06



その夜から、二人はゴンたちには秘密の“夜食仲間”になった。

みんなが眠ったあと、リビングには静かな月明かりが落ちる。
窓から差し込む白い光が床を淡く照らして、その真ん中でキルアがチョコロボの箱を抱えている。
ナマエは足音を忍ばせてそこへ行き、何も言わずにソファの端へ腰を下ろす。
それが何度か続くうちに、夜のその時間は、いつの間にか二人のあいだで当たり前みたいな顔をするようになっていた。

最初は、本当に他愛もない話ばかりだった。

今日もレオリオが大声で怒っていたこと。
ゴンが変な時間に目を覚まして、お菓子を探していたこと。
クラピカが本を読みながら寝落ちしかけて、ページに変な跡をつけそうになっていたこと。

そんな話をしているだけなのに、ナマエは少しずつ、その時間を待つようになっていた。
昼間の光の中ではうまく息を潜めてしまうものが、夜の静けさの中では少しだけほどける。
月の白い光は、何も暴かないまま、ただそこにあるものをやわらかく照らしていた。

チョコをひとつ口に入れる。
甘さが舌の上でゆっくり溶けていく。
そのあいだだけは、胸の奥に沈んだものまで少しだけ静かになる気がした。

だからだろうか。
昼間なら飲み込んでしまうことも、夜には少しだけ言葉にしやすかった。

ナマエは、自分のことを話した。

能力のせいで壊れていった人たちのこと。
優しくされるたび、それが呪いみたいに思えてしまうこと。
誰かのそばにいたいのに、近づけば近づくほど、その人を駄目にしてしまう気がして怖いこと。

言葉にするたび、胸の奥に沈めていた冷たいものが、少しずつ浮かび上がってくる。
本当は誰にも見せたくない傷だった。
口にした瞬間、また気味悪がられるかもしれない。
厄介なものを見る目を向けられるかもしれない。
そんな予感はいつだって消えないままだった。

けれど、キルアは何も言わなかった。
軽々しく慰めることも、分かったような顔をすることもなく、ただ黙って聞いていた。
その沈黙は冷たくなかった。
無理に触れず、けれど目を逸らさないまま、そこにいてくれる沈黙だった。

キルアもまた、自分のことを話した。

家のこと。
暗殺一家に生まれて、物心ついた頃から人を殺す技術ばかり叩き込まれてきたこと。
自由なんて言葉が、ずっと遠い場所にあるものみたいだったこと。
そして今でも時々、自分の中に染みついた冷たさが消えないこと。

その声は淡々としていた。
まるで昔読んだ本の一節でもなぞるみたいに、静かで、平らだった。
けれど、だからこそ分かった。
その言葉の下に、どれだけ長い時間が沈んでいるのか。
どれだけの痛みを、もう痛みとも呼ばずに抱えてきたのか。

どちらも、綺麗な話じゃなかった。
夜の底に沈めてきた、冷たくて、暗くて、誰にも見せたくない傷ばかりだった。

それでも、相手が黙って聞いてくれるだけで、不思議と少しだけ呼吸がしやすくなる。
言葉にしたから消えるわけではない。
傷が浅くなるわけでも、過去がなくなるわけでもない。
それでも、ひとりで抱えていた時より、ほんの少しだけ重さが変わる。
そんなことがあるのだと、ナマエはその夜ごとに知っていった。







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