてまともに幻覚を見たけれどあれほどまでとは思わなかった。
正直どうやってあんな六道骸に勝ったんだ、ツナ君は。

そんなこんなで今日は雲戦の日。
そろそろ雲戦が始まる頃だ。
そんな時刻に僕は、いや、僕とリボーン様とツナ君とバジル君は山にいた。
リボーン様の方針で何かあった時のために、ツナ君が死ぬ気の零地点突破を完成させるべきという方針のためだ。
ツナ君はなんとか零地点突破を完成させ、いや、技っぽくないから完成させたのかは疑問なんだけど、とにかく並中に僕らは急いだ。
パッと見、並中はいつも通りの静かな感じだったけど、振動が伝わってきて異常な雰囲気が感じられた。

「リボーン!」
「ああ」

リボーン様はツナ君に小言弾を撃ち込み、ツナ君は先行して飛んで行った。
リボーン様とバジル君と僕も全速力で走って追いかけた。
息を切らしながら到着した並中で見た光景は戦争でもしているかのような壊れ方をした校舎、酷い抉れ方をして炎上するグラウンド、足から大量の血を流す並中最恐の雲雀さん、そして壊れかけのゴーラ・モスカ。
ツナ君から攻撃を浴びたモスカはツナ君にターゲットを絞って攻撃を繰り返し、その度にツナ君に壊され、遂に正面が壊され中が見える形となった。
その瞬間、中から何かがツナ君の方へ落ちた。
あれは……

「9代目…!!」

血の気が引くのを感じた。
9代目が死にかけていることも恐ろしかったし、9代目がそうなるということはお祖父様が9代目をお守りできずに死んだ可能性があるということだった。
地面に縫い付けられたかのように足が動かなくて、ザンザスの理不尽な言い分に顔色を青くして自分を追い詰めそうになるツナ君をただ見守ることしかできなかった。
そんなツナ君を落ち着かせてくれたのは他でもない9代目で、ツナ君のせいではないと伝えてくれた。
9代目が意識を失うとザンザスは白々しく父の仇を取るなどと言い出した。
怒りで目の前が真っ赤になりそうな時、ツナ君は冷静に宣言した。

「おまえに9代目の跡は継がせない!!」

僕も含めて皆がザンザスを攻撃しようと構えた時に待ったをかけたのはチェルベッロで、9代目の弔い合戦は大空戦で行うことになった。
ヴァリアーが去るとディーノさんが現れて、9代目を運んでくれた。
そういえばなんでディーノさんは雲雀さんの家庭教師(かてきょー)なのに、今になって現れたんだろう?

帰り道、僕はツナ君とリボーン様と獄寺君の後ろを歩きながらモヤモヤしていた。

「守屋、お前何かあったのか?」

まさか獄寺君に気付かれるとは思っていなくて、むしろ気付かれたとしてもわざわざ質問されるとは思わなくて少し驚いた。
下手な嘘は吐かずに正直に話すことにした。

「9代目のことも心配だし、それにお祖父様の生存が絶望的なもんだから、ちょっとね。」
「えっ、どうして!?」

ツナ君が驚愕に染まった顔で振り返る。
僕は安心させたくて、多分ぎこちなく笑った。

「お祖父様が9代目のバリエラだからさ。9代目がああなってたということはお守りできずに亡くなった可能性が高い。」
「そんな…!なんで?リボーンの話じゃ優希が最強だけど、バリエラの人はみんな優希みたいなバリアを張る能力があるって…!」
「そう、僕が最強。お祖父様が憤怒の炎を防げたかどうかはわからないし、バリエラは物理攻撃には強いけど、体内に入ったものには弱い。毒ガスは防げるけど経口接種した毒は防げない。」
「じゃあ優希のおじいさんは……」
「あんまり暗くならないで。お祖父様はもともと高齢で9代目の引退と共に辞める気満々だったし、寿命かもしれないよ。こうなった場合9代目の担当は叔父さんが継ぐ予定だったし、バリエラ本家を継ぐ後継者(ぼく)は歴代最強だしね。ツナ君は明日の勝負に集中して。」

ツナ君は浮かない顔で「わかった…」と頷いた。
やっぱり言わない方が良かっただろうか。
いや、でも、ツナ君ならこれまでの付き合いと超直感で嘘はバレてしまうはず。
だから要らんとこで嘘をつく意味はないはずだ。

僕は家に着いた後、叔父さんに今日あったことを報告した。

「そっか……わかったよ、優希。僕はディーノ君に連絡を取って病院に行ってくる。9代目護衛の任に就けばそうそう会えることはない。お別れだね、優希。」

叔父さんは僕を抱き締めた。

「うん……。叔父さん、ツナ君が無事勝ってボンゴレ10代目を継いだら、僕叔父さんとの約束を果たすから…!」
「1人で背負わなくても良いんだよ?」
「ううん、みんな僕以上に重いものを背負って苦しんできた。この連鎖は絶対に僕が止める。僕が…バリエラの一族を終わらせてみせる。」
「…ありがとうと言えばいいのかな?」

叔父さんは少しだけ罪悪感を感じてるような哀しげで弱弱しい笑みを浮かべた。
親族内で子供をもうけられないなら、似たような能力を持った男性を婿として迎えて、新たな能力を取り込みつつ一族を復活、繁栄させれば良いというお祖父様の考えを否定する考えを僕に教えたのは叔父さんだ。
バリエラの一族なんて解散してしまえば良いと。
僕はそれに賛同しているだけだ。
でも叔父さんからすれば、教育係を任されたことを良いことに自分が姪を洗脳したように感じるんだろう。

「約束を果たした時にお願い。忘れないでね、僕は僕のためにバリエラの終焉を望んでいるんだ。」
「ああ……そうだね。じゃあ行ってくるよ、僕の可愛い姪っ子。」
「うん、いってらっしゃい。」

先程までの騒ぎが嘘のような静かな深夜、僕は人生の指針と言える人と別れた。

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