秘密を話せる友達
獄寺君はビアンキさんがとても苦手らしい。
ビアンキさんはポイズンクッキングという暗殺技を持っていて、その才能の自覚がない頃からポイズンクッキングを食べさせられてきたらしい。
誰も悪くないし、普通に悲劇だ。
そしてビアンキさんはリボーン様の愛人らしい。
本人は恋人だと思い込んでそうだけど、周りがとやかく言うことでもない気がして僕は黙っている。
恋人といえば、三浦ハルなる子もツナ君に恋をしたようだ。
ツナ君が笹川京子ちゃんに片想いしている姿はずっと見てきたけれど、誰かにモテる姿は初めて見たのでちょっとだけ新鮮だった。
助けてもらったことが一目惚れの理由らしいけれど、思い込みの強い子みたいだから、いつまでこのプチモテ期が続くかは微妙だろう。
ハルちゃんのアタックっぷりにドン引きしてた時の獄寺君の顔、面白かったな。
「獄寺君?何してるの?」
今日は休日で家から沢田家をしばらく監視していたら獄寺君が門のところで中の様子をずっと窺っていて、さすがに声をかけた。
「いや……これは…」
「こんな暑い日に外にいたら熱中症になるよ。僕の家 に上がる?ビアンキさんがツナ君から離れるのを待ってるんだろ?」
「……そうさせてもらうぜ。」
さすがにこの暑さに耐えかねたのか、獄寺君は家に上がることを選択した。
「お母さんがいるんだけど大丈夫?」
「オレは問題ねぇけどよ……」
「ああ、うちは大丈夫。沢田家と違って全員裏社会の住人だし、獄寺君がツナ君のファミリーなことは認識してるよ。」
玄関を開けて獄寺君を家に上げる。
靴を脱いでる獄寺君を尻目に、とりあえず僕は先行してリビングにいるお母さんに声をかけた。
「お母さん、獄寺君を上げるね。」
「獄寺君?」
お母さんはリビングから廊下に出てきた。
「初めまして、獄寺君。優希がお世話になっています。」
「あ、はい…」
獄寺君が気まずそうなのでとりあえず私の部屋に案内することにした。
「獄寺君、僕の部屋はこっち。」
手招きして階段を登る。
獄寺君もついて来ているのが足音でわかった。
ちょうどツナ君の向かいにあたる僕の部屋に獄寺君を招き入れた。
「なんか、女らしい部屋じゃねーな。」
開口一番に彼はそう言う。
「女らしい部屋ってわからないけど、特殊な育ちだからなぁ、僕。」
「せっかく守屋ん家に来たんだ。バリエラの一族について教えろよ。」
「うん、いいよ。でもその前に飲み物持ってくるよ。獄寺君顔赤いし水分補給した方がいいよ。あ、そこの本棚に漫画あるから暇だったら読んでていいよ。」
「おう…」
人に心配されることが余りないのか、獄寺君の返事はどこかぎこちなかった。
とりあえず早速1階に行って麦茶を淹れて自室へ戻る。
獄寺君は窓を開けて煙草を吸いながら、向かいの沢田家を眺めていた。
獄寺君って当たり前に部屋の中で煙草を吸ってるイメージがあったけど、換気をするって概念あったんだ。
後ろから声をかけて麦茶を渡すと彼はそれを一気に飲み干した。
ついでに様子を尋ねてみた。
「どう?ビアンキさんはまだ沢田家にいる?」
「みてーだな。チックショー、姉貴のせいで10代目に近付きにくくなった。夏休みだから学校で会うってことねーしよ。」
「じゃあ、しばらく家 に遊びに来たら?」
「は?」
「今みたいにここから様子を窺えばいいんじゃないかな?」
「いや、そういう問題じゃ…」
歯切れが悪い獄寺君。
どうしたんだろう?
顔の赤みも増してる気がするし。
「テメー女だろ!そー易々と家に男誘っていいのか!?」
あー、なるほど。
獄寺君はそういうの気にするタイプか。
「別に基本お母さんは家にいるし、僕の能力の性質上間違いは起こり得ないもん。」
「どういうことだ?」
「さっき聞いてきたバリエラの一族について話しながら説明するよ。座ったら?」
僕は学習机の事務椅子を引っ張って出して手で指す。
獄寺君はそれに座ったので、僕はベッドに腰掛けた。
「まずバリエラの一族はボンゴレII世 が後継者である息子たちに防御特化の人材を宛てがったことが始まりなんだ。彼の時代は敵が多かったからね。その中でもIII世 に仕えた初代バリエラは特殊能力を持っていた。だから、III世 は敵に狙われても生き残り、ボンゴレボスになれたんだ。」
「その特殊能力がお前にも引き継がれてるってか?」
「さすが獄寺君、理解が早いね。そうだよ、僕らはその能力を"Squde "って呼んでる。」
「盾って意味か…」
「実際に見せてみた方が早いかな?ちょっとそこからこれ投げてみて。軽くね。」
獄寺君にテニスボールを1つ渡した。
獄寺君は頭にハテナを浮かべた状態のまま、僕の指示通り軽くボールを投げてくる。
僕は敢えて動かず、ボールを待つ。
ボールが僕の胸にぶつかりそうになった瞬間、半透明な壁が僕と獄寺君を隔てて、ボールが跳ね返って行った。
そしてスッと壁は消える。
「なっ…」
獄寺君は口をあんぐりと開けていた。
「まさに盾でしょ?」
「………ああ。確かに防御特化の能力だ。」
「能力自体は物理攻撃に対して半透明な壁を出して防御するだけの単純なものだけど、応用すれば攻撃にも使える。」
「例えば?」
僕は瓦を用意した。
「自分から当たりに行ってもスクーデは発動できる。だからこうやって…」
瓦割りを披露すると、僕の拳の先端に半透明な壁ができて瓦と衝突した瞬間、瓦は粉々に砕けた。
「いくらなんでも割れすぎじゃねーか…?」
「獄寺君は勉強得意なんだよね?これって弾性衝突ってやつなんだって。この壁の反発係数が1?なんだとか。僕が打ち出した速度で瓦が僕にぶつかってきた時の運動量分、跳ね返してるんだって。」
「テメーの理解しきれてねぇ説明はわかりにくいが、言いたいことはわかった。ならお前とオレが拳をぶつけ合うようにパンチし合った場合、オレには自分が突き出してお前に与えるはずだった分のダメージと純粋にお前が食らわせる分のダメージ、両方食らうっつーことだな?かつ本来あるはずの反動すら一切感じねぇと。」
「うん、多分そう。」
「ちゃんと理解しとけよ…」
獄寺君は少し呆れたように言った。
「日常生活では不便な能力だから、僕らはスクーデを意図的に出さないようにする訓練を受けてるんだ。だから、学校の体育でドッジボールをしてもこの壁は出ないよ。特殊能力持ちであることを一般人に知られたくないからね。」
「なるほどな。それで10代目はお前のことを一般人 だと思ってんだな。」
「うん。僕らバリエラの使命は、ボスもしくはボス候補のブラッド・オブ・ボンゴレを影から守ること。基本的に守るべきお方はボスによって指名されて、その方が亡くなるか自分が死ぬまで仕え続ける。守るべきお方が先に亡くなった場合、後追いした人も多いみたいだけど、一応別のお方の護衛の任につく。僕はツナ君付きだから、ツナ君が亡くなるか僕が死ぬまで、ストーカーの如くツナ君をずっと追い回すことになるんだ。」
「ストーカー……」
獄寺君はなんとも反応しづらそうな顔をした。
「1つわかんねぇことがある。テメーの使命が10代目を守ることなら何で姉貴を排除しない?」
まるで苦手なお姉さんを排除して欲しいみたいな質問だ。
彼のビアンキさん嫌いは本当にポイズンクッキングのトラウマだけによるものなんだろうか?
「理由は2つある。1つ目はビアンキさんがツナ君の家庭教師に就任してリボーン様と暮らすようになったことで、ビアンキさんのツナ君に対する殺意は収まったから。2つ目はそもそも9代目の命令で、リボーン様の目の届く範囲での護衛は現状禁じられているから。」
ビアンキさんのポイズンクッキングの能力は危険ではあるけど、リボーン様は毒にも耐性を付けて欲しいとお考えなのかもしれない。
獄寺君はみるみる内に理解できないと言わんばかりに眉間の皺を深くする。
「はぁ!?1つ目はともかく2つ目は何でだよ!?」
「僕が守り過ぎるとツナ君の成長を阻害するから、らしいよ。」
「……9代目の望みは10代目がボンゴレのボスとしてより成長されることってことか。」
僕は頷いた。
「そのためのリボーン様だよ。」
「10代目は既にできたお方なのに……」
「獄寺君はそう思うんだね。」
「あ?テメーは10代目に何か文句でもあんのか?」
喧嘩腰で尋ねてくる獄寺君につい笑いが溢れてしまった。
「あるわけない。ただ、ツナ君は今年になって自分の立場を知ったばかり。ずっと見てたけど、今のツナ君はボンゴレのボスとしてやりたいことがない状態だろ?だから獄寺君の思う通り、不足がない状態なんだよ。でも、きっとそのうち自分のやりたいことの方向性が見えてくるはず。その時にはきっと足りないものが見えてくる。多分9代目とリボーン様はその時に備えて欲しいんだと思う。」
「それは…………」
「ボスになってツナ君は何を望むんだろうね?幼い頃から見てるけど、裏社会を力で支配するタイプでもないし。もしかしたらボンゴレの力を使って世界平和の実現なんか目指しちゃったりして。」
「…………」
獄寺君は反応に困っているようだった。
確かにマフィアが世界平和を目指すのは突飛過ぎたかな?
「僕は楽しみだよ、ツナ君が何を望むのか。獄寺君は?」
「………オレは10代目の望むことを叶えるだけだ。」
「忠臣だね。」
「テメーは違うのかよ?」
「ちょっと違う。死ぬまでお守りすることは誓っているけれど、立場上僕は君達みたいに表向きのことは手伝えないから。ツナ君の望むことを叶えることはできない。」
「……お前、それだけ10代目のことをお慕いしていて、それはしんどくねーのか?」
正直な気持ちを答えるか迷った。
守護者候補の獄寺君に心を開き過ぎるのもどうかなと思いつつも、負の感情をずっと抱え込むのも柄じゃない。
僕はいつだって前を向いてたい。
だからちょっとだけ吐き出すことにした。
「………ちょっとだけ、獄寺君が羨ましい。」
「守屋………」
獄寺君は同情するように顔を歪めた後、僕の左肩に手を置いた。
「10代目がやりたいことを叶えられなくて、お前が悔しい思いをしながら見守ることしかできねーなんて状況にならねぇように、お前の分もオレが頑張ってやる。」
上から目線なレスポンスに思わず吹き出した後、腹を抱えて笑ってしまった。
「プッ……あははは!」
「テメッ!人が気ィ遣ってやってんのに…!」
獄寺君は真っ赤な顔で怒り、僕の肩から離した手で拳を作る。
可愛い人だな。
「あははははは!ごめん、わかってるよ。そういう発想はなかったから、つい、ね?気持ちは嬉しいよ。ありがとう。」
「ったく…」
彼は拳を解き、その手で頭をかいてため息をついた。
「改めてツナ君に仕えるファミリー同士、宜しくね。」
僕が手を差し出すと、彼は一瞬戸惑う様子を見せた後、おずおずと僕の手を握った。
「ああ…」
獄寺君とは対等な友人になれる、そんな気がした。
別に友達がいないわけじゃないんだけれど。
僕の使命とかの事情を理解して話を聞いてくれる、そんな友達は初めてで嬉しかった。
ビアンキさんはポイズンクッキングという暗殺技を持っていて、その才能の自覚がない頃からポイズンクッキングを食べさせられてきたらしい。
誰も悪くないし、普通に悲劇だ。
そしてビアンキさんはリボーン様の愛人らしい。
本人は恋人だと思い込んでそうだけど、周りがとやかく言うことでもない気がして僕は黙っている。
恋人といえば、三浦ハルなる子もツナ君に恋をしたようだ。
ツナ君が笹川京子ちゃんに片想いしている姿はずっと見てきたけれど、誰かにモテる姿は初めて見たのでちょっとだけ新鮮だった。
助けてもらったことが一目惚れの理由らしいけれど、思い込みの強い子みたいだから、いつまでこのプチモテ期が続くかは微妙だろう。
ハルちゃんのアタックっぷりにドン引きしてた時の獄寺君の顔、面白かったな。
「獄寺君?何してるの?」
今日は休日で家から沢田家をしばらく監視していたら獄寺君が門のところで中の様子をずっと窺っていて、さすがに声をかけた。
「いや……これは…」
「こんな暑い日に外にいたら熱中症になるよ。僕の
「……そうさせてもらうぜ。」
さすがにこの暑さに耐えかねたのか、獄寺君は家に上がることを選択した。
「お母さんがいるんだけど大丈夫?」
「オレは問題ねぇけどよ……」
「ああ、うちは大丈夫。沢田家と違って全員裏社会の住人だし、獄寺君がツナ君のファミリーなことは認識してるよ。」
玄関を開けて獄寺君を家に上げる。
靴を脱いでる獄寺君を尻目に、とりあえず僕は先行してリビングにいるお母さんに声をかけた。
「お母さん、獄寺君を上げるね。」
「獄寺君?」
お母さんはリビングから廊下に出てきた。
「初めまして、獄寺君。優希がお世話になっています。」
「あ、はい…」
獄寺君が気まずそうなのでとりあえず私の部屋に案内することにした。
「獄寺君、僕の部屋はこっち。」
手招きして階段を登る。
獄寺君もついて来ているのが足音でわかった。
ちょうどツナ君の向かいにあたる僕の部屋に獄寺君を招き入れた。
「なんか、女らしい部屋じゃねーな。」
開口一番に彼はそう言う。
「女らしい部屋ってわからないけど、特殊な育ちだからなぁ、僕。」
「せっかく守屋ん家に来たんだ。バリエラの一族について教えろよ。」
「うん、いいよ。でもその前に飲み物持ってくるよ。獄寺君顔赤いし水分補給した方がいいよ。あ、そこの本棚に漫画あるから暇だったら読んでていいよ。」
「おう…」
人に心配されることが余りないのか、獄寺君の返事はどこかぎこちなかった。
とりあえず早速1階に行って麦茶を淹れて自室へ戻る。
獄寺君は窓を開けて煙草を吸いながら、向かいの沢田家を眺めていた。
獄寺君って当たり前に部屋の中で煙草を吸ってるイメージがあったけど、換気をするって概念あったんだ。
後ろから声をかけて麦茶を渡すと彼はそれを一気に飲み干した。
ついでに様子を尋ねてみた。
「どう?ビアンキさんはまだ沢田家にいる?」
「みてーだな。チックショー、姉貴のせいで10代目に近付きにくくなった。夏休みだから学校で会うってことねーしよ。」
「じゃあ、しばらく
「は?」
「今みたいにここから様子を窺えばいいんじゃないかな?」
「いや、そういう問題じゃ…」
歯切れが悪い獄寺君。
どうしたんだろう?
顔の赤みも増してる気がするし。
「テメー女だろ!そー易々と家に男誘っていいのか!?」
あー、なるほど。
獄寺君はそういうの気にするタイプか。
「別に基本お母さんは家にいるし、僕の能力の性質上間違いは起こり得ないもん。」
「どういうことだ?」
「さっき聞いてきたバリエラの一族について話しながら説明するよ。座ったら?」
僕は学習机の事務椅子を引っ張って出して手で指す。
獄寺君はそれに座ったので、僕はベッドに腰掛けた。
「まずバリエラの一族はボンゴレ
「その特殊能力がお前にも引き継がれてるってか?」
「さすが獄寺君、理解が早いね。そうだよ、僕らはその能力を"
「盾って意味か…」
「実際に見せてみた方が早いかな?ちょっとそこからこれ投げてみて。軽くね。」
獄寺君にテニスボールを1つ渡した。
獄寺君は頭にハテナを浮かべた状態のまま、僕の指示通り軽くボールを投げてくる。
僕は敢えて動かず、ボールを待つ。
ボールが僕の胸にぶつかりそうになった瞬間、半透明な壁が僕と獄寺君を隔てて、ボールが跳ね返って行った。
そしてスッと壁は消える。
「なっ…」
獄寺君は口をあんぐりと開けていた。
「まさに盾でしょ?」
「………ああ。確かに防御特化の能力だ。」
「能力自体は物理攻撃に対して半透明な壁を出して防御するだけの単純なものだけど、応用すれば攻撃にも使える。」
「例えば?」
僕は瓦を用意した。
「自分から当たりに行ってもスクーデは発動できる。だからこうやって…」
瓦割りを披露すると、僕の拳の先端に半透明な壁ができて瓦と衝突した瞬間、瓦は粉々に砕けた。
「いくらなんでも割れすぎじゃねーか…?」
「獄寺君は勉強得意なんだよね?これって弾性衝突ってやつなんだって。この壁の反発係数が1?なんだとか。僕が打ち出した速度で瓦が僕にぶつかってきた時の運動量分、跳ね返してるんだって。」
「テメーの理解しきれてねぇ説明はわかりにくいが、言いたいことはわかった。ならお前とオレが拳をぶつけ合うようにパンチし合った場合、オレには自分が突き出してお前に与えるはずだった分のダメージと純粋にお前が食らわせる分のダメージ、両方食らうっつーことだな?かつ本来あるはずの反動すら一切感じねぇと。」
「うん、多分そう。」
「ちゃんと理解しとけよ…」
獄寺君は少し呆れたように言った。
「日常生活では不便な能力だから、僕らはスクーデを意図的に出さないようにする訓練を受けてるんだ。だから、学校の体育でドッジボールをしてもこの壁は出ないよ。特殊能力持ちであることを一般人に知られたくないからね。」
「なるほどな。それで10代目はお前のことを
「うん。僕らバリエラの使命は、ボスもしくはボス候補のブラッド・オブ・ボンゴレを影から守ること。基本的に守るべきお方はボスによって指名されて、その方が亡くなるか自分が死ぬまで仕え続ける。守るべきお方が先に亡くなった場合、後追いした人も多いみたいだけど、一応別のお方の護衛の任につく。僕はツナ君付きだから、ツナ君が亡くなるか僕が死ぬまで、ストーカーの如くツナ君をずっと追い回すことになるんだ。」
「ストーカー……」
獄寺君はなんとも反応しづらそうな顔をした。
「1つわかんねぇことがある。テメーの使命が10代目を守ることなら何で姉貴を排除しない?」
まるで苦手なお姉さんを排除して欲しいみたいな質問だ。
彼のビアンキさん嫌いは本当にポイズンクッキングのトラウマだけによるものなんだろうか?
「理由は2つある。1つ目はビアンキさんがツナ君の家庭教師に就任してリボーン様と暮らすようになったことで、ビアンキさんのツナ君に対する殺意は収まったから。2つ目はそもそも9代目の命令で、リボーン様の目の届く範囲での護衛は現状禁じられているから。」
ビアンキさんのポイズンクッキングの能力は危険ではあるけど、リボーン様は毒にも耐性を付けて欲しいとお考えなのかもしれない。
獄寺君はみるみる内に理解できないと言わんばかりに眉間の皺を深くする。
「はぁ!?1つ目はともかく2つ目は何でだよ!?」
「僕が守り過ぎるとツナ君の成長を阻害するから、らしいよ。」
「……9代目の望みは10代目がボンゴレのボスとしてより成長されることってことか。」
僕は頷いた。
「そのためのリボーン様だよ。」
「10代目は既にできたお方なのに……」
「獄寺君はそう思うんだね。」
「あ?テメーは10代目に何か文句でもあんのか?」
喧嘩腰で尋ねてくる獄寺君につい笑いが溢れてしまった。
「あるわけない。ただ、ツナ君は今年になって自分の立場を知ったばかり。ずっと見てたけど、今のツナ君はボンゴレのボスとしてやりたいことがない状態だろ?だから獄寺君の思う通り、不足がない状態なんだよ。でも、きっとそのうち自分のやりたいことの方向性が見えてくるはず。その時にはきっと足りないものが見えてくる。多分9代目とリボーン様はその時に備えて欲しいんだと思う。」
「それは…………」
「ボスになってツナ君は何を望むんだろうね?幼い頃から見てるけど、裏社会を力で支配するタイプでもないし。もしかしたらボンゴレの力を使って世界平和の実現なんか目指しちゃったりして。」
「…………」
獄寺君は反応に困っているようだった。
確かにマフィアが世界平和を目指すのは突飛過ぎたかな?
「僕は楽しみだよ、ツナ君が何を望むのか。獄寺君は?」
「………オレは10代目の望むことを叶えるだけだ。」
「忠臣だね。」
「テメーは違うのかよ?」
「ちょっと違う。死ぬまでお守りすることは誓っているけれど、立場上僕は君達みたいに表向きのことは手伝えないから。ツナ君の望むことを叶えることはできない。」
「……お前、それだけ10代目のことをお慕いしていて、それはしんどくねーのか?」
正直な気持ちを答えるか迷った。
守護者候補の獄寺君に心を開き過ぎるのもどうかなと思いつつも、負の感情をずっと抱え込むのも柄じゃない。
僕はいつだって前を向いてたい。
だからちょっとだけ吐き出すことにした。
「………ちょっとだけ、獄寺君が羨ましい。」
「守屋………」
獄寺君は同情するように顔を歪めた後、僕の左肩に手を置いた。
「10代目がやりたいことを叶えられなくて、お前が悔しい思いをしながら見守ることしかできねーなんて状況にならねぇように、お前の分もオレが頑張ってやる。」
上から目線なレスポンスに思わず吹き出した後、腹を抱えて笑ってしまった。
「プッ……あははは!」
「テメッ!人が気ィ遣ってやってんのに…!」
獄寺君は真っ赤な顔で怒り、僕の肩から離した手で拳を作る。
可愛い人だな。
「あははははは!ごめん、わかってるよ。そういう発想はなかったから、つい、ね?気持ちは嬉しいよ。ありがとう。」
「ったく…」
彼は拳を解き、その手で頭をかいてため息をついた。
「改めてツナ君に仕えるファミリー同士、宜しくね。」
僕が手を差し出すと、彼は一瞬戸惑う様子を見せた後、おずおずと僕の手を握った。
「ああ…」
獄寺君とは対等な友人になれる、そんな気がした。
別に友達がいないわけじゃないんだけれど。
僕の使命とかの事情を理解して話を聞いてくれる、そんな友達は初めてで嬉しかった。
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