ラッキーだ。見つからないと思っていた矢先のことだからこそ、余計に嬉しく思える。承太郎を連れてきてよかった。わたしを含めてポルナレフやアヴドゥルでは、見つけられなかっただろう。どうする、と目線を合わせると向こう側ではジョセフが耳に響く、悲鳴のようなものを上げた。きっと感電したのだろう。目線をふたりでそちらに向けると、承太郎からちょっと行って来いと指で差される。そりゃそうだ、承太郎が残らないと女を取り逃がす可能性がある。肩をやっていることなど忘れて、小走りでジョセフの元に行けば予想通りだった。
「どうかしました?」
「岩にコンセントがうめこまれてて、触ったらしびれてのう」
いや〜、びっくりしたわい、と言うが、本当はそんな簡単な話ではないのにお気楽な人だ。余計なことをするなと先ほど宣告したのにどうしてこの人は……。というか岩にコンセントの差込口あったら怪しすぎて絶対に触らないだろ普通!
一度ため息をついてから、不思議そうな顔をしている全員をひきつれて承太郎のへところに戻る。承太郎にジョセフが起きたことを話し、それから承太郎が小さな声で女があそこにいることを伝える。そうなると当然いまのはスタンドにやられたと考えるべきだろうという結論に至った。ちらりとみんなでそっちの方を向けば岩陰から衣服の端が見えているのがわかる。……なんという凡ミス、マライヤ。正面から行っては逃げられてしまうかもしれないし、危ない目に遭う可能性だってある。
「じゃあ、前と後ろから挟み撃ちにするかの」
「そうしましょう」
「どんな攻撃をしかけてくるかわからないので、気をつけるようにの!」
「さっき変なもんに触ったジョースターさんに言われたかないがな」
ポルナレフの小言を聞こえないというように目線を逸らしてジョセフは先に行ってしまった。これをお茶目で可愛いと思えるのは人徳だなあ、きっと。その後ろにため息をつくアヴドゥルとイギーがついていった。
わたしは承太郎とポルナレフと一緒に、真正面に向かっていく。普通に見つかってしまっては意味がないから、少々こそこそとしながら。馬鹿みたいに大きな身体を縮めて歩くふたりを笑いそうになったが、しっかりと口を噤んだ。そんなことをしているうちに、既にマライヤの周りをみんなで囲んでいた。しかしマライヤは少し不審そうにこちらを見て、口を開いた。
「あなたたち、一体何? いきなり人を囲んだりして」
「……人違いか? これ」
眉を嫌そうに寄せたのが演技だというのだからすごい。事実を知らなければこんな美人だ、わたしも普通に騙されていただろう。ポルナレフは既に陥落したようで今まさに口説かんとしていると、承太郎のスタープラチナが現れ、マライヤへと向かって殴りかかる。驚いた顔で思わず身をかわしたマライヤをポルナレフは庇うように立った。それを見てスタープラチナはぎりぎりのところで動きを止める。ポルナレフは噛み付くように承太郎に怒鳴り散らした。
「承太郎! どういうつもりだッ! こんなか弱い……」
「その女なら避けただろ」
「避けたとか……そんなこと問題じゃあねーんだよ!」
「いいや、それが問題なんじゃよ。ポルナレフ」
「そうだ……わからないのか? スタープラチナが見えていたんだぞ?」
あ、と開けた口は間抜け面だ。舌打ちをし逃げようとしたマライヤの前をジョセフとアヴドゥルが塞いだ。にいっと笑みをつくり、手で通せんぼ。苦虫を噛み潰したようなマライヤの横顔が見える。
「どこに行くのかね、お嬢さん」
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