とりあえず花京院と話し合って、他の人の安否を確認することにした。まずは能天気な笑顔で寝ているポルナレフだ。こんなに騒いでるんだから、起きてほしい。何かあったときに死ぬからさ……。花京院もポルナレフの根木沖の悪さを知っているため、容赦なくハイエロを出してポルナレフを床に叩き落とした。わあ……痛そう。
「……ってぇ! ……あ、んぇ? 花京院と、ナマエ? なんだよ一体よぉ」
「夢の中で、襲われたりしませんでしたか?」
「……はあ? 何言ってんだお前、わけわかんねぇことで起こすなよなあ、おやす、み゛っ! ナマエ! 何すんだバカ!」
あまりにも自分勝手な発言をするので、握りこぶしをポルナレフの頭の上にがつんと落とした。言っておくが痛いのはわたしもだ。というか寧ろポルナレフの頭蓋骨が想像以上に固くてびりびりしてるくらい痛い! 殴るんじゃなかったと痛めた拳を反対の手で握り締めながら震える。
「おい、何騒いでやがる」
「承太郎」
「おい、聞いてくれよ承太郎!」
わたしたちが騒いでいたせいで、承太郎がわたしたちの部屋までやって来ていた。ドア……壊れてます……。心配してやってくれたのはいいんだけど、この修理費はやっぱりジョセフが払うのかな? ポルナレフは承太郎に先ほどのことを愚痴として話していたが、承太郎はポルナレフを相手にしていないかのように花京院へと目線を向けた。
「花京院、夢の中ってのはどういうことだ?」
「スタンド攻撃だよ。詳しくはあとで食堂に集合してからとして……承太郎、ジョースターさんの様子を見てきてくれないか?」
「わかった」
ポルナレフは未だぽかん、としたままだ。悲しいかな、承太郎とポルナレフの理解力の差がはっきりと浮き彫りになってしまったようだ。ポルナレフは何かを聞きたそうにしていたが、わたしと花京院が食堂に集合したら話すと言えば、何とも言えない顔をして頷くしかなかった。わたしたちはとりあえず着替えなど支度をしてから食堂に向かうことにした。
「夢の世界に引きずり込むスタンド、デスサーティーン、か」
「はい。どうやらその世界に普通、他のスタンドは持ち込めないらしいですね、本人が言っていました。しかし回避方法としてスタンドを出したまま眠れば、夢の世界にも持ち込めるようです」
「それはまたどうして?」
「ナマエさんが昨晩、ヴィトと話をしながら寝てしまったそうで」
「なんとか事なきを得ました、ってポルナレフ。その可哀想な子を見るような目をするのはやめてくれるかな」
確かに自分のスタンドと寝る前に話してるなんて寂しい子みたいだけど、ヴィト自立型だから! 別にそれ、独り言じゃないから! くそ! ムカつく!
ポルナレフは笑いながら誤魔化しているが、絶対にまだ可哀想な子だと思っているに違いない。悔しいが半分くらい事実なので反論することさえ可哀想だ。くぅ……!
「じゃあしばらくは、寝るときにはスタンドを出して寝るってことかァ? なーんか、疲れそうだな、それ」
「そうじゃなあ……早々に負かしてやりたいところじゃが」
「逆に警戒してしばらくは襲ってこないかもしれませんね」
「困ったのう……しかし話を聞く限りだとそれなりの威力がある。近くにいるとは思うんだがなあ」
赤ん坊がスタンド使いですよ、と言ってしまえればことは簡単なのだが、わたしとしてもそんなことを言うわけにはいかないし困ったものである。ヴィトの能力が未だに効いていて、デスサーティーンが使えなければありがたいのだけれど……そんなに簡単にわりとなるだろうか? 能力を止めたのは一瞬だけの可能性もあるし、夢の世界から戻った時点で消えてしまっているかもしれない。
マニッシュ・ボーイが現れるか否か。来なければ間違いなくヴィトの能力が効いていることは間違いないだろう。来てしまったら、ヴィトを出してもう一度どうにか対応する、ということになるのだろうが……うーん、色々難しそうだ。
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