補習でのハプニング

ツナ君のネオ・ボンゴレI世(プリーモ)内定し、僕がバリエラの一族の解散を宣言してから1ヶ月が過ぎ、本格的な冬が到来した。
そもそもマフィアになりたくないツナ君は、僕がバリエラからただの護衛になることの違いがわからないらしく、マフィアなんて辞めていいのに…という反応だった。
バリエラの解散を最も反対しそうなお父さんから連絡がなく、この状況に違和感はあるけれど、僕は普通の中学校生活を送れている。
バリエラの一族を解散したことで僕らの雇用形態は見直された。
護衛として雇うことに変わりはないけれど24時間365日特定のボンゴレの血縁者にベッタリ張り付くことはなくなった。
その上僕は中学生だからということで有事でない限りは学生生活を全うするよう9代目から申し付けられた。
だから最近は京子ちゃん達と放課後遊んだり、バレー部の助っ人をしたりと中学生らしいことをしていて、ツナ君の周りをいちいちウロチョロはしていない。
マフィアであることは変わりないんだけど、なんか今の僕って普通の中学生みたいだ。

「優希、優希、この問題わかる?」

そう尋ねてきたのはツナ君だ。
僕とツナ君は今放課後の補習を受けてる。
数学の期末テストの成績が赤点だったからだ。
こういう時に限って山本君は勘で赤点回避していて、補習を受けているのは僕とツナ君だけ。
なんなら補習監督の先生はやる気のない女性で、この後彼氏とデートだから化粧を直してくると言ってどこかに行ってしまった。

「わかんない。教科書見ていいって言われたけど、何を見れば良いのか全然わかんない。」

僕は正直に答えた。
マフィアとしてイタリアのマフィア史や現在のマフィア事情や勢力図はしっかり叩き込まれているかわりに、義務教育で必要な勉強は軽視してきた。
そのツケを今払っている感じだ。

「数学なんて四則演算できれば良いと思うんだけどなぁ…xとかyとか意味わかんないよ…」
「オレもそう思う…」
「ったく情けねー奴らだな。」

2人で途方に暮れていると、ツナ君の席の前の席にリボーン様が立っていた。
しかもツナ君に銃口を向けている。

「補習の問題くらい死ぬ気で解いてみせろ」

リボーン様は引き金を引いた。
ツナ君は椅子ごと後ろに倒れる。
そして額に橙色の死ぬ気の炎を灯して、パンツ一丁になって起き上がる。

復活(リ・ボーン)!!死ぬ気で補習する!!」

ツナ君は鬼気迫る勢いで補習を解き始めた。
やり方は物凄く単純。
教科書の1ページからあらゆる公式を持ってきて、今回のケースに合うかいちいち確認してる。

「これは!!xにあたるものはあってもyにあたるものはない!!違ぁう!!次ぃ!!」

余りに非効率だけど、死ぬ気で早さはあるから、この3分間で1問くらいは解けそうだ。
僕は普通に教科書をパラパラめくって似たような例題がないか探すことにした。
リボーン様は死ぬ気で頑張れよと言い残して教室から去った。
3分後、ツナ君の死ぬ気モードは解けた。
彼のプリントを見たら、2問答えが埋まってた。
死ぬ気モードのせいか、文字が汚くて全く読めないけど。
補習やってるだけなのに肩で息をしているツナ君は机に突っ伏した。

「ただの補習に死ぬ気弾って正気かよぉぉぉ…!」

言いたいことはわかるけど、リボーン様だからなぁと思う。
一応家庭教師だし、筋は通っている。

「とりあえず服着よう?」

僕は立ち上がって教室の後ろのロッカーからツナ君の体操服を持ってくる。
ツナ君も席を立って体操服を受け取ろうとした時に事件は起こった。
ツナ君が足を滑らせて前に倒れ、僕は咄嗟にツナ君を受け止めて後ろに倒れ込んだ。
視界がぐるっと暗転して気付けば右側が茶色に染まっていた。
スクーデを使って上手く転んだから特に痛みはないし怪我もない。
受け止めたからツナ君の体温を全身に感じている。
ただ、1箇所だけ違和感があった。
   僕の左胸にツナ君の右手が置かれていた。
わかっているのかいないのか、ツナ君のその右手はもみもみと僕の胸を揉む。
顔が熱くなる。
なぜか下半身も熱くなる。
そりゃあ、好きな人にこんなことされたら、誰だって興奮すると思う。
体を起こしたツナ君と目が合う。
ツナ君は状況を把握したのか顔を真っ赤にする。
太ももに硬いナニかが当たる。

「うわぁぁっ!?」

ツナ君は後ろに飛び下がって尻もちをついた。
下着1枚の状況だから、その膨らみがよくわかった。

「ツナ君、興奮してるの?」
「いや…っ!これは…っ!!」

顔を真っ赤にしたまま凄く慌てた様子のツナ君を可愛いと思った。
僕で興奮してくれた事実に変な期待が湧いてしまった。

「もっと触る?」

口をパクパクさせながらも言葉が出ずひたすら後ずさるツナ君との距離を詰めて、彼の右手を取り制服のシャツの下を通して、下着の上から僕の左胸に当てた。
ツナ君の汗ばんだ手が僕の肌に触れるだけで下半身がうずうずする。

「僕が女の子だって、一応意識してたんだね。」

その言葉に肩を震わせて僕の胸に触れている手に力が入り、胸を揉む形になる。
ツナ君は更に顔を赤くして、今度は鼻血まで出した。
女の子に耐性が無さ過ぎて愛おしい。

「…いっそエッチしちゃう?」

学校の教室のど真ん中でその台詞を言うことの背徳感がゾクゾクと僕の背筋を這い上がっていく。

「ツナ君となら僕できるよ。」
「ダ……ダメだ!!」

ツナ君は右手を引っ込めながら左手で僕を突き飛ばした。

「ふざけてもこんなことしちゃダメだよ、優希!!」

ツナ君は本気で怒っていた。

「こんなこと男にして、本気にされて襲われたらどうするんだ!!」

ツナ君の言い分は最もだった。
僕が悪い。
でも本気にされて襲われたかった僕の気持ちにツナ君が気付くことがない事実が悲しい。
それにツナ君の幸せを何よりも第一にしようと思ってたのに、自分の欲をぶつけてしまった自分への失望も大きい。

「ご、ごめん……」

謝った後僕は立ち上がって、自席の横にかけていた荷物を持った。

「ごめん!僕サボる!!」

そう言って教室から飛び出した。
とにかく夢中で走って、気付いたら家の自室に戻っていた。
僕は恥ずかしさと悲しさと自分への憤りを消化しきれなくて、ベッドの中で布団にくるまって泣いた。

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