バシンと風がぶっ飛んできた。
正確にはただのボールだが、凄まじい速さで風圧もろとも迫ってきてひいっと情けない声を上げながら必死な形相で避けた私に向けてやっぱり罵声がぶっ飛んできた。「避けんなボゲ!!」「受け止められるかアホ!!」殺しに来ているとしか思えなくて涙目でそう言い返した。我ながらよく避けれたと機転の良さに短いため息をつく。転がるボールを手に取って今度は私の番だと先ほどの仕返しとばかりにポンと宙に上げたボールを渾身の力で打ち込んだ。

「!?」

難なく受け止めてきれいに私のところに返ってくる。くそっ強めに打ったのに! もう一度打ち込めばぽーんと再び戻ってきて、それがとてつもなく(ボールを受ける時の表情がドヤ顔に見えて尚更に)不愉快で悔しくてフェイントを入れた。指先だけに力を入れて真下に落とせば不意を突かれて慌てた影山を眼下におさめることに成功して、してやったりとにんまり笑う。こういう不意打ちを楽しく思えるのは今まで打ち負かせられない腹いせからだろうとニヤニヤ笑う裏でその事実を認めたくなくてムカつくなと思った。わたしよりチビなのにッ! 上手いとかなんかムカつくッ!
滑り込む姿勢を立て直した影山が詰め寄って襟を掴んだ。

「てめっ今のは卑怯だろ!」
「殺人ボールを寄越したお前が言うのか!」

お互い負けず嫌いなのもあって一歩も引かない私たちの頭に突然塊が落ちてきた。ゴンっと鈍い音のあとに「ケンカすんな!」といつもの声が私たちの間に入る。いつもの痛みにぶすっとした顔を影山と一緒になって見上げれば二つの拳を浮かべながらおねえちゃんが眉を寄せていた。じんわり痛む頭を擦りながら着ている学校指定ジャージの袖口がすり切れているのがその時に見えた。3年も使えばね、薄らとそんなことが過ぎる。

「熱くなるのはわかるけどいい加減にしな二人とも」
「「だって影山/トーコが!」」
「まーたいつものなすり付け合い・・・まったく」

はぁっと息を吐き出すおねえちゃんはいつものことだと睨みあう私たちを放って一人でレシーブを上げていた。ぽーん。ぽーん。袖を捲った腕の上を跳ねるボールの音を何回か聞いている内に視線を垂直に打ち上がるボールへ持っていく。目の前からじっとしていられない気配を感じながら自分でもどこかウズウズしていることに気が付いて「おねえちゃんっ」と呼びかける。それにおねえちゃんがにやりとした。「あんたたちホントにバレー好きよね」呆れたような、だけど嬉しそうに笑うおねえちゃんはそのボールを頭上高く上げるとアタックの構えを作った。
「いくよ!」掛け声と同時に利き手が振り下ろされた。

中学に上がる前の、まだバレーが好きだった頃の、流れる汗がキラキラして見えた私は。この3人で共有する風を誇りに思っていた。




(息抜きに・・・本当に息抜き程度にやりたいな)
(小学生の影山は口悪くないのかも・・・想像だけど)
(バレー経験者でよかったなって思うけどバレーやってる描写をうまく書けなくて凹む)

16.09.02 18:04 hq(bun)
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