15
バチバチッ、と青白い電撃が弾ける。
本気ではないにしても、羞恥で制御の甘くなった念がぱちぱちと空気を焦がし、キルアはそのままレオリオに掴みかかった。
レオリオは「痛っ、痛い痛い! 朝から感電させんなクソガキ!」と大騒ぎし、ゴンは腹を抱えて笑っている。
クラピカは額に手を当てて、深いため息をついた。
朝の食堂は一気に騒がしくなった。
椅子が軋む音。
レオリオの大声。
ゴンの笑い声。
その真ん中でキルアだけが真っ赤なまま本気で焦っていて、いつもの涼しい顔はどこにもなかった。
その騒ぎを横目に、ナマエはただ俯くことしかできなかった。
自分の顔が、これ以上ないほど真っ赤になっていくのが分かる。
昨日、あの人混みの中で繋いだ手の感触が、今さらみたいに蘇ってきて、胸の奥が熱くなる。
あたたかかった。
痛いはずなのに、離さないでくれた。
その事実をみんなの前で言葉にされると、心の奥にそっとしまっていたものまで、全部見透かされたみたいで恥ずかしかった。
ただ、恥ずかしいだけではなかった。
あの時、自分は確かにキルアへ縋ったのだ。
はぐれたくなくて、怖くて、ひとりになりたくなくて。
そしてキルアは、その手を振りほどかなかった。
それどころか、もっと強く握ってくれた。
そのことを思い返すたび、胸の奥のどこかがやわらかく疼く。
ナマエはそっと顔を上げる。
するとちょうど、レオリオに掴みかかりながら「だから違うって言ってんだろ!」と怒鳴っていたキルアと、一瞬だけ目が合った。
その途端、キルアの動きがぴたりと止まる。
ほんの一瞬だけ、気まずそうに視線が揺れた。
それからすぐに、ばつが悪そうにふいっと顔を逸らす。
けれど耳の赤さだけは、まだ少しも引いていなかった。
その反応が、どうしようもなく昨日の続きみたいで。
ナマエの胸の奥に、くすぐったいような熱がまたひとつ落ちる。
笑ってはいけない気がした。
こんな騒ぎの中で、ひとりだけそんなふうに思うのはずるい気もした。
それでも、口元がほんの少しだけ緩んでしまう。
クラピカはそんな二人の様子をちらりと見て、何も言わなかった。
ただ、呆れたように小さく息をつくだけだった。
ゴンは相変わらず楽しそうで、レオリオは「だから感電させんなって!」と騒ぎ続けている。
いつもの朝。
いつもの賑やかさ。
なのに、ナマエにとっては少しだけ違う朝だった。
昨日までは、ただ守られることに戸惑っていた。
けれど今は、そのぬくもりを思い出すだけで胸が熱くなる。
離さないでくれた手。
ぶっきらぼうな声。
赤くなった耳。
その全部が、心の中で何度も静かに反芻される。
食堂の窓から差し込む朝の光はやわらかく、テーブルの上に白く広がっていた。
その光の中で、ナマエは誰にも気づかれないように、そっと自分の指先を握る。
昨日つないだ手の感触を、まだそこに残っているみたいに確かめるように。
胸の奥が、また少しだけ騒がしかった。
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