八つ当たり
10年前から来た笹川さんに事情を教えるのは骨が折れる作業だった。
休暇1日目、10年前から来たバジル君と合流した後、京子ちゃん達の希望で外を散策することになった。
京子ちゃんとハルちゃんは家族のことが心配みたいで、京子ちゃんは笹川さんに、ハルちゃんはツナ君とビアンキさんに付き添われて、自分の家に向かった。
僕は獄寺君と散歩することにした。
「……大丈夫か?」
「えっ?」
隣を歩いていた獄寺君が何の脈絡もなく尋ねてきて、抜けた声が出た。
「急にどーしたの?」
「…昨日から元気ねーだろ。」
「………………」
僕は言葉が出なかった。
「昨日何があった?」
「………幻騎士に負けた。」
僕は事実だけを言った。
「は?おまえ、無傷で…」
「気持ちで負けた。ツナ君や獄寺君達の死体を幻覚で見せられて足がすくんで、何もできなくなった!僕は…!僕は…!!」
感情が昂って目頭が熱くなる。
ぐっと腕を掴まれて引っ張られて、獄寺君の香りに包まれた。
彼に抱き締められているのだと理解するのに数秒かかった。
「獄…寺君…?」
「泣きたきゃ泣けよ。泣き顔は見ねーから。」
「…っ」
「オレは守屋が無事だっただけで……なんつーか……すげー安心した。」
後頭部に添えられている手がくしゃりと僕の髪を乱すのがわかった。
獄寺君の腕の中は温かくて、どこか安心感を僕に覚えさせた。
僕は声を上げずに肩を震わせて泣いた。
しばらく泣いた後、獄寺君の胸をそっと押した。
獄寺君はその力に任せて離れた。
「ありがとう、獄寺君。もう大丈夫。」
「ああ。」
「獄寺君は優しいね。」
「別に…優しくした覚えはねーよ。」
「いっぱい優しくしてもらってるよ。この時代に来てからは特に。いつもありがとう。」
「お、おう…」
獄寺君は少しだけ頬を赤く染めて目線を逸らしながら返事をした。
休暇2日目はバイクの練習をした。
初めて乗ったけど、僕は運動神経が良いのでなんとかなった。
とはいえ、山本君はウィリーとかやってて本物の天才との差を思い知らされたけど。
僕はバリエラとして能力が突出しているだけで、山本君ほどの運動神経は持ち合わせていないからちょっとだけ彼の才能に嫉妬してしまった。
深夜にはツナ君のボンゴレ匣 が暴走するという事件もあって大変だったけど、バジル君と山本君の雨属性の匣 でなんとか事なきを得た。
修行1日目の滑り出しはあまり良くはなかった。
今回の修行はクロームちゃんと組むことになった。
ビアンキさんやイーピンちゃんの手助けもあってクロームちゃんとはすぐに仲良くなれたけど、僕もクロームちゃんも思ったような成果は出せなかった。
そんな中、京子ちゃんとハルちゃんからボイコットの話を持ちかけられ、戸惑ったものの僕は京子ちゃん達に味方することにした。
「ハル達は家事をしませんし」
「共同生活をボイコットします!!」
ツナ君がマフィア事情を話すことを拒否したのでハルちゃんと京子ちゃんはボイコット宣言をした。
「悪いわね、ツナ。私はこの子達につくわ。」
「…私も…ボス、ごめん。」
ビアンキさんとクロームちゃんも宣言する。
イーピンちゃんもジェスチャーで意思表示をした。
僕も言わなきゃ。
「ごめんね、ツナ君。僕もハルちゃん京子ちゃんの気持ちを優先する。」
「え!!えーー!!?家事と共同生活をボイコットーー!?」
ツナ君はいつも通り狼狽える。
そんなツナ君に追い討ちをかけるようにリボーン様とジャンニーニさんとフゥ太君が女装をして、京子ちゃん達につくと宣言した。
「おい、守屋!テメーは10代目のバリエラだろーが!さすがにそれはナシじゃねーのか!?」
獄寺君が怒った様子で僕に詰めかけてきて、僕の両肩を掴む。
「獄寺さん!暴力反対ですよ!」
僕が口を開く前にハルちゃんが抗議する。
だからまずはハルちゃんに笑いかけた。
「ハルちゃん、大丈夫だよ。」
そして獄寺君を真っ直ぐ見る。
「ごめんね、獄寺君。ツナ君達がどれだけ京子ちゃん達を大事にしてるかも、京子ちゃん達がどんな思いで気付いていないフリをして我慢してきたのかも、どっちも考えた上で、やっぱり僕は京子ちゃん達に事実を伝えるべきだと思うんだ。」
「…っ」
「ご、獄寺君。優希には優希の考えがあるんだよ。手離してあげて。」
ツナ君がそう言うと獄寺君は僕の肩から手を離した。
そうしてその場は解散になって、僕たちは家事経験の浅いツナ君達をこっそり見守ったのだった。
京子ちゃん達のボイコットは始めた翌日の夜には終わった。
ツナ君達が話したがらない理由をビアンキさんに説明されて、2人はその説明に納得したわけではなかったみたいだけど、ボイコットについては考え直したようだ。
チョイスまで7日を切ったその日、白蘭から業務連絡があって、京子ちゃん達も決戦に連れて行かなければならないことになった。
ツナ君は結局京子ちゃん達に今起きてる事実を全て伝えたようで、笹川さんは凄く怒ってたし、ツナ君を殴った笹川さんに獄寺君が怒ってた。
山本君がスクアーロさんに連れて行かれたせいで、ディーノさんと僕が仲裁役に入る流れになって、ディーノさんに促されて僕は獄寺君を連れて作戦室を出た。
とりあえず食堂に連れて行って麦茶を獄寺君に出した。
「…落ち着いた?」
僕も向かいに座って麦茶を飲む。
なんかいつもより味が渋い気がする。
「落ち着いてられっかよ!あの野郎、よくも10代目を…!」
「うーん……僕もツナ君を殴ったことはちょっとモヤモヤしてるけど……」
「つか、なんでテメーも10代目をお守りしなかった!?」
「ごめん……完全な不意打ちで……まさかあの笹川さんがツナ君を殴るとは思わなくって……」
確かに笹川さんは短気だしシスコンだけど、まさか目をかけて可愛がっていて、リーダーとして認めているツナ君を殴るなんて思わないじゃないか。
「ボイコットの件も10代目に迷惑かけやがって…!」
「それもごめん……」
「………………」
獄寺君は口を噤んで麦茶を一気に飲んだ。
そして僕の顔を見て、頭を抱える。
「……クソッ……こんなことおまえに言いてぇわけじゃねーのに………」
「うん、わかってるよ…」
「優希」
声がする方、食堂の入り口を振り返ると、ビアンキさんが立っていた。
「修行再開するわよ。」
「はい」
麦茶を飲み切って立ち上がると、獄寺君にコップを持っていない方の手首を掴まれた。
「……悪かった。守屋に当たりたかったわけじゃねぇ。」
「うん、大丈夫だよ。」
そう言って笑顔を見せると獄寺君は手を離した。
コップを片付けて、ビアンキさんとトレーニングルームへ向かった。
「悪いわね、優希、ハヤトのフォロー任せっきりで。」
「いえ、別にそんなことは……」
「本当はこういうの、姉の私がやらなきゃいけないんでしょうけど、あの子私のこと嫌ってるから……」
うーん、それは否定できない。
ビアンキさんが思ってる理由とは違うと思うけど、獄寺君がビアンキさんを嫌ってるのは確かだ。
「……でも、ビアンキさんは獄寺君のこと、好きなんですよね?」
「ええ、世界にたった1人しかいない私の可愛い弟よ。」
柔らかく微笑むビアンキさんは今この瞬間、世界で1番美しくて母性に溢れてるんじゃないかと思う。
だからこそ、2人のすれ違いをもどかしく感じたりもする。
「いいなぁ、獄寺君。獄寺君には「はぁ?」って言われそうだけど、僕もビアンキさんみたいなお姉ちゃんが欲しかったな。」
「ふふ、ありがとう。でもあなたも私にとってはとっくに妹よ。」
「へへ、ありがとうございます、お姉ちゃん。」
そう言ってビアンキさんの腕に絡みつくと、ビアンキさんは微笑んで頭を撫でてくれた。
うん、色々あったけど、この後の修行も頑張れそうだ。
休暇1日目、10年前から来たバジル君と合流した後、京子ちゃん達の希望で外を散策することになった。
京子ちゃんとハルちゃんは家族のことが心配みたいで、京子ちゃんは笹川さんに、ハルちゃんはツナ君とビアンキさんに付き添われて、自分の家に向かった。
僕は獄寺君と散歩することにした。
「……大丈夫か?」
「えっ?」
隣を歩いていた獄寺君が何の脈絡もなく尋ねてきて、抜けた声が出た。
「急にどーしたの?」
「…昨日から元気ねーだろ。」
「………………」
僕は言葉が出なかった。
「昨日何があった?」
「………幻騎士に負けた。」
僕は事実だけを言った。
「は?おまえ、無傷で…」
「気持ちで負けた。ツナ君や獄寺君達の死体を幻覚で見せられて足がすくんで、何もできなくなった!僕は…!僕は…!!」
感情が昂って目頭が熱くなる。
ぐっと腕を掴まれて引っ張られて、獄寺君の香りに包まれた。
彼に抱き締められているのだと理解するのに数秒かかった。
「獄…寺君…?」
「泣きたきゃ泣けよ。泣き顔は見ねーから。」
「…っ」
「オレは守屋が無事だっただけで……なんつーか……すげー安心した。」
後頭部に添えられている手がくしゃりと僕の髪を乱すのがわかった。
獄寺君の腕の中は温かくて、どこか安心感を僕に覚えさせた。
僕は声を上げずに肩を震わせて泣いた。
しばらく泣いた後、獄寺君の胸をそっと押した。
獄寺君はその力に任せて離れた。
「ありがとう、獄寺君。もう大丈夫。」
「ああ。」
「獄寺君は優しいね。」
「別に…優しくした覚えはねーよ。」
「いっぱい優しくしてもらってるよ。この時代に来てからは特に。いつもありがとう。」
「お、おう…」
獄寺君は少しだけ頬を赤く染めて目線を逸らしながら返事をした。
× × × × × × × × × × ×
休暇2日目はバイクの練習をした。
初めて乗ったけど、僕は運動神経が良いのでなんとかなった。
とはいえ、山本君はウィリーとかやってて本物の天才との差を思い知らされたけど。
僕はバリエラとして能力が突出しているだけで、山本君ほどの運動神経は持ち合わせていないからちょっとだけ彼の才能に嫉妬してしまった。
深夜にはツナ君のボンゴレ
修行1日目の滑り出しはあまり良くはなかった。
今回の修行はクロームちゃんと組むことになった。
ビアンキさんやイーピンちゃんの手助けもあってクロームちゃんとはすぐに仲良くなれたけど、僕もクロームちゃんも思ったような成果は出せなかった。
そんな中、京子ちゃんとハルちゃんからボイコットの話を持ちかけられ、戸惑ったものの僕は京子ちゃん達に味方することにした。
「ハル達は家事をしませんし」
「共同生活をボイコットします!!」
ツナ君がマフィア事情を話すことを拒否したのでハルちゃんと京子ちゃんはボイコット宣言をした。
「悪いわね、ツナ。私はこの子達につくわ。」
「…私も…ボス、ごめん。」
ビアンキさんとクロームちゃんも宣言する。
イーピンちゃんもジェスチャーで意思表示をした。
僕も言わなきゃ。
「ごめんね、ツナ君。僕もハルちゃん京子ちゃんの気持ちを優先する。」
「え!!えーー!!?家事と共同生活をボイコットーー!?」
ツナ君はいつも通り狼狽える。
そんなツナ君に追い討ちをかけるようにリボーン様とジャンニーニさんとフゥ太君が女装をして、京子ちゃん達につくと宣言した。
「おい、守屋!テメーは10代目のバリエラだろーが!さすがにそれはナシじゃねーのか!?」
獄寺君が怒った様子で僕に詰めかけてきて、僕の両肩を掴む。
「獄寺さん!暴力反対ですよ!」
僕が口を開く前にハルちゃんが抗議する。
だからまずはハルちゃんに笑いかけた。
「ハルちゃん、大丈夫だよ。」
そして獄寺君を真っ直ぐ見る。
「ごめんね、獄寺君。ツナ君達がどれだけ京子ちゃん達を大事にしてるかも、京子ちゃん達がどんな思いで気付いていないフリをして我慢してきたのかも、どっちも考えた上で、やっぱり僕は京子ちゃん達に事実を伝えるべきだと思うんだ。」
「…っ」
「ご、獄寺君。優希には優希の考えがあるんだよ。手離してあげて。」
ツナ君がそう言うと獄寺君は僕の肩から手を離した。
そうしてその場は解散になって、僕たちは家事経験の浅いツナ君達をこっそり見守ったのだった。
× × × × × × × × × × ×
京子ちゃん達のボイコットは始めた翌日の夜には終わった。
ツナ君達が話したがらない理由をビアンキさんに説明されて、2人はその説明に納得したわけではなかったみたいだけど、ボイコットについては考え直したようだ。
チョイスまで7日を切ったその日、白蘭から業務連絡があって、京子ちゃん達も決戦に連れて行かなければならないことになった。
ツナ君は結局京子ちゃん達に今起きてる事実を全て伝えたようで、笹川さんは凄く怒ってたし、ツナ君を殴った笹川さんに獄寺君が怒ってた。
山本君がスクアーロさんに連れて行かれたせいで、ディーノさんと僕が仲裁役に入る流れになって、ディーノさんに促されて僕は獄寺君を連れて作戦室を出た。
とりあえず食堂に連れて行って麦茶を獄寺君に出した。
「…落ち着いた?」
僕も向かいに座って麦茶を飲む。
なんかいつもより味が渋い気がする。
「落ち着いてられっかよ!あの野郎、よくも10代目を…!」
「うーん……僕もツナ君を殴ったことはちょっとモヤモヤしてるけど……」
「つか、なんでテメーも10代目をお守りしなかった!?」
「ごめん……完全な不意打ちで……まさかあの笹川さんがツナ君を殴るとは思わなくって……」
確かに笹川さんは短気だしシスコンだけど、まさか目をかけて可愛がっていて、リーダーとして認めているツナ君を殴るなんて思わないじゃないか。
「ボイコットの件も10代目に迷惑かけやがって…!」
「それもごめん……」
「………………」
獄寺君は口を噤んで麦茶を一気に飲んだ。
そして僕の顔を見て、頭を抱える。
「……クソッ……こんなことおまえに言いてぇわけじゃねーのに………」
「うん、わかってるよ…」
「優希」
声がする方、食堂の入り口を振り返ると、ビアンキさんが立っていた。
「修行再開するわよ。」
「はい」
麦茶を飲み切って立ち上がると、獄寺君にコップを持っていない方の手首を掴まれた。
「……悪かった。守屋に当たりたかったわけじゃねぇ。」
「うん、大丈夫だよ。」
そう言って笑顔を見せると獄寺君は手を離した。
コップを片付けて、ビアンキさんとトレーニングルームへ向かった。
「悪いわね、優希、ハヤトのフォロー任せっきりで。」
「いえ、別にそんなことは……」
「本当はこういうの、姉の私がやらなきゃいけないんでしょうけど、あの子私のこと嫌ってるから……」
うーん、それは否定できない。
ビアンキさんが思ってる理由とは違うと思うけど、獄寺君がビアンキさんを嫌ってるのは確かだ。
「……でも、ビアンキさんは獄寺君のこと、好きなんですよね?」
「ええ、世界にたった1人しかいない私の可愛い弟よ。」
柔らかく微笑むビアンキさんは今この瞬間、世界で1番美しくて母性に溢れてるんじゃないかと思う。
だからこそ、2人のすれ違いをもどかしく感じたりもする。
「いいなぁ、獄寺君。獄寺君には「はぁ?」って言われそうだけど、僕もビアンキさんみたいなお姉ちゃんが欲しかったな。」
「ふふ、ありがとう。でもあなたも私にとってはとっくに妹よ。」
「へへ、ありがとうございます、お姉ちゃん。」
そう言ってビアンキさんの腕に絡みつくと、ビアンキさんは微笑んで頭を撫でてくれた。
うん、色々あったけど、この後の修行も頑張れそうだ。
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