ヘリのプロペラがバラバラと音を立て、飛び立つ準備を整えていた。SPW財団の用意してくれた荷物を受け取りながら、ジョセフがホリィさんの容体を問えば、ヘリの前に立っていた一人が言いづらそうにしながらもあと二週間ほどしかないことを告げる。時間がないと焦る面々の中で、承太郎だけは黙したままだ。一番辛いはずなのに、本当に大人びちゃって。とん、と軽く背中を叩けば、承太郎は振り向く。
「大丈夫、二週間で倒せばいいんだから。わたしがついてるんだよ?」
ニッとまるで自信満々ですとばかりの笑いを向ければ、承太郎は幾分か落ち着いたように、そうだな、とぎこちなくも笑った。どうやら少し緊張は解けたらしい、よかった。
それから視線をずらして、ヘリに乗り込もうとしているSPW財団の二人が見えた。さてこのヘリ、確実に墜落するわけだが、どうしたものだろうか。知り合いとはとても言えない人間だけれど、だからと言って、さすがにこの二人を見殺しにするつもりはない。どうやって引き留めたものかと思いながら、とりあえず忘れ物がないか確認するふりでもして、ヘリに近寄ることを思いついた。そこからは何も考えていないわけだが、さーてどうしようかな! 行き当たりばったり! こんあ大事なことちゃんと考えておいてくれませんかね、わたしのアホ!
「あの!」
「っ、ナマエさん! お二人とも! ヘリから離れろ!」
花京院の叫び声で、へ、と思ったときには身体をハイエロファントで引っ張られていた。ハーミットパープルも二人を連れていくのが見えた。途端。目の前にあったヘリが、勢いよく爆発して熱風がわたしを襲った。それでも花京院が身体を引っ張ってくれたおかげで、ひりひりする程度で済んだが……これは、どういうこと? 皆が臨戦体勢に入りスタンドを出して構えているが、わたしは心臓が今更ばくばくと言い始めてそれどころではなかった。
もし、ハイエロファントが引っ張ってくれなかったら、死んではいなくてもリタイアは間違いなかった。ポルナレフとアヴドゥル、そして花京院がわたしの前に立っている。振り返らずに花京院が呟いた。
「大丈夫ですか、ナマエさん」
「う、うん、大丈夫……いま、何が?」
「ガソリンがヘリから漏れていたんです、それで急に爆発が」
スタンド使いの仕業でしょうか、と緊張した声で告げられ、背中が粟立った。……原作通りじゃあ、ない。ヘリが爆発することなんてなかったし、ここで出てくるのはンドゥールのはずだから、爆発させることなんて、できないはずじゃないのか? 汗がじわりと流れていく。今までにない緊張感がわたしを支配していくのがわかった。
要するに、今までわたしはまともに戦ったことなんてなかったのだ。いつ襲われるかなんて心配したことはないし、誰からどんなふうに襲われるかなんて想像に易かった。今は、違う。強ばった笑みが無理矢理に浮かぶ。これがわたしにとっての、初戦か。
「今のは、スタンド攻撃だな?」
「誰にも気付かれないうちにタンクを壊し、爆発させたと?」
「そうじゃろうな。全員を殺すつもりだったのだろう、いや、殺さなくともあの時花京院が気付かなければ戦えなくすることくらいは容易かっただろう」
「能力はアヴドゥルに近いのか…?」
「断定はしない方がいい。電気や力押し、デーボのようなタイプでだって火は付けられる」
いつ襲ってくるかもわからないような状態で、わたしたちは待機していなければならない。これはもしかして消耗戦になるかもしれない。皆が黙り込み周りを見渡していたが、イギーが突然わたしに吠えた。大きな声に驚き振り向いた瞬間、水がわたしの横を勢いよく通過し、アヴドゥルの足元に沈んだ。
「アヴドゥルさんッ!」
花京院もそれに気付き、声を上げてアヴドゥルを思い切り突き飛ばした。直後水が勢いよく飛び出して、花京院の左目を思いきり傷付けた。絶叫が谺した。
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