無機質な印象を持つ彼女をある者は蔑むようにこう言い放った。「悪魔」誰もが心のどこかで抱いた嫌悪感をすべて込めるには物足りない言葉だが思いのほかしっくりきていた。幼さを持ち合わせながら非情な行動が目立つ少女を、最も死亡率が高い探索班に所属する彼らはそう皮肉を込めた。


世界の終焉を企てる人物――『千年伯爵』が作り出した兵器を唯一破壊することができる『イノセンス』。それを扱える適合者『エクソシスト』である彼女は真っ暗なトンネルを壁伝いに進んでいた。
昔は盛んだったらしい炭鉱で奇妙なことが起きていると連絡を受け別の任務を終えたばかりの彼女がそのまま向かわされた。再び任務に駆り出されることに彼女は文句もため息一つも漏らさずに請け負うと疲労の見られない足取りでこの炭鉱に辿り着いた。

着いて早々に違和感を覚えた。風は吹いているのに葉の擦れる音が聞こえない。町中は人で行き交うのに雑踏すら耳に入らない。音という音がない異常が目の前に現れてこの任務を請け負う時に聞かされた話の通りの現状を後にした。
問題の場所に到着するとここを調査していた何人かの探索班に眉を顰められ睨まれたが気にする素振りを一切見せず彼女はあたりを目だけで見回る。正午を過ぎたその場所に明らかな違和感を醸し出すところに目が留まった。先端が丸まったレールがトンネルの先へと伸びて、トンネルというより大きな穴と形容しやすい黒の空間。違和感の元凶はここだと感じた。
調査を担当する班長がじっとトンネルを見つめるエクソシストの元に駆け寄り調べた結果を手書きでまとめた報告書を見せた。
何も言わず、いや口の動きはあるものの音を発しないその行動をトンネルから視線を外して見た。相変わらず感情の読めない顔を向けられたが今のは訝しんだように見えたと班長の男は意外そうに瞬きをする。探索班の仲間のほとんどが少女に強い嫌悪抱いて、そんな自分もよく思っていなかったが今見せた一瞬に人間らしさがあって少し拍子抜けした。そんな男をよそに差し出された報告書を受け取らずに目を通した。
その報告書のはじめに書き出されたのはこのような無礼を詫びてからそうするしかない理由についてだった。

ここ数カ月前、爆発事故で長年閉ざしていた炭鉱から音が鳴った。すると身の回りの音が小さくなったような気がしたのだという。不定期に炭鉱から音が鳴り出すと次第に生活の音は消えていき、風や鳥の羽ばたきも一切聞こえなくなった。それが町に住むすべての人に起きて、聴覚がおかしくなったという訳ではないのだ。

奇怪と言って差支えないだろう。この現象がイノセンスと関係ある可能性は実に大きいと判断した教団は調査を開始。調べた結果を上に報告すると多くない貴重な人材の中で派遣されたのが、このマノンである。




(感情が抜き取られた設定の主人公を以前書いてました)
(この主人公は中身のない抜け殻のような設定にしていて書きにくい子でした^^;それでも好きな子でした)

16.09.02 19:06 d.g(bun)
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